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ティータイム・ストーリー(聖羅編)第2話:高さこそが正義、そして監視ですわ!

「……ふう。少し、血圧が上がってしまいましたわね」


 嵐のようなスパチャタイムを終えた聖羅は、落ち着きを取り戻すためにバルコニーへと出た。夜の六本木は、宝石を散りばめたような輝きを放っている。だが、彼女の視線が向かうのは、東京タワーでもスカイツリーでもない。

 すぐ近くに建つ、高級ではあるが自分たちのタワーに比べれば「低い」マンション——『スカイクレスト六本木』だ。


「あの方……神楽凪様」聖羅は、夜風に吹かれながら、その名を小さく呟いた。 そこには、先ほどの狂信的な『カネゴン』の面影はなかった。北条院聖羅にとって、神楽凪はただのモブではない。彼女の命を救い、そして北条院家に三十億という莫大な負債——正しくは『命の代金』という名の義理を背負わせた、最大の恩人なのだ。


「三十億。……北条院の誇りにかけて、必ずやお返ししなくてはなりませんわ」


 彼女はバルコニーの隅に設置された、特注の『魔導望遠鏡』へと歩み寄った。天体観測用ではなく、地上にある「特定の一点」を詳細に観測するために、軍用技術を転用して作らせた一品だ。


「……恩人であるあの方が、あのような低い場所で不自由な生活をしていないか。それを監視……いえ、見守るのは、北条院の正当な義務ですわ」


 彼女がレンズを覗き込む。

 しかし、深淵ダンジョンから滲み出す魔力を源とするイゾルデの認識阻害は、観測者の先入観を巧みに増幅させる性質を持つ。聖羅の「凪は背景のような男だ」という思い込みと、「イゾルデたんが至高だ」という強烈な推しフィルターが、その作用を最大限に引き出していた。

 聖羅の目には、凪の姿は常に「輪郭のぼやけた、背景のような男」として映る。そして、その周囲にある強大な魔力イゾルデは、彼女の推しフィルターが暴走した結果として、奇妙な抽象画へと変貌していた。


「……お隣さんとして、挨拶に行くのは当然ですわね。でも、あの方のあの冴えないお顔を直接拝むのは、少しだけ……いえ、かなり勇気がいりますわ。莉子、結衣、あの方への『返済計画』は順調かしら?」


「ええ。聖羅様が毎日投げているスパチャの総額を引けば、あと数年で完済できる計算ですわよ?」莉子が背後から皮肉を飛ばす。


「それは別問題ですわ! あれは女神への供物! 恩返しとは、もっと高潔で、物理的なものであるべきですわ! ……例えば、あの方が今すぐこのタワーに住み替えられるような、そんな圧倒的な施しを……!」


 聖羅の独りよがりな使命感は、夜景よりも明るく燃え上がっていた。


★ここまで読んでいただき、ありがとうございます。★

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