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神剣は少年を愛し過ぎる  作者: うっちー(羽智 遊紀)


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10話 村への襲撃が終わって

「ちなみにヘレーナ様と話すことは出来るかい?」


「ちょっと聞いてみます。神父様が話したいと言われています。お願いできますか?」


『……』


「あ、あの。ヘレーナ様?」


 神父のお願いを受けて、ディモがヘレーナに問い掛けたが返事はなかった。さっきまで喋っていたヘレーナからの反応が全くなくなった事に首を傾げながら、もう一度呼びかけるがやはり反応がない。ディモは困惑した表情で神父を思わず見てしまう。


「どうかしたのかい?ヘレーナ様はなんと?」


「ヘレーナ様に呼びかけても反応がないのです。どうしたんだろう? 疲れて寝たのかな?」


 そわそわとヘレーナと話が出来るのを楽しみに待っていた神父だったが、ディモの様子を見て怪訝な顔をしてたずねる。夜は人型を維持出来ないと言っていたヘレーナとの会話を思い出して神父に伝える。


「あっ! そう言えば、夜は人型に戻れないとヘレーナ様が言ってました!」


「なるほどな。神剣様ともなると、現世に顕現するには大量の魔力が必要になるのでしょう。普段は力をセーブするために眠りに就かれるのかもしれませんね。無理されてはダメでしょうから、お話しするのは明日にさせてもらいましょう。神剣様が目覚められたら教会まで来て頂けますか?」


「分かりました。今日はこれで? なにか手伝える事はありませんか?」


「後のことは私達大人に任せておきなさい。ディモはまだ子供。早く寝て大きくなるのがあなたの仕事です。ああ。マイクは後で話がありますから残るように」


 優しい口調で家に戻るようにディモに伝えた神父だったが、マイクへ声を掛ける時は低い声になっていた。疲れ切っているディモは声の違いに気付かなかったが、神父の表情を見たマイクは顔を青ざめながら頷いた。


「では、帰ります。あっ! マイクさん! マイクさんのお陰で神剣様と出会えました。本当にありがとうございます」


「あ、ああ。そう? っ! だろ! そうだよな! そうだよ。俺のお陰なんだよ! 村が守られたのは神剣を持ったディモが戻ってきたからなんだよ。だから俺は間違ってない。ディモに依頼して良かったよ!」


「調子に乗らない」


「ひぃ!」


 ディモの感謝の言葉にマイクは我が意を得たとばかりに胸を張ろうとしたが、いつの間にか背後に立った神父がマイクの耳元で呟く。二人のやり取りが聞こえなかったディモは不思議そうな顔をしながらも挨拶をすると、徐々に疲れが出てきた身体を癒やすために自宅に戻るのだった。




「それにしても疲れたー。あっ! 僕がお姉ちゃんを持ったままで良かったのかな?」


 家に着いたディモはベットに腰掛けながら、神剣を家に持って帰ってきた事を思い出す。腰から抜いた(ヘレーナ)を机の上に優しく置いて考えていたが、今から返しに行くのは夜も遅いと考え朝一番に教会に向かう事を決める。


「お姉ちゃんのお陰で助かりました。村が壊滅しなかったのも、僕の思い出や大事な商店街の人達が無事だったのはお姉ちゃんが頑張ってくれたからです。本当にお姉ちゃんと出会って良かったです!」


『……くっ』


「あれ? お姉ちゃん? 起きてる?」


『ぐー。ぐー。むにゃむにゃ……』


「起きてるよね! 絶対に起きてる! なんでさっきは問い掛けに答えてくれなかったの?」


『んー。やっぱりお姉ちゃんと呼んでくれなかったからだね。うんうん。お姉ちゃんと呼んでくれなかったからだね。ディモとの約束だったのに……』


「それで返事してくれなかったの?」


 ヘレーナが寝ていると思って呟いたディモの言葉に(ヘレーナ)がカタッと動く。あからさまな寝たフリをしている(ヘレーナ)から、喋らなかった真相を聞かされたディモはさすがに呆れた顔でため息を吐く。その様子を見たにヘレーナが怒濤(どとう)のごとく喋り出した。


『だって! 「お姉ちゃん」とディモが呼んでくれるから、お姉ちゃんは頑張ったんだよ! それを戦いが終わったら「神剣様」だって! もうお姉ちゃんはプンプンですよ! それに机の上に放置されるし……』


「だって! 神父さんの前でお姉ちゃんなんて言えないよ。本当は家に持って帰ってきたのも良かったのかな? と思ってる位なんだから」


 ディモの言葉にヘレーナは衝撃を受ける。人型だったらヨロヨロとしながら崩れ落ちたであろう。剣の状態だったので、弱々しく点灯しながらブツブツと言い出した。


『どうしよう。ディモと引き離される? そんな事になるのだったら教会を滅ぼした方が良いよね? 人型になった瞬間にこっそり破壊したらディモにバレないよね?」


「バレるよ! 聞こえてるよ! 止めて! 神父さんには明日の朝に話をしたら良いから!」


『仕方ないね。じゃあ、今日は一緒に寝てくれるなら考える』


「えっ?」


『そーいーねー! そーいーねー!』


「分かった! 分かったから! これでいい?」


 添い寝を連呼しだしたヘレーナにディモは慌てて机の上に置かれた剣を布団の中に入れると、その横に並んで入る。嬉しそうにしながら鼻歌を口ずさんでいるヘレーナを眺めていると、急速に眠気が襲ってきたディモは抵抗する事なくまぶたを閉じるのだった。

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