表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アストロクイーン ―月駆ける乙女たち―  作者: まじとも詩
第二章 アストロクイーン選抜戦
36/47

第2話(2)開会式そして一回戦

西暦2382年。

この時代、地球と月、そして宇宙コロニーを結ぶ交易航路は発達し、

宇宙は冒険の場であると同時に、

誰もが暮らす「生活圏」となっていた。


これは、月面都市を舞台に繰り広げられる、

少し先の未来を夢見るファンタジー。


「ただいまより、第4回アストロクイーン選抜戦、本戦を開会いたします」

   月面都市ルナロンドの特設会場は大歓声に包まれ、

   立体スクリーンには大きく選手ゲートが映し出される。

  「それでは、本戦出場者の入場です」


最初は宇宙軍推薦枠の7名――

   7人目が入場したところで一瞬、空気が固まる。

   そして大歓声

   観客全てが、最後を悠然と歩む王者の風格に飲まれたのだ。

【一二星座アストロノイド・獅子座】レオΘ0

   オレンジ色になびく髪はまさに獅子、

   鋭い眼光は、敵対者を畏怖させ、同士を勇気づけると言われている。

   まさに絶対王者の存在、今回の大本命である。


続いて、研究所推薦枠の7名――

   先頭はヴァルゴΔ4。

   出場者のスタッフ席に座っていたショーンとシャッテは、

   あのとき救出したヴァルゴλ8にそっくり、

   彼女が入れ替わった新型だ、と直感した。

シャッテは少し悲しくなったが、

  「ルキがウチに来てくれたのは、彼女のおかげだね」

   ショーンのその囁きにシャッテは救われ、

   サッとほっぺにキスした。


そして、いよいよ民間アストロノイドの6人。

   先頭は1位通過の

   【一騎当千の朧牡丹】キャンサーγ2

   続いて2位、

   【スパイレディ】コネリーA7

   地元ルナロンド所属とあって、ひと際大きな声援が飛ぶ。


そして第3位と第4位

   【天衣無縫の万能プレミア】アテナN3

   【リンクマスター】ヴァルキリーC9

   一緒に手を繋いで歩いて来る

  「アテ姉……たくさん人、怖い」

  「大丈夫ですよ、シャッテさんとショーンと私がついてます」

  「うん……」


こうして第4回アストロクイーン選抜戦本戦は、大声援に包まれ開幕した。


◇ ◇ ◇


開会式の熱狂が冷めやらぬまま、

   会場は一回戦の競技空間へと切り替わった。

   透明な防護フィールドに覆われた巨大空間に、

   無数の観客席が浮かび上がる。

   ドーム内に流れ込む光が収束し、中央の競技ステージを照らした。


《――さあ始まりました!アストロクイーン選抜戦、本戦一回戦!》

   実況の声が、地球、月、そして全ての宇宙コロニーへ配信される。


《本戦出場、総勢20名!

   宇宙軍・研究所そして民間予選、

   選ばれし者たちがこのルナロンドに集いました!》

   一人ずつ、選手名と所属組織がホログラムで映し出される。

   歓声がひときわ大きくなる。


《それでは、本戦一回戦の競技を発表します……》

   競技内容はここまでずっと非公開にしてあった。

   初見でどれだけ好成績を残せるのか、が問われる。

   照明が落ち、巨大スクリーンに競技名が浮かび上がった。


《競技名:ブロックピラミッド》

《ルールは1対1!しかし勝ち抜けではありません!

   完成時間を競うスピード点と審査員による芸術点、

   両方のポイントを合計して、

   上位8名が二回戦の準々決勝に進みます》


ステージ中央に、白い正方形ブロックが次々と並べられていく。

《使用ブロックは一辺1メートル、総数120個!これを――》

   スクリーンに立体図が映る。

《8×8、6×6、4×4、2×2!

   ピラミッド状に積み上げ、頂点には直径2メートルの球体を設置!》


観客席がざわめいた。

《なおブロックは非常に重量があります!

   ドローン1機につき1個しか運べない重さ!

   しかも、ラストの球体は4機を使わなければ持ち上がりません!》

   ――ここで、実力差が露骨に出る。


◇ ◇ ◇

■一組目■

ヴァルゴΔ4(研究所) vs コネリーA7(民間)

  《さあ一組目!研究所対民間、注目のカード!

  【一二星座アストロノイド】ヴァルゴΔ4、早くも登場です!》

  《一方のコネリーA7は民間アストロノイド、

   地元の声援を一身に受けております!大声援だ!》


《さあ、競技スタート!!》

   ヴァルゴは五機のドローンが一斉に起動。

   コネリーは4機。

  《普通のアストロノイドは2~3機が限界ですし、

   民間でこれは!さすがは予選突破の実力です!》

   ブロックが規則正しく運ばれていく。

《ヴァルゴ選手、速い、安定しています!無駄がない!》

積み上げは堅実。

   だが球体設置の段階で、4機で持ち上げ、1機が補助に回る。

  《ヴァルゴ機……少し、揺れましたか》

   球体は一度、わずかに弾み、沈む。

  《設置成功!タイムと芸術点、どちらも高得点が期待されます!》


◇ ◇ ◇

■五組目■

キャンサーγ2(朧牡丹・民間) vs サキュロットη1(宇宙軍)

  《続いて五組目!民間予選1位通過、キャンサーγ2!

   対するは宇宙軍のエリート、サキュロットη1だ!》

  《ここまでヴァルゴ選手が、

   タイム・芸術点共に首位をキープしています!

