14話 今後の旅の予定
買い物も終わり、フラフラな状態でディモが自宅に着いたのは夕方になってからだった。あの後もヘレーナは様々な店を回っており、最後まで付き合ったディモは疲労困憊で膝が震えていた。
「お、お姉ちゃん。大量に買ったね。食材が一ヶ月分以上はあると思うけど?」
「それはディモが料理して使い果たしてくれるだろう? 服は毎日着替えたいし、お風呂も入りたいから生活魔法用の魔石も多めに買ったし、私が使うための剣や防具も必要だからね」
ヘレーナは買った物を取り出しながら説明をする。魔石は大量に購入をしており、生活魔法を使う際に必要だった。生活魔法は体内魔力を使う事でも発動するが魔力の消費量が膨大であり、なぜか魔石を利用すると魔力の消費量が少なく済んでいた。そのため、生活魔法を使う際には小さな魔石が必需品となっていた。机の上に広げられた色とりどりの魔石が輝く中で、自分が生み出した魔石を見付けだしたディモが歓声を上げる。
「あっ! これって僕の魔石だ。他にもある!」
「ディモの魔石? どれだい? それと自分が生み出したのがどれか分かるのかい?」
「うん! 輝き方が同じだから分かるんだよ。この中だったら、これとこれとこれだよ」
「よし。これは別に分けて宝物にしておこう。どこかで魔道具にするために貯めておくよ。お姉ちゃんが知らないディモが作った魔石だからね」
「よく分からないけど、今度いい魔石が出来たらお姉ちゃんにプレゼントするよ! 楽しみにしててね」
屈託無く笑顔で約束をしてきたディモに『この子は天使か!』と小さく呟きながら、ヘレーナは喜びで腰が砕けそうな状態になりながら何度も頷いく。そんな様子を不思議そうに見ていたディモだったが、思い出したように質問した。
「そろそろ食事の準備をしないと。お姉ちゃんは、なにか食べたい料理はある?」
「ディモが作った料理ならなんでも! と、言いたいけど、今日は魚料理が食べたいかな。出来るかい? ディモ?」
「いいよ! お母さんのレシピを使うね。ちょうど旅用に燻製にした魚も使いたいからね」
明るい口調で言いながらも、ヘレーナは神剣になってから食欲が湧かない事に気付いていた。ディモから食事の確認があれば返事をするが、お腹がすいている訳ではなかった。また、食べる量も自分で止めようと思わなければ、いくらでも食べられ、生肉でも囓れる気がした。だが、ディモの母親が作ったレシピを大事にしていることを知り、ディモと母親の思い出を色褪せないためにも色々な料理を作ってもらおうとするのだった。
二時間後、テーブルの上には大量の料理が並んでいた。魚料理だけでなく、肉料理や野菜を使った料理にデザートなどの様々な料理が所狭しと用意されていた。ヘレーナが驚いた顔でディモを眺めると、エプロンを外しながら少し恥ずかしそうな顔をする。
「お姉ちゃん。気を使って『魚料理を作って』と言ってくれたでしょ? 気持ちは嬉しいけど、好きな料理や食べたい料理を素直に言ってくれた方が僕は嬉しいな」
「デ、ディモ……。なんて健気な発言をするんだい」
率直なディモの言葉に感動した表情を浮かべたヘレーナは一瞬で間合いを詰めると、愛情全開で抱きしめて叫んだ。
「もう! もう! ディモが可愛すぎて食べてしまいたい! どうしたらいいんだろう?」
「僕を食べないで! せっかく一所懸命お姉ちゃんのために作ったんだからご飯を食べてよ! 早くしないと冷めちゃうよ」
「ふふ。そうだね。せっかくディモがお姉ちゃんのために作ってくれたんだからね。冷めたり、残したりしたら天罰が下るよね。ディモも食べるんだろ?」
「当然だよ。料理は一人よりも二人で食べた方が美味しいからね! それとお酒も用意してるから楽しみにしててね」
大量に作られた夕食を、二人は楽しそうに食べ始めるのだった。
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「食べたー。もう、これ以上は入らない!」
大量に作った夕食だったがヘレーナは健啖家としての能力を遺憾なく発揮し全てを平らげていた。ディモも頑張って食べていたが、途中からは諦めてコーヒーを片手にヘレーナの食べっぷりを楽しそうに眺めていた。
食事は二時間ほどで終わり、はち切れんばかりのお腹を押さえながらディモはコーヒーを飲んでいた。ヘレーナも酒を飲みながら寛いでおり、満腹感を表現しているディモの様子を言葉にはせずに感動の目で見ていた。幸せな一時だったが、ヘレーナは今後の旅についての方針をディモに話し始めた。
「私も食べたねー。洗い物は私がするから、ディモはゆっくりとしてな。それと、明日からの旅の話だけどね。次の封印石に向かう道中でディモのレベル上げをしたい。もちろん剣術と魔術の両方を鍛えるよ。私が剣になった時にはディモが戦う事になるだろ? その時に少しでも私を扱えるようにして欲しいからね」
「そうだね。お姉ちゃんが鍛えてくれるなら強くなれるね! 今までは生活するので一所懸命で鍛える暇もなかったからね。よろしくお願いします! お姉ちゃん」
ヘレーナの提案にディモは力強く頷きながら握り拳を作るのだった。




