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プロローグ-2 去り行くモノと来るモノ

いろいろ正気の沙汰ではないようです。

 欧州の戦争による特需によって何とか破綻を免れているものの、大日本帝国の財政は日華事変特別軍事費によって危機的な状況にあった。

 昭和十六年のGNPが約九十二億ドル。一ドルが約四.三円であるから約三百九十三億円である。この年度の軍事費が約百二十五億円、国家予算の約七十五%である。昭和十二年の第二次上海事変以降の国家予算の七割以上が軍事費占めるような状況がいつまでも続けられるはずがない。

 しかも欧州の戦争による特需がいつまでも続くわけではない。第一次大戦のバブル景気とその後の不況が証明している。平均寿命が約五十歳の時代ではあるが、乳幼児死亡率が高い事もあって約三十年前の好景気とその後の不景気を覚えている者は少なくはない。

 日本政府は何としてでも早急に軍事費を削減し、歳入と歳出の均衡を取り戻す必要があった。よってハルノートを受諾した後の軍縮は非常に大規模ななものにならざるを得なかった。

 大和型三番艦、四番艦、装甲空母などマル4計画以後に計画されたほとんどの軍艦と艦艇の建造が中止された。

 本来ならば真っ先に除籍の対象となるはずの金剛型は、機関を交換した大規模な近代化改修したばかりということで難を逃れた。いかに旧式とはいえ三十ノット出せる高速戦艦は貴重である。

 建造中の軍艦では阿賀野型のみが建造続行された。軍縮論議が始まった当初は阿賀野型も当然のように建造中止が主張されたが、建造中の阿賀野型を解体して数年後にまた五千五百トン型の更新する艦を建造するのも愚行である。結局、阿賀野型はいずれ必ず必要になる艦だからということで建造が続行された。

 少なくとも敗戦後のように政府が戦没した商船の保有者に支払った保険金を税金として丸ごと没収するような尻に火がついた状況ではないのは戦争回避の恩恵であろう。

 それでも数年の内に日本海軍の戦艦は金剛型四隻と長門型二隻に大和型二隻、さらに数年の後には大和型二隻と新戦艦四隻の計六隻という状況になるはずだった。

 これらの戦艦のように惜しまれながら海軍から去っていく艦もあれば、祝福されて海軍から去っていく船もある。新田丸や八幡丸などの多数の貨客船や漁船が徴用を解かれ、無事に民間航路や漁場に復帰した。

 幸か不幸か空母への改装が始められていた超優秀船二隻は商船に再改装するわけにもいかず、改装空母となって混迷期の日本海軍を支える事になる。

 旧式戦艦の退役と新型航空母艦の就役により日本海軍は意図せずして空母部隊をその主力とするわけだが、この時点で航空母艦の価値を理解しているものは極めて少数だった。

 ちなみに大和型戦艦や翔鶴型航空母艦は日本海軍の栄光を体現した軍艦と呼ばれてはいるが、日本海軍はその維持費や改装費に確保に非常に苦しんだ。昭和三十年代から五十年代にかけての日本海軍の暗黒時代を造り出した主要な原因の一つと影では言われている。

 去り行く艦船は多いが来る艦船も少なくはない。

 マル4計画以降に建造された改装空母や護衛艦艇群は引き取らざるを得ない。

 飛鷹型航空母艦二隻を中心に阿賀野型軽巡洋艦四隻、香取型練習巡洋艦四隻、秋月型駆逐艦四隻、夕雲型駆逐艦六隻、呂三十五型潜水艦二隻、呂百型六隻、平島型敷設艇八隻、第十九号型掃海艇四隻、第十三号型駆潜艇十六隻など下手な小国の海軍より大規模な新型艦艇が昭和十七年以降に就役した。

 昭和十八年末の帝国議会に第一次軍備更新計画、通称新マル1計画がおそるおそる提出された。議会は反発したが造船会社には仕事を回す必要がある

 改大鯨型潜水母艦二隻、改明石型工作艦一隻、伊良湖型給糧艦一隻、筑紫型測量艦一隻、呂号潜水艦九隻、択捉型海防艦四隻、敷設艇四隻、掃海艇六隻、駆潜艇六隻というマル3計画やマル4計画に比べて実に常識的な計画だった。

戦前の平均寿命が50歳前後というのは驚きました。しかも乳幼児死亡率が約40%とか・・・。つまり10人中4人が乳児で死亡。残り6人が80歳まで生きると平均寿命が約48歳ですよね。


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