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神剣は少年を愛し過ぎる  作者: うっちー(羽智 遊紀)


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9話 魔物の集団を打ち破って

 ゴーレムを倒した事で魔物達は完全に逃げ出していた。村人達は歓声を上げながらディモに近付く。今回の戦いで完全無双をしていた立役者であり、普段の姿からは考えられない働きに商店街の人達や逃げるのに失敗したマイクが興奮した表情で集まると背中を叩いていた。


「やったな! ディモ! それにしてもあんたがそんなに強いなんてね!」

「ありがとうよ! 旦那が魔物に襲われそうな時に助けてくれたと聞いたよ!」

「おい! その剣はなんだよ! 切れ味抜群じゃねえか! 俺によこせ!」


「痛いよ! なにするんだい! それにそこのあんた。私を奪おうとは言い根性をしてるじゃないか」


 いつもと違うディモの様子に仲の良い商店街の人達は困惑し、マイクは威圧を受けて引き攣った顔になっていた。その様子に慌てたディモがヘレーナに怒る。


『お姉ちゃん! 駄目だよ! 商店街の人達はいつも優しくしてくれたんだよ! マイクさんもお姉ちゃんがいた封印石にいく依頼をしてくれたんだ』


「なるほどね。それにしてはこの坊主の表情はおかしいな? ひょっとして自分では行きたくなくて、ディモに押し付けたんじゃないか? なっ! なに? 急に身体が……」


 ディモの身体で悪態を吐いていたヘレーナだったが突然身体が動かなくなる。困惑していると、ディモが剣を見ている事に気付いた。頬を膨らませながら怒っているように見えるディモを『可愛いな』と思っていたヘレーナに衝撃の言葉が聞こえてくる。


「商店街の人達やマイクさんに酷い事したら嫌いになるよ!」


『でぃ、でぃも? ちょっとなにを? おねえちゃんをきらいになる?』


「そう! どうするの?」


『分かった。酷い事言わないし威圧もしない』


 剣の姿のヘレーナは弱々しく点灯しながら答える。嬉しそうに頷いたディモに周りにいた商店街の人達が恐る恐るな感じで語り掛ける。


「だ、大丈夫かい?」


「大丈夫ですよ! 皆さんも無事で良かったです」


 急に大人しくなったディモに安堵しながら今後の事について相談する。マイクは話をしたそうにしていたが、先ほどのヘレーナの威圧が効いているのか近付いてこなかった。しばらくすると村長や道具屋の主人など、武器を片手にした男達が集まってきた。


「ディモ! これはお前が倒したと報告があったが本当か?」


「そうだよ! これはディモが倒してくれたんだ! あの勇姿を見せたかったよ」


「他にも女性がいて、最初はその女性が魔物を倒していたよ」


 ディモが答える前に商店街の人達が我先にと話し始める。自分の子供が活躍したように話すのを見て、恥ずかしくなり慌てて止めた。


「止めて! 恥ずかしいから! それより村長さん。魔物達を回収して血抜きをしないと。あと、怪我した人は居ますか?」


『優しいね。ディモは。やっぱりお姉ちゃんは優しいディモが大好きだよ』


 脳内に聞こえてくるヘレーナの言葉にディモは楽しそうにしながら、けが人が集まっている教会前に移動を始めた。


 ◇□◇□◇□


「おい。ディモ。済まなかったな」


「突然なんですか? マイクさん」


 教会に向かって歩いていると、マイクが横に並んで話し掛けてきた。最初はばつの悪そうな顔をしていたが、そっぽを向きながら小さな声で謝罪してきた。理由が分からないディモは不思議そうな顔で確認する。


「なんでマイクさんが謝ってるんですか? 僕がお礼を言うなら分かりますけど」


『なにかあったって事だろ? ここは気前よく許してやったらどうだい?』


「そう? マイクさん。なにかよく分かりませんが謝罪を受け取りますよ」


「助かる! 本当にすまん! そ、それで、その剣だが……」


 マイクが謝罪しながら剣について聞いてきたので、ディモは分かる範囲でマイクから依頼を受けた後の事を説明した。話を聞いていたマイクは驚いたが、後ろで二人の会話に耳をかたむけていてマイクの祖父である道具屋の主人は驚愕の表情になっていた。


「それで、台座に刺さっていた剣を抜いたらヘレーナ様って名前の神剣でさ……」


「そうなのか? その神剣が人になったり、ディモを使って剣を振るうのか。それにしてもディモの姉ちゃんね……」


「ヘレーナ様? ま、まさか……」


 ディモの腰に差してある剣を見ながら呟くと、慌てた様子でどこかに向かって一人走っていった。





「お待ちしておりました。神剣の使い手よ。この度は我らの村を救って下さり感謝いたします。本当にありがとう。ディモ」


「えっ? 神父さん? 急にどうしたの? どうして僕が神剣を持っている事を知ってるの?」


『ディモ! 神剣じゃなくてお姉ちゃん! 私はお姉ちゃんだよ』


 教会についたディモ達を神父が待っていた。恭しく跪いて謝辞を伝えるいつもと違う神父の様子にディモが困惑していると、いつものように笑いかけながら事情を話し始めた。


「ディモは我らの教えについて覚えているかい?」


「ええ。『魔王を倒した勇者様に感謝を」ですよね。勇者様とその仲間達の協力で世界に平和が訪れた功績を忘れないように毎年お祭りをしてますよね。僕、あの時に配られるパンが好きです!」


「ふふっ。そうだね。ちなみに魔王と倒した剣の名前が神剣ヘレーナと言われています」


「そっか。僕が封印石に行くって話を知ってて、あれほどの魔物を倒したら分かる話ですね」


 ディモの話を頷いて聞いていた神父は、嬉しそうに頷きながら神剣に向かって恭しく頭を下げた。

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