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8 アイシテル

 あれ、僕は今

 何してたんだっけ



 目の前に紅く染まった髪が在るのに気づき

 ただそうとだけ、思った



 僕に様々な言葉をくれた唇はカサカサに乾き


 絶えず僕を映していた宝石のような瞳は濁り


 僕を捕らえようと大きく伸ばしていた大きく優しい手は力なく横たわって傷だらけ



 紅い、紅い世界が僕を襲って飲み込まれそうで

 必死に立っていた



 視線をずらすと

 沢山の屍


 何処を見渡しても死体だらけ



 急に彼がその中の1つとなって埋もれてしまいそうだと思って

 所々欠落している腕を掴んで引っ張った


 肩が少しだけ宙に浮いて

 だけどガクリと首が落ちる



 だめだよ、そんな体勢じゃあ紅い世界に溺れてしまうよ


 もっと引っ張る

 無理矢理起こす



 それから目を合わせた



 おかしいな、貴方焦点が合っていないよ


 寝ているの

 疲れているの


 僕がここにいるんだよ、起きなよ



 思いきり、肩を揺さぶる


 グラングランと首が

 為すがままに踊る



 ねえ、なんで


 何で僕に好きだって言わないの



 いつも耳にタコが出来るくらい言うのに



 何で僕に好きかって聞かないの



 いつもは望んでないのに耳元に来て聞く癖に




 ずっとずっと

 ふわふわしてて分からなかった、

 だけど気づいたんだ



 僕は貴方が




 ……好きなんだ




 だから

 聞いてよ


 今こそ迷いなく答えるから




 僕の叫びはただ空に消えるだけ


 どんなに強く言っても

 しまいには強く殴っても目に光が宿らない


 あれ、これは寝ているんじゃないのか



 ならば、


 何なのだろう




 オカシイ話だ

 周りに死体がいっぱい転がっているのに


 貴方だけは寝ているようにしか見えないんだ



 ねえ、愛しているよ


 今ならいくらでも囁くよ



 だから聞いてよ



 アイシテル


 アイシテル


 アイシテル……








 あぁ

 この世は酷く優しく残酷だ




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