非現実的は突然に
朝は嫌いだ。昨日の夜パソコンを前に動画をあさっていたせいか少し頭痛がする。目覚まし時計が鳴り響く部屋のベットで横たわっていた私の頭に学校という二文字が浮かぶ。
「そろそろ、起きなさい!」
下から私が起きるのを急かす声。未だに鳴り響く目覚まし時計を止め芋虫の様にゆっくりとベットから出た。体を動かしたら目が少し開いてきたがやはりまだ眠い。腰まで長い黒髪をとかす。前髪の一部がはねている。しゃーないか、と思い前髪をピンで止めそれを誤魔化す。学校の用意をゆっくりと終え私は自転車にまたがった。
「いってきまーす!」
こうして今日も代り映えしない1日が始まってしまった。
「蛍さん、いつも以上に元気無いっすねー。可愛いのにそんな仏頂面しちゃって~」
白川紗奈。私の後ろの席で女の子だ。短いポニーテールがよく似合う。勉強中は赤ブチのメガネでこれまたギャップ萌えというやつだろうか。まぁ、クラスでは大抵この子といる。
「こいつはどうせまた、何か楽しいことないかなー? とか考えてんだろ」
こいつは高梨蒼。結構イケメンらしく周りの女子が騒いでいたこともあったような気がする。M字の前髪に少しぼさっとした髪、スタイル抜群、運動神経も良い、だが余り良い性格では無いと思う。しかも紗奈の幼なじみだからか何かつるんでくる。きっと友達が居ないんだと思う。
「何よ、悪いの?」
蒼に図星された私は机に頭を伏せ答える。
「俺ら高一になったばっかだぜ? 青春を、この輝かしい時を楽しまなきゃ損だろ」
そんなこと言ったって……。私にとって日常なんて退屈でしかない。
「あ、じゃあそんな蛍にいい事を教えてあげよう! 学校の裏にさ古い神社があんの知ってる? その神社のシンボルともいえるでっかい木の前で願い事を言うと願いを叶えてくれるんだって! 放課後行こうよ」
紗奈は私の顔色を伺う。その横で蒼は会話に割り込んできた。
「紗奈……こいつはもう行く気だぞ。日鏡はどうしてそんなに、はぁぁ」
「はぁぁって何よ!?」
本当、何なのよ。こいつは。
そして放課後、私達は神社へ向かった。どの木がそれなのかはもう明らかだった。雰囲気というか佇まいがもう違うのだ。
「ねぇ、私が願っていいんだよね?」
「うん、もちろん!」
私は木の真ん中に立つと空を見上げ大きく息を吸った。ゆっくりと瞬きをし木に向かって二拍手。
「私達を異世界に連れて行って!」
私の声が周りに響く。
「……お前、私達ってもしかして俺らも入ってるんじや」
「でも、何も起きないねー。そりゃそうか」
何も起きないのかと少しショックを受けていると地面が揺れた。
「何、地震?」
私は異様な地面の揺れに思わず声を上げる。そして私は木に捕まり両眼をギュッと閉じた。
次に目を開いた時、そこは神社ではなく街だった。木はそのままあるがそれ以外はまるで異世界だった。ーーーそう、異世界。
「……マジですか」