   さあ、競技スタート!!》


朧牡丹は無言で4機のドローンを使い、淡々と積み上げる。

  《スピードが速い!》

   球体も4機で一気に持ち上げる。

  《これは――力任せだ!》

   球体はやや強く接地し、微細な振動が残った。

  《完成!ここまでの最速タイム出ました!》

   だが牡丹は芸術点が伸びず、トップはそのままヴァルゴであった。

  《ここで民間のキャンサー朧牡丹、2位に食い込んで来たぞ!》

   牡丹は芸術点を気にしていない様子だった。


◇ ◇ ◇

■七組目■

レオΘ0 vs フォーミF1(民間)

   会場の空気が変わる。

  《来ました、レオΘ0!》

   8機のドローンが一斉に展開。

   その動きは、まるで指揮された群舞。

  《速い!そして美しい!》

   球体を4機で持ち上げ、残る4機が四方向から微調整。

  《――吸い付くように、乗った!》

  《完成!圧倒的です!》

   観客席がどよめく。

   この時点で、レオがトップに躍り出た。


◇ ◇ ◇

■十組目■

アテナN3 vs ヴァルキリーC9

  《さあ、最終組!注目のカード!》

   アテナN3とヴァルキリーC9が並んで立つ。

   大きな歓声と視線に戸惑っているヴァルキリー、とても不安そうだ。

  「ルキちゃーん!」シャッテが誰よりも大きな声で応援を送っている。

   シャッテの方をチラリと見て、ルキは落ち着いたようだ。


《それでは最終組、スタート!》

アテナ序盤のブロック積み――

   アテナは6機のドローンを展開。構築はレオに迫る速度。

   ドローン操作が初めてのルキは1機動かしてみる。

   ぎこちない。

   アテナは既に半分以上を積み上げている。レオに次ぐスピードだ。


◇ ◇ ◇

ルキ序盤のブロック積み――

  「ルキちゃん、まず1機をしっかり操作~!」

   シャッテの応援がルキに響く。

  「ん、理解した」

   最初のブロックをゆっくりと運んで置くと、

   ルキは全てを理解した。

   ヴゥン、ヴゥン、ヴゥン、ヴゥン、

           ヴゥン、ヴゥン、ヴゥン、ヴゥン、

   1機が出来れば8機も出来る。

   ルキは8機のドローンを起動した。


(全部を、一度に、バラバラに、動かすことは簡単、なの)

   8機が等間隔で縦に並ぶ、

   ドローンが次のドローンにブロックを手渡す。

   一個ずつ運ぶより圧倒的に速い。

   ブロックはどんどん積み上がる。

   レオを凌駕する圧倒的な速度。

   どよめく観客席、実況もしばし言葉を失っていたが、

《ヴァルキリー選手、8機操作はレオ選手と同数!

   民間で宇宙軍トップと同じ!凄いスペックです!

   しかも、これは、まるでバケツリレーだぁ!

   凄い速度で積み上がっていきます!》

どの選手とも異なる運び方で、圧倒的なスピードと精度。

観客席は大興奮だ。


◇ ◇ ◇

アテナ最後の球体積み――

《さあ、球体設置――》

   アテナは4機で球体を持ち上げると、

   残る2機はピラミッドの上空へ。

《あれは……?》

   解説席が首をかしげる。

  《俯瞰位置からの観測?

   ……古典的な三角測量法のようですが?》


ドローンが静止し、空間を測る。

  「ピラミッド設置面、空間座標取得。

   球体最下点、計算完了――行きます」

   次の瞬間。

   球体は、一切の揺れもなく

   音も立てず、ピラミッド頂点に収まった。

《――完璧だ!!》

《スピード2位!しかし芸術点は――満点!》

 観客席が爆発する。

《合計39点!レオΘ0と同点!

   規定により同点は先番が上位となりますので

   アテナN3は2位!》


◇ ◇ ◇

ルキも残りは球体のみ。

  「8機シンクロ……みんな頑張れ」

   8機がふぃーんと唸る

   重い球体でも8機で持ち上げると微調整が取り易い。

  《ヴァルキリーC9、健闘しています!》

   ほとんどブレずに球体設置。

   ――成功。

  《成功です!先ほどのバケツリレーで芸術点は高評価!》

   会場はさらに湧いた。


◇ ◇ ◇


結果発表

決勝進出8名が表示される。

1位 レオΘ0(宇宙軍)

2位 アテナN3(民間)

3位 ヴァルゴΔ4(研究所)

4位 キャンサーγ2(朧牡丹・民間)

5位 ヴァルキリーC9(民間)

6位 シュプリンガーν6(宇宙軍)

7位 センチュリオンβ1(宇宙軍)

8位 クロフトε7(研究所)



《――なんという結果でしょう!》

   解説席では宇宙軍、研究所の重鎮たちが、

   それぞれの思いをぶつけていた。


「最終組、民間の彼女達は、あの場で考え、決めて、実行した。

 ぶっつけ本番でだ」

 ――宇宙軍少将 ユル・ブリンは、

   アストロノイドとは思えない、まるで自我を持っているようだと驚く。


「あれは単に、過去の経験学習、民間業務の応用に過ぎません」

 ――研究所所長 ロバート・ボーンは、

   ですが、これこそが本大会から民間を参加させるメリット。

   優秀な研究アストロノイドなら、

   あれくらい直ぐにトレースして応用してくれるでしょう。

   民間の豊富な経験値の濃いエッセンスを取り込ませる、

   上層部の思惑が少し垣間見えた。


二回戦、準々決勝進出者は

   宇宙軍枠3人、研究所枠2人、民間枠3人

   予想を覆す大番狂わせとなる。


賭けブックマーク屋たちの悲鳴が、都市に響いた。

   スクリーンに映る三人。

   アテナN3。

   ヴァルキリーC9。

   そして――キャンサーγ2・朧牡丹。


本戦は、

確実に“波乱”へと舵を切った。

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