死にかけてたんだけど
「大丈夫!?っこんな酷い怪我して……」
「君……だけでも、逃げ……」
「そんなわけにもいかないでしょ!私を庇ってくれたのに恩人を見捨てて逃げるなんて、家名に泥を塗るわ!」
そう言いながら、ポケットから液体の入った小瓶を取り出す。澄んだスカイブルーの中身を見た俺は、場違いにも綺麗だなぁと感想を抱く。死にかけているのに気楽なものである。
女の子は小瓶に手を掛け、一瞬躊躇うかのような顔を浮かべたのち、キュッっと口を開けて俺に差し出す。
「これを飲みなさい!」
「いや、それより……逃げて「いいから飲みなさいっ!」はい……」
勢いに押された俺は、そのまま瓶を傾けて飲ませて貰うと、口の中にヒヤッとした不思議な感覚がした。それは次第に暖かくなり、いつの間に握られた二人の手を中心に全身へと広がって行く気がした。
「これは?」
「じっとしてて!」
よくわからないが、体を廻る度痛みが引いていく。そのことに驚きを示すが、彼女に自制を促される。
「アニキ、アレ何してんすかね?」
「よくわからねえが、とりあえず逃げる様子はないから見物しとけ。面白いことが起きたら今後の為になるかもしれねえ。こういう家業やってく上で、そういった知識を蓄えんもの長生きするコツだ。覚えとけ」
「うぃーっす」
言葉通り奴らは静観の姿勢を崩さず、俺達を見下ろしていた。お陰で全身に熱が行き渡るまで時間を稼げた。
俺の表情を凝視していた彼女は、頃合いと見計らうと俺の手を引き小声で「逃げるわよ」とささやいた。だが俺は、
「いいや、逃げるのは無しだ。こいつらを倒す。」
繋いだ手とは逆の手を握りしめながら、俺は体を起こす。
「バカ言うんじゃないわよ!武器もないのに勝てるわけないでしょ!」
「武器ならあるさ。"コイツ"がね」
そう言って持ち上げた右手には、1束の"ホウレンソウ"があった。
「ほう、兄ちゃんかっけえな。よくわかんねえけど傷も治ってるみたいだし、獲物も手に入れて元気百倍ってか?」
「ああ、お陰様でな。だからテメエ等覚悟しろ」
先ほどまでは痛みと苦しみで恐怖が渦巻いていた心に、炎が燃え盛っていた。それも色で例えるなら赤ではない、青い奴が。
「いい度胸だ、もう一度ねんねさせてやるよ。今度は目が覚めねえがなっ!」
怒号と共に再度打ち下ろされる一撃、隣で女の子が叫ぶ声が聞こえる。
怖がらせてゴメンと心で謝りながら、俺は腕を振るった。




