表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

終わって始まる、私

────思い出すのは、楽しかったことばかり。


 ぶっちゃけ私は、平凡というには逞し過ぎて、異常というには物足りない人間だったのだと思う。




 “日本”という国のとある地方都市にある、そこそこの良家(……のはず)に一人娘として生まれた私。

 一番古い記憶は、立派な日本式の庭に咲いた私と同じ名前の花。そして、それが咲いたことを喜ぶ私を微笑ましく見つめる家族の姿だ。

 我が家族ながらみんな美形なんだよね、これがさ。

 かくいう私も、中々見れる方だと言われたことがある。……まぁ母方の親戚の誰か(生粋の女タラシだった)の言ったことだから、あまり信じてない。

 でも、私ことをそういってくれる人が、他にもいたらしく。そのせいか、共に入り嫁であった祖母と母は、男系一族の紅一点たる私のことを「蝶よ、花よ」と──つまり、女の子らしく育てようと画策した。


 ……ま、残念ながらそう上手くいかなかったんだけど(笑)


 元々、身体を動かすことが好きだった私は、有り余る元気のままに近所中を駆け回り、同い年の子を集めてはガキ大将みたいなことをしていた。

 公園で延々と鬼ごっこしたり、かくれんぼしたり、サッカーをしたときには、お約束のようにご近所さんの窓ガラスを割ってしまったこともあった(ちなみに、やんわりと怒られた)。


 あまりにも元気すぎる私の行動(および奇行)の数々に気づいた祖父。その祖父が、私がそろそろ小学生になろうかという年頃に、物は試しと総合武道館へと連れていってくれたのだが……。


 結果、すっかり『武道』の魅力にハマってしまったのだ。


 ちなみに、後にそれが祖母と母にバレた祖父は、竹刀でメッタ打ちにされていた(二人とも段持ちだったらしい)。ついでに父はそれを見て十字を切っていた。

 ……父の名誉いのちのために、密告チクリはしなかったよ。

 剣道・柔道・弓道etc(エトセトラ)……。なまじ小金持ちで、唯一の孫娘である私に溺愛していた祖父が、手間暇惜しまず後押ししてくれたこともあり、私はメキメキと上達していった。

 その際に、祖母と母に「ならば、せめてこれも……」と悲痛な表情カオで懇願されたため、華道と茶道も習った。


 ……うん、楽しかったよ?もちろん。




 そんな私も、高校を卒業すると家を出て、大学近くのアパートで独り暮らしを始めた。

 あのときは両親はともかく、祖父母(特に祖父)に引き留められたんだっけ。

 家の前にバリケードを張られる前に夜逃げのように引っ越したんだよね~。

 ……後で聞いた話によると、私が居なくなったことを知った祖父が号泣したらしい。夜通し酒を呑みまくったそうな。


 そんなスタートで始まった初(家)ぼっち生活。

 大学生になっても武道は続けたけど、相も変わらず私への援助を一切合切惜しまぬ祖父のお陰で、バイトも社会勉強程度そこそこに暮らせる“THE☆楽”な生活に飽きてきた頃。同級生に勧められたゲームをやったこともあった。


 ジャンルは、いわゆる“乙女ゲーム”。


 それまでの人生で、全く恋愛に興味を示さない(枯れ気味な)私を心配して……という建前で、買ったはいいが大して好みじゃなかったから捨てる代わりに(私の誕生日プレゼントとして)押し付けたらしい(しかも、ちゃっかり有料でした☆)。

 くそぅ、覚えてやがれ。


 ……まぁ、なんだかんだ全クリしてやったけどね!




 その後、わちゃわちゃした楽しい大学生生活を終え、卒業した私は武道技術を生かす(殺さず?)ため警察官になり(えぇ、そりゃ勉強は頑張りましたとも!)、年を重ねるごとに部下に後輩にとそれなりに慕われ(?)つつ、充実した日々を送っていた。

 公務員だから、給料も安定してるしね。


 でも、最期・・はわりと呆気なく訪れるわけで。


 ある日、部下一人を連れた巡回で偶然、通り魔(予定?というか未遂)の男と鉢合わせた。

 ヤクでも使っていたのか、完全にイッちゃってる目でこちらを見ると、気味悪い奇声と共に持ってる刃物ナイフを振り回しながら飛びかかってきたのだ。

 突然のことに腰を抜かした部下(あとでシメる、絶対に)を尻目に、おもいっきりぶん投げて押さえつけてやった。得意の大外刈である。

 幸い、周囲に人は居らずこのまま応援を呼べば万事解決する──はずだった。

 部下に通り魔(結局未遂)を任せると、私はふと投げたときに一緒に飛んでいってしまった刃物ナイフを思い出した。

 キョロキョロと辺りを見回すと、ちょうど車道の真ん中に落ちていたので、私は拾うために車道に出た。そのとき、


 耳に響く異常な音──瞬間、熱くなる全身。


 そのまま朦朧としていく意識の中、部下が必死に呼びかけてきたのが聞こえた。

 けれど、私は何が起きたか理解する前に、抗いがたい暗い眠りに落ちていった。

 なぜか脳内に響くのは、某有名RPGのゲームオーバーを告げる音。

 そのせいだろうか、



────あぁ、私は死んだのか。……三十路一歩手前(独身&カレシ居ない暦=享年)で。



 次に私が目覚めたとき、ふと頭に浮かんだのは、そのどこかコミカルな一言だった。











  ◇   ◆   ◇   ◆   ◇   ◆











 ちょっと待て、死んだのに目覚めるってどゆこと!?



