力
やばい、楽しみすぎる!
授業が楽しみだと思ったの初めてかも……。
初めての事にこれからに思いを馳せずにはいられない。
「まずは担任の所へ行ってこい、俺は教室にいる。1年D組の担任を呼べばいいだけだから俺はいらないだろう。職員室は二階の階段前だからすぐ分かるはずだ」
「了解、じゃあ後で」
こうして私達は別れ三人は職員室へ向かった。
「失礼しまーす! 一年D組の担任の方は?」
「はいはーい、私ですよ~、君たちが転入生? 私は三鷹といいます」
ごっついおじさんの想像しといて良かった。なんせ出てきたのが若くて可愛い女の先生だったから喜びは倍増だ。
「はい!」
「あ、じゃあやる事が二つ程あるんだけど……まず、この学園には三つの勢力? みたいなのがあるんだけど知ってる? 力を我がものとするセルフ、永遠に力を使い続けたいと望むパーマメント、そして力を一時的な借り物だと主張するモーメント。どれに入りたいですか?」
「ああ、私達はモーメントで」
まぁ、瀬戸との約束ですからね。
三鷹先生は私が即答したことに驚いたのか、それとも反逆者の息子である瀬戸が代表のモーメントに不安を覚えたのか少し目を下へやった。
「……りょ、了解しました。では、次は能力検査です。競技会場へ移動しましょう」
すると、三鷹先生は何故か私達の方を向いたまま3歩程後ろに下がり
『CONTRACT』
と呟いた。その途端先生の手には長いチョーク。チョークを使い円を書き、
『解除』
の声でチョークは消えた。
「皆さん、この円の中に。………競技会場」
全員が円の中に入り場所を指定した先生、私達は重力に押しつぶされるような感覚に陥った。
「はい、着きましたよ」
「今のは何だったんだ?」
蒼は信じられない様子で三鷹先生を見た。
「今のは私の借りている力、簡単に言えばワープですね。本来なら使わなくても良いんですけど力というものを体感してもらいたくて」
「じゃあ、まず高梨君だっけ? 目を閉じて集中して「CONTRACT」って呟いてもらって良い?」
「あ、はい。……CONTRACT……ん? なんだ、本?」
「それは……魔法書かな? 開いてみて」
「風?」
蒼は多分そのページに書いてかあったから「風」と言ったのだろう。しかし、それで力は発動してしまったようだ。風の無いはずの競技会場に風が吹く。
「初心者で良かった~、初心者じゃなかったら私達は強風に襲われてましたし。高梨君のは魔法書を使う力ですね。あぁ、「解除」と言えば力は元に戻るのでやってみて下さい」
「解除……、おお戻った」
「次は、白川さん。お願いします」
紗奈は目を閉じて「CONTRACT」と呟いた。
「笛?」
「多分ですが、それは霧と共に幻を発生させるものですね。試しにりんごの幻を見せて下さい」
「りんご」
紗奈はそう言ったあと笛を少し吹いた。どこからか白い霧。そしてりんごの実。
「これが幻? すごー」
私は紗奈の力に感動した。
「えっと……解除」
「はい、そうですね」
三鷹先生は紗奈ににっこりと笑いかけた。
「では、日鏡さん」
名前を呼ばれた事で少しだけ、私にも緊張感が走る。
「――CONTRACT……ん? 針?」
「日鏡さんのはあれですね。針を使った戦闘方式を自由に変えられるというものです。試しに弓と呟いてもらってまるで弓があるかのようにエアー弓をやってください。あ、矢の代わりに針なので針は持ってくださいね」
私は言われたとおりに「弓」と呟きエアー弓をやった。するとまるで弓が本当にあったかのように針は飛んでいき壁に刺さった。
「……あ! すいません、私間違えてしまいました。日鏡さんのはただの針ではなく針があたたったてしまったところが凍るといういわゆる氷針でした。」
「解除……へー、そんなのあるんですね」
「はい、それはそれは沢山の種類があるんです」
氷針……それが私を守ってくれていた力、そして私がこれから借りる力。