表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/31

第1話(3)

日付が変わり、16才になったショーンに二通のメッセージが届く。

第一のメッセージは【送信元:市民局】

第二のメッセージは【送信元:アレックス・マクスヴェイン(予約送信)】

ショーンの亡くなったお祖父ちゃんからだった。

第一のメッセージ

────────────────

■市民ステータス更新通知

ショーン・ヴェイン 様

本日、午前0時をもって、あなたの市民IDにおける

【未成年】区分を【民間成人市民】へ切り替えました。


※自治権限レベル1 に昇格

ご当主アレックス・マクスヴェイン氏から

申請/中断中の、”当主変更手続き”を再開し受理致しました。


あなたは家名を継ぎ、

これよりご当主、”ショーン・マスクヴェイン”として

全ての遺産と権利を引き継いだことを、ここに証明致します。

────────────────


「……本当に成人……したんだ」

 言葉がこぼれた。

 アテナは胸に手を当てて喜びを溢れさせる。

「おめでとうございます……!」

 その声は涙を含み、誇らしさと愛しさが混ざっていた。

 そして、第二のメッセージが自動的に開かれる。

 それは、”ビデオレター”だった。

 ────────────────

■予約遺言メッセージ

 送り主:アレックス・マクスヴェイン

 再生日時:ショーンが成人した直後

 ────────────────

 画面に、

 懐かしい祖父の姿が映った。

 あの優しい笑顔。

 でも強い意思が宿った静かな瞳。


『ショーン、成人おめでとう。』

 一言目を聞いた瞬間、僕の喉が詰まり、呼吸が浅くなる。


『このメッセージが届いている頃、わしはもういないだろう。

 寂しい思いをさせた。すまん』

 その言葉だけで涙腺が一気に緩む。


『わしは若い頃から宇宙商人として身を立て、

 宇宙探検者ギルドの第一期として活躍した……

 火星の地下に大迷宮を発見したときなんか、

 みんなで大騒ぎしたもんじゃ。

 楽しい思い出じゃのう』


それ知ってるよ――

 ショーンは何回も聞かされた武勇伝を想い返し、

 少し懐かしさが蘇った。


『でもなぁ、ショーン……

 わしは幼いお前とアテナと、

 3人でゆったりのんびり旅した頃が、

 実は最高に楽しい想い出なんじゃよ』


 僕もだよ、お祖父ちゃん!――

 ビデオレターに向かって、

 思わず心から感謝するショーンを、

 アテナは聖母のような眼差しで優しく見つめ、

 そっと背中から抱きしめた。


『お前が子どもの頃から、

 ワシはずっと言っていただろう。

 “強く生きろ”と。

 だがそれは、ただ強くなれという意味じゃない。』


『強くなる方法を、自分で選べる大人になれ

 ――そういう意味だ』

 祖父の声は穏やかだった。

 温かくて、胸の奥深くに染み込む。


『ショーン、お前は賢くて優しい。

 きっと自分らしい方法を見つけて強くなる。

 だが、その力は……

 誰かを守るために使って欲しい。

 それがマクスヴェインの誇りだ』


 映像が一瞬揺れる


 祖父は微笑んだ。

『アテナを頼れ。あれはお前だけのために生まれた』

『ずっとお前と共にある……大切な家族だ』

 アテナが震え、ショーンの手をぎゅっと握る。


『最後に――

 今日から、お前は正式にドレッドレッダー号の船長だ。

 遺産相続の手続きを済ませなさい。

 ここに表示される”相続承諾書”へサインを』


『ショーン。誕生日おめでとう。

 大人になったお前を、わしは誇りに思う』

 ────────────────


映像はそこで終わった。

 誰も喋らなかった。

 船の駆動音だけがわずかに響く。


アテナがぽつりと呟いた。

「……おじい様……」

 その声は、まるで本当の肉親を送った孫娘のように震えていた。

 ショーンはアテナの手を包み、静かに言った。

「サイン、するよ」

 ショーンは指でしっかり署名した。

 

