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第一話 眠り姫と少年

えー。作者の竜樹と申します。


これは、随分前に書いていた小説に加筆・修正を加えたもので

基本的にギャグの要素は皆無。戦闘は多めで進行していきます。

 ジリリリリ……。

 鉄と鉄が火花を散らしながら音をたてる。鼻につく油の匂い。鈍く光る屑鉄。それが私の世界。


 世界中から生徒が集まってくるシャリーア学園。私はそこの練金科の生徒。名前はリーベル・アエナ。


 私は大抵、シャリーア学園の一角にある専用の鍛冶場にこもっている。扉が開くのは一週間に一度あるかないかといったところだ。どうやら学園では錬金課の眠り姫なんて恥ずかしい名前で呼ばれているらしい。


 そんな、私の鍛冶場の扉だ。私以外が開くことは、この日以前にはなかった。


 だから、突然開かれた扉から入ってきた日の光に私は目を細めた時、内心は非常に驚いていた。


「うっわー。本当にこんなとこに人がいたんだ。あっ、俺はケイト・グラッドストン。よろしくな」

 これが、銅色の髪をした彼との最初の出会いだった。



「それで何の用?」


 余計なことに時間をとられるのは嫌だったけど、彼が持ってきた紙が問題だった。


 学園長の紹介状。


 私も学園の一応は一員である以上、無碍には出来ない。


「いやー。この間の演習で剣をぶっ壊しちまってさ。先生に相談したらここ教えてくれたんだよ」


「先生?」


 自分で言うのも何だけど私は学園の大部分の先生に疎まれてる。わざわざ彼のような生徒を来させるのは……。


「ああ。メルーブ先生だよ」


 やっぱり。


 メルーブ先生とは武芸科の先生だ。筋肉質な体をしてる。あと、私が打った剣を持ってる。


「先生がアンタから貰ったっていう剣を見せてもらったんだけど、あんな凄い剣は初めて見た」


「あれはあげたんじゃない。無理矢理、取られた」


 ……私の最高傑作だった。


「まぁ、とにかく見せてもらって、惚れ込んだんだ。なぁ。俺に剣を打ってくれないか?」


「分かった」


 即答した私を彼は驚いた顔して、見てくる。


「どうしたの?」


「いや。前頼みに行ったって奴からの話だと説得するの大変だと思ってたからさ」「私の研究は最強の武器をつくること。だから、武器をつくることは私にとってもメリットがある」


「けど、前に来た奴らは追い払ったんだろ」


「彼らは真面目じゃなかった」


「あー。でも、俺は真面目だって認めてくれるんだな」


「目を見たら分かる」


 前に来た人達は私を馬鹿にしにきただけ。

 それに、目の前の人は私の刀を認めてくれた。自分の作品を褒められて嬉しくない人はいない。


 準備しなくちゃ。私は横の瓦礫の中から紙とペンを引っ張り出す。


「じゃあ、わざわざ学園長に紹介状もらってこなくても良かったのか」


 彼はがっくりと肩を落とす。

 うん。ずっと使ってなかったけどペンはまだ使えそうだ。

「それは間違え。紹介状が無ければ話を聞こうとも思わなかった。それで属性は?」


「?」


「魔力の属性」


「ああ。それなら俺は無属性だ」


 驚きすぎて私は目を見開いてペンを落としてしまう。無属性は数千万人に一人しかいないと言われている珍しい属性だ。ほとんど伝説と言ってもいい。


「驚いたか?」


 イタズラに成功したように笑う彼。何となく気に食わないので


「……べつに」


 素っ気なく言ってペンを拾う。そして、紙に無属性だという事を書く。



「種別は?」


「片手剣だな。出来たら片刃がいいんだけど出来る?」


 私は頷くと書き加える。


「他には?」

 彼が首を横に振るのを確認してから私は立ち上がる。私は過去に創った武器が山になっているものをゴソゴソとひっくり返す。やがて目当てのものを見つけ引っ張り出す。その作業を数回続けると私の腕には抜き身の片手剣が何本か収まっていた。


「外」


 とだけ彼に告げて工房の外に出てから、一本づつ地面に刺す。


「ここで何したらいいだ?」


 追いついてきた彼に一番端の剣を手渡す。


「振って」


 彼は戸惑いながら剣を振る。


 綺麗な太刀筋。けど、少し体制が崩れた。重さと長さが彼にあってない証拠。


「次」


「おう」


 次の剣を手渡す。


 そうして全ての剣を試して終わった頃には日が暮れていた。


 うん。大体分かった。


 いろんな重さ長さの剣の彼の太刀筋から、彼に最適と思われたデータを先程の紙に書き加える


「じゃあ、3日したら来て」


「あっ。それなんだけどさ。明日も来ていいか?」


 明日?


「どうして?」


「いやさ。鍛冶屋の仕事するところ見たことないからさ」


「学園には私以外にも練金科はいる」


 他の練金科の生徒は私みたいに部屋に籠もったりはしないで普通に教室で授業を受けている。記憶に間違えがなかったら二年の頃に練金科は武芸科の武器をつくるはず。


「あいつらは練金科の生徒なだけだ。まだ職人じゃないだろ」


「私だって職人じゃない」


「そんな事はないさ」

 そう言って彼はさっきまで自分が振っていた剣達を指差す。


「あいつらにはどれも魂を感じた。生きてる剣を見たのは本当に久しぶりだったよ」


 生きてる剣。


「その表現は。いいえ、何でもない。

 それと、邪魔をしないなら見にきてもいい。

 ……退屈だと思うけど」


「ああ。ありがとう」


 彼は大きな笑顔を浮かべた。


 本当に変な人。彼が去っていくの見送ってそんな事を思った。


 そういえば、彼の名前ってなんだったかな?


 私は久しぶりに人の名前を覚えようと思った。

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