椎名からの手紙
寮内の最上階には学食がありーーといってもバイキングだがーーそこで昨日の夕食と今日の朝食を各自でとった。
今日でこの学校へ来て五日目ぐらいになるだろうか? あれから毎日放課後は一時間四人で練習し、私は一人で夜中自主練習し続けた。
私の自主練習は誰も知らない、もちろん瀬戸も。
しかし、問題はそこではない。問題はセルフの椎名だ。あれから全然何もしてこなかったくせに、今朝私の下駄箱に日鏡様と書かれた封筒が入っていたのだ。裏にはしっかりと椎名と書かれていた。私が心当たりのある椎名はあいつしかいない。
「果たし状……?」
教室についた私は深刻な顔で呟くと、先についていた瀬戸がなんだ、それは? と顔を覗かせてくる。
「分かんない、入ってた」
「戦いの申し出かもな。こないだ日鏡が喧嘩売ったのが原因じゃないのか?」
「え、何、何?」
私達の会話を聞き紗奈が会話に入ってきた。
「果たし状」
私は紗奈の前にそれをひらひら持っていく。
「えー、中見てないんでしょ? 案外、ラブレターだったりしないんですか?」
「ラブレター!?」
マジか……。いや、それは無いだろう。いくらなんでも。
そう思いながら私は封筒を恐る恐る開けた。
ーー日鏡さんへ
日鏡さん、君は僕の女神だよ!
僕と付き合ってくれないかい?
僕は本気なんだ
僕は…………
ぐしゃっ。
「ひぃっ」
思わず握りつぶしてしまった。
「ほらー、やっぱりぃ」
私の横から手紙の文面を見ていた紗奈は少し面白そうに言った。
「日鏡を好きになるやつがいるのか……」
「失礼ね、しかも瀬戸にだけは言われたくないわよ」
「でも、日鏡向こうで結構モテてたよな? 顔だけはウケるらしくて」
「何? 聞いてたの?」
蒼がいきなり口を挟むので少し驚きながら後ろにいた蒼を振り返る。
「で、どうするんだ」
瀬戸は肝心の本題に話題を戻す。
「どうするって、どうもしないけど……どうすれば良いのよ? 私、嫌いってもう既に言ってるのよ?」
「それも、そうだよね〜」
紗奈が共感する。
「とりあえず、最後まで読んでみろよ」
瀬戸に言われ、私はぐしゃぐしゃの手紙をもう一度広げた。
僕は君に嫌われている。だから、返事を強要したりはしない。
ただ僕の気持ちを知っておいて欲しかっただけなんだ。
日鏡さん、瀬戸が嫌だったら僕の所に!
椎名
「良かったじゃん、返事要らないって」
「こいつ、良い奴なんじゃないか?」
紗奈の言った通り正直ほっとした。蒼はこないだの事を忘れているのだろうか? と思い私は蒼を睨む。
しかし蒼は頭の上にはてなマークを浮かべ、ちっとも気にしていない様子なのだ。
「まぁ、別に良いじゃないか。何もしないって言ってるんだろ?」
瀬戸はそう言うものの、私は何だか落ち着かなかった。