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第4話(5)

西暦2381年。

この時代、地球と月、そして宇宙コロニーを結ぶ交易航路は発達し、

宇宙は冒険の場であると同時に、

誰もが暮らす「生活圏」となっていた。


ルナトキオに着いたシャッテは、のんびり観光気分でショーンを探す。

同じくその頃、ハングマン勢力の弱体化をやり遂げたジェッドも

ルナトキオに到着する。

シャッテは追い回され、

ルナトキオのリサイクルセンターへ逃げ込んだ。


これは、月面都市を舞台に繰り広げられる、

少し先の未来を夢見るファンタジー。

◆地下エリアの逃走◆

シャッテは謎の集団から中央リサイクルセンターの地下を逃げる。

   最下層を目指して第二層へと降りて来た。

   静かに、慎重に降りて来たはずなのに――

排気熱で揺らぐ通路を、シャッテは全力疾走していた。

  「はぁっ……はぁっ……!

   なんで……ドローンに追われてるのよ……っ!」


中型ドローンがシャッテを探して飛び回っている。

  そのアームは大きく、人間を挟んでそのまま運べるほど

  ドローンが人に危害を加えるなんて、怖すぎる

  シャッテは訳が分からなくなっていたのだろう。

 【メンテナンス中・立入禁止】のブロックへ踏み込んでしまった。


行き止まりの廃棄物置き場! すぐ引き返さないと!

焦るシャッテ。

だがそこで、妙なものを見つける。

   ずんぐりむっくり、大きくて、場違いな――

  「……なに、これ」


新品の着ぐるみ型”救命ポッド”が、廃棄物の横に転がっていた。

   メインフレーム: 救命ポッド 球形・直径150cm

   サブフレーム:  標準仕様-足踏み歩行ユニット

   外装スキン :  マスコット仕様ペンギン

 

「……目立ちすぎでしょ」

 ――と、その瞬間。

(……逆に?)

 1秒考え、3秒で結論。

「……アリかも」


5分後、索敵ドローンが現れる。


だが、そこにいたのは――

   堂々とペタペタ歩く、ペンギンの着ぐるみ。


――《索敵結果:娯楽系広告ユニット

     状態:ゆっくり歩行中

    危険度:ゼロ

    目標との合致度:0パーセント》


「よしっ……!」

 シャッテは、着ぐるみの中でガッツポーズをした。


……その後、地下最下層に辿り着いた――はずだった。


だが、見知らぬエリア。

   黒い岩肌。

   薄く発光する天井。


救命ポッドの中は換気と空調完備で快適だ。

   コクピットに腰かけたシャッテが、足元のフットマットを

   右左と足踏みするだけで、ヨチヨチと前に進む


と、突然、ドローン2機が飛んで来た。

  「わっ、ヤッバ……」

   どうやら自動操縦を止めているようだ

   中に人がいることが分かっている動きで迫ってくる。


必死にペタペタペタペタ!

瞬間――

   ガコン!!

   床が、抜けた。

   「……え?」

       次の瞬間、視界が反転する。

       「ちょ、待っ――!」

       ペンギンは真っ逆さまに落下した


◇ ◇ ◇


その少し前――

懸命に逃げるシャッテを、ジェッドは余裕で追跡していた。

その姿はまさに人間狩り

   ジェッドは至福の中にいた。

   (マズいな……仕事忘れそうに楽しいわ)

   いつでも捕獲できる装備は整っている。

   逃げ場のない、

   中央エリアのリサイクルセンターに誘導できている。


シャッテがそこに逃げ込むのを見ると試作品の

   誘拐用中型ドローン3機を中に放った。

   300kgの重量物さえ掴んで持ち上げる

   腹から掴んで引きずって来い――


だが、かなりの時間、ドローンは探し回る、

   が、一向に見つからない。

   不審に思ったジェッドは、

   部下が監視してるドローン機のログを確認していく。


「なんだ?こりゃあ?」

   場違いなペンギンがノロノロ歩いており、

   その横をドローン機が通り過ぎる。

「おい!一旦ドローン回収しろ!手動で仕切り直しだ!」

「いいか?あの女は着ぐるみの中だ!」 


(粘るねぇ――

   たのしい――

      出来る女を追い込むのサイコーだぜ――!)

