こっちの世界
何これ、何これ、何これ!?
え、これってKI・TA・KO・REな展開じゃん!
魔法? 超能力? どういう仕組みでこうなったかは分からないけど、というか興味もないけどこれは絶対非科学的な何かによるものでしょ!!!
喜びと心の高鳴りを抑えられない私は心の中で叫んだ。
私が心の中で叫んでいる間に紗奈と蒼も会話を交わしていた。
「……これってあいつの願いが叶ったってことなのか?」
「多分。でも、私思ったんだけど願ったのが蛍だったからこの願いが叶ったんじゃないかな? だってさ、もし私達が同じこと願ったとしてさ魔法や超能力を信じてない人に叶えてあげようとは思わないじゃん。蛍はずっと信じてたから」
「まさか」
蒼は軽々しくそれを否定。
石畳の広場にレンガの建物。まるでヨーロッパの様な街並み。これがアニメなら間違いなく陽気な音楽が流れているだろう。ここは何処かの学園の広場なのだろうか? 制服姿の人がやけに多い。まぁ、そのお陰で私達は浮かずに済んでいる。
本当に異世界――なのかな? 夢にまで見たこの状況に感動まで覚える。
「なぁ日鏡、この場所に心当たりはないのか?」
私とは対照的に落ち着いた様子の蒼が問う。
「え? あるよ、ここは異世界」
なに食わぬ顔で答えると「違うよ~」と紗奈が笑った。
「だからね、ほら私達にはこの世界がどういう世界なのかとかさ分かってないでしょ? 情報が足りなすぎるんだよ。だからまずは情報を集めようよって話」
「それもそうね」
「おい、そこどいてくれないか。そこは俺の場所だ」
後ろから声がした。後ろを振り返ると黒髪の学生らしき男の子が立っていた。目を下へ伏せていてよく表情が分からないが怖そうな雰囲気をかもしだしている。
だからって私は屈しないし!
しかも、この男、何て自己中なのだろう。もう自己中男って呼んでやる! あんたの場所だかなんだか知らないけど私達はそんなの知らないし、それで私達がここを空ける理由にはならない。しかも、この木は絶対、自己中男より私の方が好きだ。
「だから、何?」
「ちょっ! 日鏡! 何言ってんだよ、ひとまず道を開けるぞ」
蒼は自己中男の言う事を聞くつもりらしい。私はずるずる引きずられ道を開けるハメになった。
「でもさ~、あの人のお陰で分かったよ! この世界の共通語は日本語だ!」
紗奈はなんて呑気なのだろう……はっ!
「そうよ、自己中男にこの世界の情報を聞き出せば良いんじゃない!」
どうして思いつかなかったんだろう。
でも私に風が吹いてる気がする!