 ていうか、ホントに目ぇ覚めたのかな。辺り真っ暗だし、動けないし、息苦しいし……。って、あれ。

 死んだのに、息苦しい(・・・・)……?

 待って待って待って!ひょっとして私生きてるの!?

 あ、そういえば、さっきからなんか揺れてる気がするし、地震かな。

 まぁ、いっか!生きてりゃなんとかなるでしょ。ってことで、ちょっくら動いてみましょう。ゴロゴロ……(ギシィ)、え?

 なんか……手首と足首に激しい違和感があるんだけど。

 てか、ちょっ、痛いな、何だこれ。引っ張っても取れんっ!ウガァアアッ!!(グイ)ぐげぇ~!

 ななななんなの!?あ、頭か!毛か!毛のせいか!?ハゲちゃうっ!ひ、引っ掛かってるって、ねぇ!


「……貴女は、何してるんですか……」


 うぎゃ!?と、突然の光ぃっ!目ガァ、目ガァァア!!

 あ、ちょちょっと、やめぇ、ア~!今起こされたら抜けちゃうっての!ひゃーーー!


「まぁ、これは失礼いたしましたわ。御髪が引っ掛かってらしたの?勿体ないですから外してあげましょうね(グイィ……ブチッ)あら?」


 アギャァァァァァアアアッッ!

 千切りよったぞ、この人!何てことしやがる!私はショートだから痛むと、ケアが大変なのに……唯一女として大事にしてるのに……!それを、それをぉお!!

 ちっくしょぉおお!

 そこのオーマーエー!将来ハゲたらどうしてくれるのさ!!責任とれやぁ!


「何を睨んでるんです?……あぁ、そうでございますね。拐われたら(・・・・・)、普通怒りますわよね」


 そうだそうだ!拐われたら誰だって……って、待てぇ!!

 私……拐われてるの!?

 んなアホな。

 第一、こんなアラサー未婚女(半戦闘職?)を誘拐して、何するのよ!もっと可愛い子にしなさい!アイドルとか!!(混乱)

 確かに私は良家のお嬢さんって言われてるけど、それほどでもないし?それに、うちの家に身代金要求しようものなら、おばあちゃんとお母さんが殴り込みに来るっての!

 ……実際、子どもの頃に経験があるからね?


「さぁ、お嬢様。あと少しですわ!あと少しで────全て、終わりますからね」


 えぇー。な、なに……この人?

 メイド服が、冥土(・・)服に見えるよ?悪魔的オーラぷんぷんだ。

 てか、そもそも何でメイドさんが誘拐を?そもそも、お嬢様って……そんな身分でもないんだけど。どなたかと間違えてません?

 あと、三十路女がお姫様だっこって、どんな羞恥プレイですかい。……ま、動けないんだけどね!

 てゆーか、メイドさん……若いなぁ。美人だし、どっかで秘書とかしてそう。私、こーゆークールビューティな女の子、わりと好みなんだよね!


 ……決してソッチの話じゃないよ!?私はノーマルだ!


 さて、でも実際問題、動けないのは辛いなぁ。

 私がさっきまで入ってた箱(?)の中ではフツーに動けたんだけど……。このメイドさんに触られてから動けなくなったっぽいんだよね。なんでだろ?

 最初は、「毒かな~オワタ☆」とか思ったけど。どっちかっていうと金縛りみたいな感じ。ほっとけば解けるかな?

 そういえば、今気づいたけど……この家?アジト??どっちでもいいけど、ずいぶん内装がアンティーク調だな。

 たとえるなら……国○議事堂?う~ん、なんか違う。

 やったら廊下が長いし、なんだか海外の古き良き貴族邸の方が近いかな?ヨーロッパとかの。まぁ、よく分からんけど。


「さぁ、さぁ、お座りくださいな。そしてこれから来る絶望に、精々怯えてくださいましね?」


 oh……この人だいぶヤバイな。ちゅーか、そんな恍惚とした表情(かお)しないでくれ。なんか照れる。

 しっかし、やっぱイカれてる系女子の思考は読めないぜ。なんせ私みたいなのを誘拐するからな!

 つーか、もしかしてその手にお持ちなのは裁ちはさみでしょうか?ワォ、なんて情熱的……じゃなくてヤバイよ!危ないから!裁ち鋏、そんなシャキシャキしてたら指落ちますって!

 ……あら?ツッコむとこそこなの私?

 って、落ち着け落ち着けー!現役警察官が冷静さを欠いてどーすんの!深呼吸だー!(すーはーすーはー……)よし!おk!!


 さてと!落ち着いた(?)ところで……やっぱり一つツッコんでもいい?






 ……私の目の前で椅子に座ってる、ドレスを着たお人形さんみたいな女の子は、どちら様でしょう?


 と、言うわけで新連載です。


 相変わらずの見切り発車かつ、不定期更新ですが……どうか生温かい目でみてやってください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