◇ ◇ ◇

 

数秒の後、ドレッドレッダー号の内部照明が一斉に明るくなる

  ――ゴウン……低い起動音がいつもより大きく響く。

    中枢AIから新たなメッセージ。

  ――船長権限をショーン・マクスヴェインに変更しました

  ――【アストロノイド】アテナの主従リンクを再設定しました


「……再設定?」

 アテナが一歩、ショーンに近づき

 ――まるで祈りを捧げるように、膝をついた。


「……だんなさま」

 その呼び方に、ショーンの胸の奥が熱くなる。

 彼女の瞳が、深い緑の光を宿して揺れている。

「今日この時より……アテナは正式に、だんなさまにお仕えいたします」

 ショーンは思わず手を伸ばし、彼女の頬に触れた。

「アテナ。そんなに畏まらなくていいよ。今まで通りで」


「……はい。それではお仕事の時は“だんなさま”で、

 プライベートの時は……」

 アテナが身体を寄せてくる。

 甘い、くすぐったい距離。

「これからも“おにいちゃん”と呼ばせてくださいね……♪」


胸に強い鼓動が広がった。

「もちろんだよ」

「……嬉しい……」

 アテナの瞳が潤んでいる。

 そのままショーンの肩にコトンと頭を預けた。

「おにいちゃん……今夜は、その……

 添い寝……よろしいでしょうか……?」

 その声は、震えるほど甘くて優しい。


ショーンは小さく笑って、彼女の手を取った。

「うん。一緒に寝よう」

「……! はいっ……!」

 アテナは嬉しさを隠せず、獣耳をぴくぴく揺らしている。

 メイドだけど、妹みたいで、恋人みたいで、大切な家族だ。

「おにいちゃん……お誕生日おめでとう……」

 ショーンは彼女の頭を撫で、目を閉じた。

「ありがとう、アテナ。これからも頼りにしてるよ」

「はい……ずっと、おそばにいます……」


――こうして、ショーンの成人の日は

  アテナに暖かく祝福され幕を閉じた。


◇ ◇ ◇

◆宇宙探索者ギルド・ルナトキオ支部◆


翌朝――

ショーンは、アテナの癒しに満ちた時間のおかげで、

 驚くほどすっきりと目を覚ました。

 身体に残る疲労はなく、むしろ胸の奥が静かに温かい。


ベッドルームを出ると、

 すでにダイニングには朝食の香りが広がっていた。

 テーブルの上には、こんがり焼けたトースト、

 ハムエッグ、湯気を立てるポタージュスープ、

 そして野菜ジュース。

 いつもの定番メニュー


その真ん中に、今日はひときわ目を引く一皿が添えられている。

「こちら、アテナ特製でございます♪」

 プレーンオムレツの表面に、

 赤いケチャップで描かれた小さなハート。

 見た目は可愛らしいが、

 卵の厚みと焼き加減からして、

 確実に、“ガツンと来る”、スタミナ仕様だ。

「気合い、入ってるね……」

「はい! 本日は大切な一日ですから」

 そう言って胸を張るアテナに、

 ショーンは苦笑しつつも完食した。


食後、身支度を整えながら、

 ショーンは、昨日から胸の奥に

 引っかかっていた件について切り出す。

「アテナ。例の件なんだけど……対応、お願いできる?」

 一瞬も迷わず、彼女は頷いた。

「承知しました。大至急、調整に入りますね」


数分後。

再び現れたアテナは、どこか満足げな表情をしている。

「かなりピーキーな設定にはなりましたが

 ……だんなさまでしたら、問題なく使いこなせます。

 保証いたします」

「……そこまで言われると、逆に怖いけど」

「大丈夫です♪」


そうして出発の時間。

「いってらっしゃいませ! どうか、お気をつけて」

 朝から元気いっぱいの声に背中を押され、

 ショーンは船を後にした。

 目的地は、中央街にそびえる【宇宙探索者ギルド・ルナトキオ支部】

 路地の角を曲がり、ショーンの姿が見えなくなるまで、

 アテナは見送りをやめなかった。

「……だんなさま。ご武運を」

 小さく呟いたその声は、まるで祈りのように優しかった。


だが次の瞬間、

 アテナの表情がきゅっと引き締まる。

