あなたは敵?
私の事を教えてと言われた所で、状況がややこしすぎて何をどう話せば良いか分からない。でも、ここで私の情報を提供しない限りエアも何も話さないだろう。
「で、何を知りたいのよ?」
エアはじっと私を物静かに見澄まし、
「モーメント……どうしていきなり人数が増えたの?セイレント学園トップのあの人は、頼れる人などいないはず」
瀬戸の事は多少把握しているようだ。
「瀬戸……まぁ、確かに頼れる人いなかったわよ?でも、私瀬戸に協力するって約束しちゃったから」
「約束して、モーメントに入ったって事?……でも、あなたには何のメリットも無い」
「だから、メリットとか関係ないのよ。協力したいからしてんの、悪い?」
その答えに驚いたとでも言うように、エアは開いた口を閉じない。
黙りこくっているエアに私は問いを発した。
「ねぇ、私も聞いても良い?エアってこの世界じゃない、世界ーー異世界から来たの?」
「……どう、して」
やはりそうだ。異世界から来た事は間違い無いが私達と同じ世界から来たかどうかを確かめる必要がある。
でも、それを確認する為には自分達も異世界から来たことを話さないといけない。果たして大丈夫だろうか?蒼と紗奈に黙って、情報を提供してしまう事が少し気がかりだ。
「私達三人の事分かる?瀬戸以外のモーメント」
「転校生の三人の事は上から聞いた」
「なら、良いわ。そう、その私達三人はこの前、違う世界からここに飛ばされてきたのよ」
「っそれ!どういう事?」
「だ、か、ら!私がそれ聞こうとしたんでしょ?あと、あなたは敵?味方?敵なら私はあなたに話す事はないわよ」
……聞く事は沢山あるけど。
彼女は思い惑っている様だった。両手を胸の前で握りしめ、暗い表情の中の覚悟のある瞳が何かを決めた事を物語っている。
「……敵。だけど、私の意志じゃない
」
「あなたの意志は?」
「私は……あの世界に帰りたいだけ………ただ、ただそれだけ、なのに……」
「ふぅん。……信じて良いの?」
「少なくとも、私はDOよりあなたを信じてる」
エアのいつの間にか止まっていた腕の震えがまた震え出していた。何かに怯えながらも揺るぎない意志は私にも伝わってくる。エアの事情はまだ何も分からない。だけど、信じてみても大丈夫な気がする。
私が信じてみたいのは、紗奈にあをな思いをさせてしまった後悔なのだろうか。
それとも、彼女の瞳から伝わる強い意志にでも動かされたのだろうか。




