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三題噺もどき5

中休み

作者: 狐彪
掲載日:2026/10/31

三題噺もどき―きゅうひゃくごじゅうなな。

 




「「ありがとうございましたー」」

 その挨拶と共に、教室内は一気に騒がしくなる。

 ガタガタと机や椅子の音がするのはもちろんなんだけど。

 ざわざわと人の話し声が堰を切ったようにあふれだす。

「……」

 2時間目の授業が終わり、ほんの少し長めの休み時間に入る。

 何人かは座り直すことなく教室から出て行き、各々左に右にと向かっていく。

 左側にはお手洗い、右側には自販機がある。

「……」

 私もお手洗いに行こうと思ったが、休み時間に入ってすぐはどうしても混む。

 なぜか、女子というのはトイレ一つにかなり時間がかかるので、このタイミングで行くと無駄な時間を食うことになる。

 別にいいのだけど、周りの声が気になって仕方ないので変に疲れてしまう。

 後普通に死にたくなる。

「……」

 同じ性別で、同じお手洗いを使うけれど。

 なーにをそんなに時間をかけているのか全く分からない。

 そんなに毎回時間がかかるものなんだろうか……化粧をしているわけでもあるまいし。まぁ、一部の女子はしているみたいだけど。

「……」

 だからまぁ、行くとしたらもう少し時間をおいてからでいいだろう。

 次の授業の準備をして、少し小腹を満たしてから、のんびりいくとしよう。

 机の上を片付けながらそう決め、椅子に座り直す。

「……」

 次の教科は国語だ。

 教科書類は基本的に机の引き出しの中に入っている。

 ロッカーにも入れているけれど、それは副教科と呼ばれるものだけが置くことを許可されている。基本的に置き勉はしてはいけないらしい。普通にしているけれど。

「……」

 教科書を机の中から取り出し、ノートも出しておく。

 そろそろこのノートも買い足しておかないとなくなってきた。

 今度百均にでも連れて行ってもらおう。

「……」

 ルーズリーフを使うという手もあるのだけど、アレはアレで保存に困るので授業では浸かっていない。基本的に各教科でノートを作っている。

 提出する時だってあるし、そっちの方が便利だ。

「……」

 ちらりと時計を見ると、そろそろ足を向けてもいい頃合いになっていた。

 その前に……。

 机の横にかけてある鞄のなかから、チョコレートを取り出す。

「……」

 個包装されている奴で、ちょっと前にお試しで買ってみたものだ。

 基本的には飴をよく舐めているのだけど、今日はチョコレートの気分だ。

 中に、オレンジが練り込まれていて、ほんのりその香りがしている。

「……」

 ん―あの子が好きかなと思って買ってみたが、私はあまり得意ではないかもしれない。

 まぁお菓子に柑橘類が入っているのは昔から苦手なので、そうなんだけど。

 チョコレートならいけるかなと思ったし、そんなに入っていなさそうなので行けるかなと思ったが……残念。

「……」

 でもまぁ、食べられないほどでもないし。

 あの子は好きそうな味だから、昼休みにでもあげてみよう。

 反応が悪かったら、家に置いておけば母が食べる。

「……」

 口の中でそれを溶かしつつ、味わいつつ。

 椅子から立ち上がり、廊下へと足を向ける。

 んーなんというか、思ったよりオレンジの味が凄

「あ、――、」

「ん、」

 教室の扉を抜け、廊下へ足を踏み出そうとした瞬間。

 聞き慣れた、聞き馴染のある、安心感のある、声が聞こえた。

 私を呼び捨てにするのは、ここでは1人しかいない。

「……どしたん」

 口の中にあったチョコレートを一気に飲み込んでしまった。

 まだ若干残っている感じがして少し気持ちが悪いが、話すには支障はない。

 あの子の教室の方から来たらしく、これからお手洗いだろうか……と思ったが、手には筆箱を持っていた。

「えんぴつかしてー」

「忘れたんだw」

 次は美術の授業らしい。

 先日私が受けたデッサンの授業のためだろう。

 えんぴつがないと話にならない。教師は貸してはくれないので。

「ちょいまち」

「ありがとー」

 踵を返し、自分の机に戻る。

 筆箱の中からキャップを付けたえんぴつを取り出し、ついでにチョコレートも持っていく。

 鉛筆削り……は美術室にあるからいいか。

「ほい、ついでにお菓子もどーぞ」

「え、これ気になってたやつ~」

 そうだと思って……なんてことは言わないが。

 内心、ちょっと嬉しくなってしまうのは仕方ないと思う。

「どっかいくの」

「トイレ」

「じゃ、途中までいっしょ~」

「途中ってすぐそこでしょw」

 あと2時間。

 授業が終われば昼休みだ。











 お題:チョコレート・オレンジ・えんぴつ

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