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瀬戸への協力

夜中の〇時から始まった戦いは朝の六時をもって終了を迎えた。瀬戸曰くこんな短時間な守護力開放祭は初めてだと話した。

戦いが終わったという実感は余り無かった。ただ、三鷹先生が初めからワープの力を持つチョークで魔法陣を書いていたのだろう。私達はそれぞれのチームごとに違う場所へ飛ばされた。私達、モーメントは偶然か必然か寮前の噴水の所へ飛ばされた。エアはと言うと、後から私達を追いかけてくれたので今は一緒にいる。


「……あれ、ここは?」


紗奈が蒼の腕の中からゆっくりと体を起こす。


「って、何!?蒼近っ!!」

「……紗奈が倒れてるから俺が付いててやったんだろ?」


慌てて蒼から離れる紗奈に蒼は少し不機嫌そうに言った。


「紗奈、蒼………私のせい、よね?」

「え、何が?」

「………」


紗奈は私と口ごもる蒼をおろおろと見返した。


「……日鏡、俺のさっきのは何ていうか違う。忘れてくれ」


申し訳なさそうにそう言うが、人が冷静では無い時に発した言葉というのは案外本音だったりする。その人すらも自覚していない本音。


「でも……。ねぇ、紗奈前に帰りたいって言ってたよね?聞いちゃったのよ、偶然。やっぱり、この世界に来て後悔してる?」


聞いてたんだ……、そう呟くと紗奈は俯いた。後悔してる?って、してるに決まってるのに、私は何を聞いているんだろう。

私は地面に視線を落とした。私達のすれ違う心や、この突きつけられる現実はとても冷たいものなのに、雨はだんだんと弱くなっていた。


「蛍、私は帰りたいと思うよ。今でも。でも後悔はしてないんだ。蛍の笑顔を沢山見れた。新しい事を沢山知れた。私にとってこれは絶対後悔にはならないから」


雨が止んだーー。朝日が前髪を伝う雨粒を透明に輝かせる。

知っている。紗奈はこういう子なのだ。


「紗奈……ありが……とう」


ここに二人を連れてきた、私ならもとの世界に戻れるかもしれない。それにそうする事が出来ればエアだって救うことが出来る。しかし、それは瀬戸を裏切る事になる。今すぐにでも、二人を開放してあげたいのに……私はどうすれば。


「三人とも、今までありがとな。俺一人だけじゃ、無理だったよ。でも、ここからは俺一人の戦いだ。学園長に恨みを持つ俺だからこそなし得る事なんだ。だから、日鏡……お前なら向こうに帰れるんじゃないか?もう、帰っても大丈夫なんだぞ?」

「は?瀬戸?」


私は聞き返す。だって協力というのは学園長と戦う事も含まれていた筈なのだ。どうして……そんな?


「………っあ!それより、あんたの事、気になるんだけど。日鏡、こいつは?」


瀬戸は話題を逸らしたかったかの様に、エアを指さし私に問い掛けた。


「……うん、そうね……。この子はエア。私達と同じで異世界から来たの。生きてあの世界に帰りたくて、DOに参加せざるを得なかっただけだから、心配しないで」

「俺たちと同じ!?他に居たのか」

「私もびっくり」


蒼と紗奈は同じ反応を見せた。まぁ、そうなるわよね。


「……日鏡蛍、本当にありがとう。私はあなたがいなかったら……」

「蛍、そう呼びなさい?よそよそしいのよ」

「……蛍?……蛍、蛍」


エアは噛み締めるように私の名前を呼んだ。

そんなに、呼ばれると恥ずかしいっていうのに……。


「瀬戸?何よ、聞いた本人が無反――」


「モーメントさぁん!これから閉会式ですよぉ!」


息を切らして向こうから走ってくるのは三鷹先生だ。

私はまず、閉会式の存在に驚いた。あったのか、閉会式。

閉会式は校舎内のホールでやるらしく、私達は三鷹先生の力でそこへ飛ばされた。先生はエアの存在に気づいていたが、敢えて何も聞かなかったのか、それともどうでも良かったのか謎だ。

ホールは舞台と席が少し離れていて、私達は数ある席の中で、端の方を選び着席した。

そうこう、しているうちにホールの灯りが消え、よく通る司会者の声が響く。

閉会式が始まったみたいだ。

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