戻った力
本当、言うのが遅いのよ!何考えてるんだか。
「日付が明後日になった瞬間それは始まる。守護力開放祭はこの学園内全体が会場で、パーマメントかセルフかモーメントのどれかが勝つまで続く。相手を戦闘不可にするか、負けを認めさせるか、しないと勝つことは不可能だ。……質問はあるか?」
一通り説明を終えた瀬戸は、私達に尋ねた。
「敵をぶっ飛ばせば勝ち、ぶっ飛ばされれば負け……って事だろ?」
蒼がやる気の笑みを浮かべて言った。
「私、もっと頑張らないとな。ね、蛍」
「うん」
紗奈は小さくガッツポーズをした。
「じゃあ、そろそろやるか。二手に別れようと思うんだが良いか?俺と白川はあっちで、高梨と日鏡はここら辺で」
そう告げると瀬戸は紗奈を連れ、自主練習場の奥の方へ足を運んで行った。
「白川、高梨と一緒が良かったか?」
瀬戸は少し面白そうに、とぼとぼついて来る紗奈に尋ねた。
「え!?べ、別にそんなこと……。私、戦うって決めたから。瀬戸君、よろです!」
「おうよ。白川は幻だったよな?多分だが、大きいものとか、威圧感あるものとか出す時、凄い集中力とイメージ力がいると思うんだよな。だから、今日は集中力を高めてもらう」
「了解。でも、何でこの組み合わせ?私と蛍とか私と……あっ……」
紗奈は自分と蒼の組み合わせを口にしようとした事に気づき、思わず口を抑えた。
「っぶは!流石、日鏡の友達。飽きないよな~」
「だから、そうじゃなくて!私、怒ると怖いんですよ?」
「……それは、知ってます。えっと、この組み合わせだっけ?俺と白川は後衛向きの力なんだよ。それに比べあっちは前衛。この組み合わせで鍛えときたいだろ?」
「あぁ、なるほど……」
なかなか、考えてるんだ……と紗奈は瀬戸の顔を見て思う。
「日鏡ー、どうする?」
「あ、ごめん。ぼーっとしてた」
私は紗奈と瀬戸の方に背を向け言った。すると蒼は私に驚きの表情を向けてきた。
「日鏡、お前……熱でもあるのか?あのお前が謝るなんて……これは何か起こる!あー、やばい。身の危機を感じる」
「なっ!失礼な。私だって変わるわよ!」
「変わる……ね」
蒼は意味有りげに私の言葉を繰り返した。
「ほら、馬鹿な事してないでやるわよ!蒼の力って魔法書なんだっけ?」
「ああ。お前はなんだっけ?」
「氷針よ。前、見たじゃない」
「氷針?あれ、見たっけ?ごめん、忘れたわ。もっかい見せて」
はぁぁ。こいつは本当に。私はもう怒る気も起きなかった。
あれ?でも、私……力、もう使えるのかな?今日、使えなくなってからまだ発動させてないし……。でも、自分も守るんだもの、大丈夫よ。きっと。
「ふぅ……CONTRACT」
いつもの様にそう言葉を口にする。と、私の手の中には一本の氷針があった。
力が使える……!良かった。
私は心底安心した。これで、もう大丈夫だ。全部……全部……、大丈夫だ。




