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日向と契約

「どうする、瀬戸?下降りる?」


ドラゴンに乗り、日向の上空にいる私達は瀬戸の指示を仰いだ。


「俺はここで少しトラップを仕掛けようと思う。けどだからと言って先にお前ら三人を下に行かせるのは色々心配だしな……。まぁ、焦ったら負けだし、全員で降りるか」


瀬戸は電子地図でトラップを仕掛ける。まずは日向を取り囲んでる生徒達だけにトラップを仕掛けるようだ。

瀬戸が仕掛けている間、私はこの行事が始まる前の特訓で考えた新しい技の事を考えていた。ロケット弾。目標を言葉にし、空に放つ。忘れた頃に空から戻ってきてその目標を打つ。忘れた頃に……と言うのがまだまだ私の力不足で難点になってしまっている。


「良いぞ」


その声を聞き蒼が立ち上がる。


「それじゃ、行きますかっ」


その瞬間ドラゴンは消え、私達は真っ逆さまに日向のいる下へと急降下した。


「いやぁぁぁ!……蒼っ!何、突然ドラゴン消してくれてんのよぉ!?」


重力や空気抵抗の関係で心臓がぎゅっと苦しくなる。私は精一杯声を張り上げるものの、風の音で私の声はやっとの事で蒼に届く。


「はぁぁ?言ったじゃん?」


その言葉で、私の頭にはさっきの蒼の「それじゃ、行きますかっ」というさりげない呟きが過ぎった。


「っちょ!あれ?」

「おいおい、もう地面近いぞ!?高梨、何か出せっ」

「あ、え?えっと、クッション的なやつ?てか、あんの?」


このままじゃ、全員死ぬ。敵の前で自ら死ぬっ!!


「蒼っ、早くぅ……」


ぎゅっと閉じていた目を薄らと開け紗奈は蒼に手を伸ばした。

蒼は魔法書を開きクッションか何か柔らかいものを探した。


「んぁぁ!これで良いか?……紗奈、日鏡、直人、俺に、パラシュートッ!」


クッション系より、落ちるスピードを遅くするものが魔法書で先に出てきたのだろう。というか、そもそもクッションなんて、魔法書にないのでは?


「……う、うん、とりあえずお礼を言っておくわ」


私はやっとゆっくり呼吸出来ると、大きく息を吐いた。そして、だんだんと地上に近づきやっとの事で足が着くとパラシュートは小さな光を放ち消えた。


「待っていたぞ、瀬戸ぉ!今すぐ、殺してやるっ」


私達の姿を確認するなり狂気に満ちた笑顔を浮かべた日向は座っていたドラム缶から降りた。

しかし、私は日向の言葉など耳に入らなかった。何故なら、日向の前にいた生徒………それがDOのメンバーだったからだ。デス・オーガニゼーション。無差別殺人組織である奴らが何故ここに?

私はドSの黒髪の男が大きな水鉄砲を紗奈と蒼に向けた事を思い出し、腕が震える。

ちらりと横にいる瀬戸に目を向けると流石の瀬戸もこの事態は予想していなかったようで凍りついたように固まっていた。

どうするのよ……。

日向の周りにいる生徒がDOだと言う事に紗奈が気がつかなかったのは無理がない。蒼も紗奈もあの寮が襲撃された時にはちらりとしかDOの姿を確認していない。それに加え瀬戸と私とは大きく違い、後ろにいる紗奈と蒼を振り返るとまるで、DOの殺気に気がついていないようだった。


「……日向、どう言う事だ?そいつらDOだよな?」


口を開いたのは瀬戸だった。しかし、その言葉にいつもの余裕は感じられない。動揺がこちらまで伝わってくる。


「はあぁ?何で教えなきゃいけないんですかぁ?」

「……いいだろ?どうせ、殺すんだ」


状況を一切教えようとしない日向を見たDOのリーダー、黒髪のメガネの男が日向に口添えした。


「ちっ……まぁ、良いけど。DOと契約したんだよね〜、瀬戸、お前を殺す為に!」


そう上から目線で私達を見下す日向。

……契約………そこまで一位の座は大切なのだろうか。

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