「さっそく準備しないと……ですね」

 既にその目つきは“ほんわか妹モード”ではない。

 すると、

 何かの光がアテナの身体を一瞬だけ包み、

 その姿がすうーっと大きく伸びた

 ――まるで、丸まって力を溜めていた体が大きく伸びるように。


◇ ◇ ◇


【宇宙探索者ギルド・ルナトキオ支部】は巨大で、

 中央街の中心にどっしりと構えている。

 威圧感すらあるその建物を前に、

 ショーンは一度だけ深呼吸した。


自動ドアを抜けるとすぐ、

〖案内〗の札を胸につけた若い男が声をかけてきた。

「キミキミ! ここは宇宙探索者ギルドだが、何か用かね?」

 鋭い視線が、値踏みするようにショーンを上から下まで走る。

(……久しぶりに来たけど、なんか雰囲気変わった?

 客商売なんだし、最初からそんな圧出さなくても……)

「宇宙探索者の新規登録に来ました」

 そう一言告げた瞬間、男の表情が一変した。

「おお!

 それは失礼しました!

 どうぞどうぞ、奥の受付へ!」

 猫なで声の急転換に、

 ショーンは一瞬だけ戸惑いながらも奥へ進む。


奥の受付エリアには、昔と変わらない空気があった。

 受付の女性が、柔らかな笑顔で迎えてくれる。

「新規登録ですね。では、市民IDをご提示ください」

 年齢、性別、市民コード。

 健康状態、犯罪歴の有無。

 書類審査は驚くほどスムーズに進んだ。


「はい、書類審査は問題ございません。

 続いて宇宙船および

 アストロノイドの登録確認を行いますので、

 船の認証キーをご提示ください」

 ショーンはドレッドレッダー号の認証キーを提示した。


「――お待たせいたしました。

【宇宙探索者】新規登録に問題ございません」

 続いて、ギルド規約の説明が始まる。

  ギルドIDの発行。

  ランク制度と依頼の受注・完了報告。

  達成ポイントと月末集計、ランキング。

  ID紛失時の自己責任。

  淡々と、しかし要点は明確だった。


「何かご質問はございますか?」

 ショーンは、シティ内で宇宙船を移動させる方法について尋ねる。

「シティ交通局から市内航行許可証を取得すれば問題ありませんよ」

「航行速度・高度、停泊スペースの確保は

 航行ルールを守って下さい」

「目的のない周回航行、無届け作業は禁止」

「火器使用は原則禁止。

 ただし、生命の危険がある場合の正当防衛は、

 事後報告により認められます」

(よし・・・)

 手順を確認できたショーンは、分かりました、と頷いた。


「では、最後に初心者講習を受講していただきます」


子供の頃、面白がって何度も聞いた内容だ。

 それでも義務は義務。

 ショーンは素直に受講室へ向かった。



======== 次回更新へつづく ========

 


この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません


【アテナの特殊スキルについて①】

本編をお読み頂くと、『何で次の日スッキリしてるの?』

という疑問が湧きますよね?

これは小説の中の設定、

生活支援型ヒューマノイド、メイドアテナのコモンスキルによるもの

と、お考え頂けると大変有難いです。

スキル名:ナイトブレス–スリープメロウ(NightBreath–SleepMellow)

   個人専用・夜間/静音ケアモジュール(休息目的)

   指先からパルスマッサージで(頭・首・肩・背中など)

   緊張を解き、疲労・精神ダメージの回復をサポートする。

   更に、対象に密着、リラクゼーション効果のある

   アロマを含んだ吐息を近距離で放出、

   優しいメロディの囁き・歌で睡眠導入

    運用例:膝枕、ソファでの密着座り、ベッドでの添い寝など

    効果: 眠りの質を大きく向上させ、翌日の集中・気力を最適化させる


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