瀬戸の目的
心地よい風が葉を揺らし、夕日が私達の顔を照らす。私には時の流れがゆっくりと感じられたが紗奈にとってはそうでは無かったようだ。
「私、少し疲れちゃったー。お腹も空いてきちゃったしさ、何処かで何か食べながら話しません?」
紗奈はお腹をさすりながら私の方を見た。
「瀬戸、この辺何かある?」
「着いてこい」
瀬戸に連れられて街の中を歩くと周りの目線が何故か私達に集中しているような気がした。私達は制服だったし、そんなに目立ってないはずだったのだが。
瀬戸は沢山の店の前を通り過ぎ狭い路地へと入っていった。あまり、飲食店が無さそうな……というか、誰も来なそうな暗い道。その奥には《オープン》と書かれた札のかかった扉があり、瀬戸はそこへ入っていった。
「来たか、瀬戸。いつもより早かったな……っておい、あいつら良いのか?」
店主らしき男性がこっちを見るなり驚く。
「あいつらはまぁ……協力者だ」
「お前が!? ほぉー」
にやにやと、さっきの警戒とは全く持って異なる雰囲気でこちらを見る。
「おじさん、誰? 店員にしては馴れ馴れしくない?」
私はまた第一印象という大切なものを忘れて第一印象が最悪になりそうな一言を放った。
しかし店主は、はははっと笑い頭をかいた。
「威勢のいいお嬢さんじゃねぇか」
「初対面の相手にこれって、性格悪いだけだろ」
うわっ、ムカつく!
「はぁ? そういうあんただって、初っ端から自己中発言してたじゃない」
「……ほーたるさん? 私、お腹空いたって言ったんだけど」
紗奈さん、目が怖いっす……。お腹が空くと機嫌悪くなる人本当にいたんだ。ていうか、どんだけ空いてたんだ!
「紗奈は怒らせると怖いよ~」
蒼はにこにこと私と瀬戸に言った。紗奈が怖かったので私達は席に着き、話の先に夕食を取ることにした。
「じゃあ、食べ終わった事だし話を続けますか!」
入学する前に瀬戸の目的についてを知らなけれは協力出来ないと思い私は目的を聞いた。
「ちょうど一年前――、俺の両親はこの学園の学園長によって消された。しかも、俺の目の前で二人は……。だから学園長を……地獄に叩き落とす、それが俺の目的だ。世間から見れば俺の両親は反逆者だった。学園長はまぁ、世間から見たら英雄なんだよ。20年前この学園を作った張本人だしな。だが、俺の両親は学園長が守護神の力を使い人を殺めていたのを目撃してしまった。だから、二人はあいつを追放しようとしたんだ。だが、それは周りには英雄を無理やり排除するというふうに見られた。
ーーー俺はあいつを殺しはしない。この力は人を殺めるものではなく自分を守るための力だから。」
1つ間を置き私は言った。
「それは、学園で守護神を使えるようになって……その後私達に学園長を地獄に叩き落とす手伝いをして欲しいって話?」
「いや、違う。叩き落とすのは俺だけでいい。三人にはそれまでの過程を手伝ってもらう。学園にはモーメント、セルフ、パーマメントっていう三つの勢力があるんだが、その勢力同士の争いで勝たなければならない。勝てば他の勢力は勝った所の勢力につく。つまり勢力が1つ減るわけだ。最終的に三つが一つに絞られたらその勢力の代表は学園長と戦う機会が与えられる。学園長と戦える事は他のの奴らにとったらまたとない勉強の機会だからな。ちなみに俺はモーメントの代表。モーメントのメンバーは一人しかいないから代表も何もないんだが。んで紹介が遅れたが、そこの奴はこの店の店主で俺が唯一信用出来る奴だ。名前は早水賢汰郎」
「なるほどね~、ちょっと色々聞きすぎたから頭整理するわ」
「私も今日は……」
「そうだな」
私達、三人は少し沢山の事を一気に知りすぎてしまった。やはりどの世界にも理不尽な事は存在するし、苦しみと向き合うのは必然なのだと改めて思い知らされてしまった。
あーあ、全く。なんてやつだ……瀬戸は凄い。