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第一章 青年レオと少女アルル
このお話は、遠い遠い遥か昔のお話。人間がまだ、魔物と戦っていた頃のお話。
とある王国の城下町の外れ、海を見渡せる崖の上に、小さなお家がありました。そこにはふたりの男女が静かに暮らしていました。
そして今、その小さなお家へと向かい、道を歩く青年がいました。彼の名前はレオ。そのお家の住人です。
「帰ったぞ」
レオはお家に入るとすぐにある部屋に向かいました。彼のではありません。もうひとり、このお家に住んでいる彼女のお部屋です。
「あ……お帰りなさい」
ベッドで読書をしていた彼女は、レオが入って来ると視線を本から彼の顔に移し、にこりと微笑みました。
少女の名前はアルル。もうずっと、体が不自由な生活を送っています。
「どうでしたか? 町は」
アルルはレオに問いかけました。
「別に何も変わっちゃいない。いつも通りさ」
「そうですか……」
アルルはまた、視線を本へと戻しました。
アルルの命は、もう長くありません。
その理由を説明するには、少し時間を遡る必要があります。