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神剣は少年を愛し過ぎる  作者: うっちー(羽智 遊紀)


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20話 ヘレーナ歓喜する

「ふっふっふ。良い感じで集まってるじゃないかい。どれから狩ろうかね?」


 ヘレーナはどう猛な笑みを浮かべながら剣を一振りしつつ近付く。森の広場に集まっていた熊型魔物三体と、虎型魔物一体はヘレーナの姿を見ると、それぞれが出来うる限りの威嚇を始めた。そんな様子を見て、さらに笑みを深めながらヘレーナは魔物達に向かって走り出す。


「そらぁぁ! まずは一頭目! ……! おぉ! やるねぇ」


 ヘレーナは目の前にいた熊型の魔物を袈裟斬りにする。崩れ落ちていく姿を見ながら、奥にいたはずの熊型魔物の姿がなく、やられるのが分かっていたかのようなタイミングでヘレーナの死角から二頭目の熊型魔物が飛び出し牙を()いた。

 だが、ヘレーナは死角からの攻撃も見えていたかのように倒した熊型の魔物を踏み台にすると大きく飛び上がり、剣を逆手に持ちながら死角から飛び出してきた魔物の脳天に突き刺した。


「いい攻撃だったけど甘いね! これで二頭目! 次はどいつだい!」


「ぐるるるる」


 剣を引き抜き、血が滴って(したたって)いる状態で三頭目の魔物と対峙する。近くにいた虎型魔物はヘレーナの実力を肌で感じ、先ほどの二頭とは違い警戒して距離を取りながら威嚇の声を上げる。その慎重な様子を見て面白そうな顔をしたヘレーナは腰を軽く落とすと、低い体勢のまま滑る(すべる)ように間合いを詰めた。

 ヘレーナの突然の動きに付いていけない虎型魔物は一度飛び退って距離を取ろうとする。だが、あまりのスピードに間合いは思った以上に開かず、慌ててさらに下がろうとしたが鼻先を切りつけられてしまった。


「ぎゃう!」


「ははー! まずは鼻! 次は耳を攻撃するぞ! そらそらぁぁぁ! どんどんいくぞ! 逃がすかよ! 『我は凍える氷像を求める。全てを凍てつかせ万物に等しく静寂を与えよ』」


 連続で斬りつけられた虎型魔物は背を向けて逃げ出そうとしたが、それすら許さないヘレーナは第二階位の氷属性魔法を唱える。周りの景色が白くなり始めた上、さらに突然の気温低下に戸惑った虎型魔物が一瞬立ち止まる。ヘレーナはその隙を逃さず、素早く背後から間合いを詰めると剣を心臓に突き刺した。


「よし。これで三体目だね。いい感じの氷像が出来たじゃないか。後でディモに見せてあげないとね。ん? 残りの一頭は……。おっ? まさか共食いをするとはね」


「ぐるあぁぁぁぁぁ!」


 四頭の中で一番力を持っているであろう白色の熊型魔物は身体を赤く染めながら、ヘレーナに倒された二頭の熊型魔物に食らい付き、魔石を取り出すと噛み砕いて(かみくだいて)咀嚼(そしゃく)する。すると身体能力と魔力が漲る(みなぎる)ようで、魔石と食いちぎった肉を飲み込むごとに脈動(みゃくどう)するかのように身体が大きくなり筋肉質になっていった。


「へー。魔物同士で共食いするとそうなるのかね?」


「グ、グ、ツヨキモノヨ。ワレハモリノヌシデアル。コノモリヲウバイタクバワレヲタオスガヨイ」


「へー。言葉も話せるようになるんだね。森はいらないけど『ツヨキモノ』と呼ばれたら戦わないとね。名前はあるのかい?」


「ワレハ『ベルント』、ナンジトタイスルモノ」


「いい名だ。私の名はヘレーナ。剣神ヘレーナと呼ばれし者。ベルント。お前の名前は忘れない。強き森の主よ。敬意を表して全力で相手をしよう」


 お互い名乗り合った両者は徐々に間合いを詰めていく。ベルントの一足一刀の間合いにはなったが、身長が違うためヘレーナの間合いではなかった。それを理解したベルントは自らの間合いで戦うことを決め、相手が一歩を踏み出す前に咆哮を上げた。


「ガルルアァァァ! ユクゾ!」


 咆哮と共にベルントの両前足に風の属性が付与される。その前足を使ってヘレーナに突進すると、地面がえぐれ小さな砂嵐が起こる。その威力に大きく間合いを空けたヘレーナだったが、ベルントは気にすることなく広場に破壊をまき散らしながら突撃を繰り返す。その破壊活動に柔らかな笑みを浮かべ腰を落としつつ右足を前に出したヘレーナは、剣先を自然と下がるに任せながら握りは脱力するように緩めた。


「いいね。その力。私の最大の技と勝負だよ。『全ては光りの前にひれ伏す。輝きと轟音と共に汝は現る(あらわる)。そしてそなたは我に服従する。雷は恐怖の体現であり心を揺さぶる。光りの前になにも残さぬ。その為に汝は降臨する』」


 ヘレーナが詠唱を始めると刃の部分が黄金に輝き始める。そして火花を散らしながら波打つように踊り始めた。両者の戦いを観戦している者がいたら、白き暴風と黄金の光りが激突したように見えたであろう。上下左右から繰り出される暴風をまとったベルントの拳を躱し(かわし)弾き受け止める。ただ防御するだけに見えたヘレーナの姿だったが、徐々に様相(ようそう)が変わり始める。

 白い暴風に赤色が混じり始め、ベルントの息も荒くなりつつあった。逆に黄金の光りはさらに輝きを増し始め、ヘレーナの顔は歓喜とどう猛な笑みが深まる。そして勝負が付く時がやって来た。ヘレーナは上段から一撃を繰り出すように見せながら、手首を返して下段からすくい上げると右切り上げの一撃を放った。


「ワ、ワレノマケダ。ツヨキモノトタタカエタコトニ……」


「ベルント。いい戦いだったよ」


 崩れ落ちるベルントと魔術に耐えられなかった刃が粉末のように舞い散る中、ヘレーナは満足げな目をしながら大きく息を吐くのだった。

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