16話 商店街の人達との挨拶
ディモはヘレーナと分かれると商店街にやってきた。最初に肉屋を訪れたディモの姿に店主は嬉しそうな顔で迎えいれ、用意していた燻製やソーセージ、ハムにチーズなどを並べ始める。
「いらっしゃい。ディモ。そろそろ旅立つと聞いたから、色々と用意してみたよ。特に燻製を多めに作っているから好きなだけ買っておくれ」
「えっ? 好きなだけ? 村の皆が買う分はあるの?」
「はっはっは。面白い事を言うね。村人が食べる量をディモが食べきれるわけないだろ? それに、魔物の肉も大量に入手したからね。燻製は大量に作ったから安心しな。それに猟師も定期的に売りに来るからね。ディモが心配する必要はないよ」
心配そうにしているディモの顔を見て肉屋の店主は豪快に笑うと、用意した商品の値段を伝えていく。その値段が思ってた以上に安く、思わず店主の顔を見ると心配そうな顔をしていた。
「これから旅に出るんだろ? 神父様から聞いたよ。頑張ってもおばちゃんは一緒に付いていけないからね。せめて応援の意味で安く売る事を許しておくれ」
「ありがとうございます! おばちゃんにはいつも安く肉を譲ってもらってたから感謝しています。取りあえず、燻製肉とチーズにソーセージを下さい! それと、歩きながら食べれるように燻製肉を軽く炙って革袋に入れてもらって良いですか? お姉ちゃんに食べさせたいから」
「お姉ちゃん? ああ。あの私達を救ってくださった神剣様かい? 神父様から話は聞いているけど、二人で旅立つんだよね。あの方がいらっしゃるならディモも安心だね。よし! じゃあ、神剣様に気に入ってもらえるように用意にしようかね! しばらく炙る時間がかかるから、他の店で買い物してきな」
肉屋の店主の言葉に、ディモは料金を支払うと他の店に向かう。極力、嵩張らない事を考えながら買い物をしていたが、それぞれの店でおまけとの名目で購入金額よりも多く商品を渡されていた。大量の荷物にフラフラしながら肉屋でも商品を受け取った後に道具屋に向かう。
「こんにちは。マイクさんはいますか?」
「おお。ディモか。そろそろ旅立つのか?」
店にはマイクはおらず、店番をしていた道具屋の主人が出迎えてくれた。マイクがいない事を確認すると、道具屋の主人は苦笑しながら答えた。
「マイクは神剣様がいた封印石の状態を確認にいかせている。ディモから破壊されたと聞いた結界石の状況も確認して、王都に伝えてもらう予定だ。まったく、あの馬鹿孫は仕事を舐めておる。今度は馬も用意したから、しっかりとしてもらわんとな」
「そうだったんですね。マイクさんのお陰でお姉ちゃんに会えたと、もう一度お礼が言いたかったんだけど……」
「なに。気にする事はない。本来ならきつい罰が神父様から与えられるはずじゃったが、ディモのお陰で許してもらえている。これ以上はなにも必要はない。それに王都の道具屋で修行するように伝えておるから、王都に着いたら顔を出してやってくれ。いつになるかは分からないだろうが。そう言えば、家はどうするつもりだ?」
道具屋の主人からマイクの行き先を聞いて残念な気分になったディモだったが、最終的な目的地である王都で会える事が分かったので、それを楽しみにする事を決めた。そして、家の話が出たのでディモは相談を始める。
「家を預かってもらう事は出来ますか?」
「ああ。いいだろう。月に一度は換気をして、軽く掃除をしておこう。費用は帰ってきた時に精算してくれたらいい。月額銅貨一枚にしておくよ」
「えっ? そんな金額で?」
「構わん。お前さんの母親との約束もある」
ここで母親の話が出てきた事に驚いたディモの表情を見て、道具屋の主人は詳細な話をしてくれた。自分が死んだら、ディモの様子を見て欲しいと頼まれていた事。魔石を生み出す能力を鍛えるために厳しくして欲しいと言われた事が伝えられた。
「お母さんがそんな事を?」
「ああ。魔石を生み出すには必要だと言われていた。まあ、安く買い叩いたのは儂の判断だがな」
道具屋の主人から話を聞いたディモは、なぜ母親が魔石を生み出す能力について知っていたかを確認したが、そこまでは話してもらっていないとの事だった。
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「神父様なら知っているのかな? お母さんが魔石を生み出す能力の事を知っていた理由を……」
道具屋から教会に向かいながらディモは独り言を呟いていた。道具屋の主人からの話だけでは足りないと感じたディモは、神父のトーカスならなにかを知っているのではと思い、挨拶を兼ねて訪ねようと足を運ぶ。
「えっ? 神父様が旅立った?」
「は、はい。『王都に報告に行ってきます。半年ほどしたら戻ります』と言われて。ディモさんが来たら、これを渡すようにと」
教会に着いたディモに見習いの神父がトーカスが旅立った事を伝えてきた。一緒に袋も手渡される。突然旅だったとの言葉に、ディモは困惑しながら受け取った袋を確認する。
「紋章と魔石? 手紙とかはないのかな?」
「私が預かったのは袋だけですので……」
袋から出てきた紋章は剣と勇者が描かれた教会の物であったが、素材は見た事のない金属で作られているようだった。魔石もかなり巨大で、ディモが今までに見た事のない大きさであった。
「取りあえずは預かっておきます。神父様が戻られたら手紙を渡してもらえますか?」
ディモは受け取った勲章と魔石を背負い袋に片付けると、その場で母親の事を知っているなら手紙が欲しいと書いて郵便代として銀貨一枚を神父見習いに手渡すのだった。




