34話 騒動の収束に向けて
「話がまとまったようで良かったよ。じゃあ、ハンスが頑張って森の安らぎ亭を切り盛りしてアメーリエがよろず屋を経営するんだね。リカルダは息子が復活してて安心しただろうし、ヘニングは息子が張り切っているからやる気がでるだろう?」
「そ、そんな簡単な話じゃない……。それになんで説明的なの?」
ヘレーナの言葉にアメーリエが反論しようとする。だが、それすら許さずヘレーナは話し続けた。
「なんでさ? マテウスは引き継ぎが出来て次期領主として手腕を発揮出来る。領民喜ぶ事間違いない。そして元商人の人間が領主になって、領地も発展する。完璧じゃないか? これで安心してディモと次の街に行けるってもんだよ」
「ディモ君と早く旅の続きがしたいだけでしょ! それに二人がこの街に来てから、まだ一日しか経ってないからね! 物凄く長く居るみたいな言い方をして欲しくない」
「どうしたの? 姉ちゃん? ヘレーナさんは僕達の宿屋の事を考えてくれてるんだよ?」
激高したように首を振って話しているアメーリエにハンスが不思議そうな顔で問い掛ける。横で話を聞いていた父親のヘニングも頷きながら会話に参加をしてきた。
「何度も言うが、ハンスが森の安らぎ亭の後継ぎだぞ? アメーリエが大事に思ってくれているのは嬉しいが……」
「ハンスと一緒に盛り立てるのが大事なんじゃない!」
「僕がしっかりと働いて宿屋を継ぐから、姉ちゃんにはよろず屋をやって欲しいよ! 二人で一緒に頑張ろうよ」
「二人で永遠に一緒に? ハ、ハンスがそう言うなら、姉ちゃんはよろず屋を継いで、森の安らぎ亭に商品を卸すよ」
ヘニングの言葉にアメーリエはハンスと一緒が良いことを伝えると、ハンスが抱きつき上目遣いで二人で頑張ろうと言ってきた。その言葉と行動にアメーリエが真っ赤になりながら答える。
「おぉ! アメーリエさん!」
「か、勘違いしないでよね! べ、別にマテウスさんのために後を継ぐわけじゃないから! ハンスの為だからね!」
歓喜の声を上げるマテウスに、アメーリエは赤面しながら答えた。そんな様子を気にする事なく、マテウスはアメーリエの手を握ると大きく上下に振りながら感謝を伝え続けた。
「ありがとう! 本当に嬉しいよ! アメーリエさんの為に優秀な人材を大量に配属させるから安心してくれ。それにハンス君も仕事がやりやすいように、森の安らぎ亭に援助をしよう。ヘニングさん、リカルダさん。構いませんよね?」
「ああ。その方が良いだろうね。アメーリエがここまで思い込んでるとは思ってなかった私達の落ち度もある。あんたも構わないよね?」
「ああ。俺は問題ない。金策のゆとりが出れば本格的にハンスの教育を出来るからな。これからは厳しくなるぞ。姉ちゃんも頑張るのだから、お前も弱音を吐くなよ?」
「大丈夫だよ! 姉ちゃんと一緒に頑張るからね!」
アメーリエの手を握りながら、嬉しそうに感謝の言葉と今後の方針を語り出すマテウス。その内容を聞いて頷きながら夫のヘニングに確認をするリカルダ。そして、ヘニングの言葉にハンスは大きく頷きながら握り拳を作るのだった。
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「いいなあ。家族って」
「どうしたんだい? 家族が居ない事が寂しいのかい?」
羨ましそうにアメーリエ一家を眺めて呟いているディモに、ヘレーナが背後から優しく抱きしめながら耳元で囁く。くすぐったそうにしながらディモは大きく頭を振ると満面の笑みでヘレーナに抱き付いた。
「もう大丈夫だよ! 僕にはお姉ちゃんが居るからね! それにシロツノも家族として増えたからね」
「シロツノは駄馬だし、なにかあったら非常食として馬肉にするからね」
「もう。お姉ちゃんはそんな事を言って!」
お姉ちゃんが居ればいい発言にヘレーナが卒倒しそうになっていたが、精神力を総動員してなんとか意識を保っていた。そして、必死で意識を明確にするために誤魔化すかのように悪態を吐くが、ディモからは冗談としかとらえて貰えずに笑い流された。
「ああ。ディモ君と、ヘレーナさん。まずはディモ君。本当に今回はありがとう。店での新しいアプローチ方法を教えて貰うだけでなく、アメーリエさんがよろず屋を継いでくる事になった。もう少ししたら旅立たれると思うが、その前に店に来て欲しい。お礼がしたいからね。それとアンダース一家を一網打尽にした分の報奨金もある。こっちは領主としての初仕事にしたいから、出来れば君達には一週間は居て欲しいね」
「どう? お姉ちゃん?」
「ああ。一週間くらいなら構わないよ。明確な日程があるわけじゃないからね。それと、外に吊してある奴らは引き渡すから好きにしな」
マテウスの言葉にディモがヘレーナに確認する。決まった日程があるわけでないので、問題ない事を伝えると同時にアンダース一家の処遇を完全に丸投げした。
「そちらもありがとうございます。では、報奨金も宿屋に持ってきますね。おい。アンダース一家を下ろして捕まえるように。それと逃がすようなヘマはするなよ」
「「「はっ!」」」
マテウスの指示を聞いた数名の兵士は外で待機している兵士達に、アンダース一家を捕らえるように命じるとともに自らも捕らえるために食堂から出て行くのだった。