表情が変わらないところに、ジェッドのいびつな残虐性が垣間見える


◇ ◇ ◇


シャッテペンギンが落下してすぐ縦穴、

   ゴロゴロゴロ!

      転がり続ける。

         ゴロゴロゴロゴロ!

だが、そもそもが球形救命ポッド

   かなりの距離を転がり、最後は相当な高さから地面へ落下したが

   ポッド内部のクッションは良好、ジャイロ姿勢制御もバッチリ、

   シャッテはノーダメージだった。


どうやら、一番下まで転がり落ちたようだ。

   ペンギンポッドのお腹を開けて、シャッテは外に出てみた

   顔を上げると、


そこは――巨大な地下空洞。

   無数の通路が、あらゆる方向へ伸びている。

  「……迷宮、みたい」


――およそ200年前

2200年ごろ、初期の月面移民たちは、すぐに発見した。

月の地下は――

   穴だらけだった。

   巨大なアリの巣のように枝分かれし、終わりの見えない空洞。


不思議なことに、そこは適切に封鎖すれば、空気が逃げない。

   圧力は保たれ、循環は自然に安定し、

   まるで「人が住むこと」を前提に掘られたかのようだった。


そして今もなお、各地の月面都市のライフライン最下層、

   更に下には――

   封鎖され、放置された空洞が存在している。


シャッテペンギンは空洞をペタペタと歩き出す。

   こういう洞窟探検は得意なはずだった。

   だが。

  「……分岐、多すぎ……」

   同じ形の通路。同じ岩肌。同じ高さ。

   方向感覚は、すぐに壊れた。


数時間、いや、もっと?

喉は乾き、思考は鈍る。


「……最悪……」

   流石に脚もくたびれて、

   シャッテはコックピットで突っ伏した。


「……もう……無理……」

   シャッテの目にうっすら涙が光る。

  (ぐす……小さいとき同じことあったー――

   路地裏で迷子になって、泣いてた小さなシャッテ。

   大きなおじさんが助けてくれたことを思い出す。

   そうだ……“あーちゃん”から教えて貰った、

   秘密のおまじない

 

シャッテは、奮い立て!わたし!

思いをこめて叫ぶ

  「意思あるところに道はひらく!!」


その時、胸の奥で何かが弾けた。

  「……負けない!」

   叫んだ瞬間、前方の地面に何かが落ちてるのを見つける。


風化した地面に半分埋もれるように、小さな箱があった。

   宝石箱ほどのサイズ。

   明らかに未知の材質。

   フタに触れると、簡単に開く。


中には――

   ”まるで現代でも流行りそうな”なかなか良いデザインの

  【VRゴーグル式ヘッドセット】が収まっていた。


「……素敵ね」

   思わず、着けてしまった。


《ユーザーの新規登録を開始します》

   ガイダンス音声にびっくりする

   が、説明を聞いているうちに

   見違えるように元気を取り戻すシャッテ。


彼女は人類初のユニークアイテム、

   古代の遺物――

   【ゴールマッパー】を手にしていた。


◇ ◇ ◇


【ゴールマッパー(Goal-Mapper)】

   形はVRゴーグル付きヘッドセットによく似ている

   だが、装着バンドの類は無い


   顔の前にあてがうだけで、

   ゴールマッパーは、ふわっと目の前で浮き

   画面を視界に固定する“フロート式装着”だった


   装着感は全くなく、極めて良好

   操作ボタンなし、完全防水・耐寒・耐熱・永久可動のデバイス

   映像と音声による対話式ナビゲーションシステム

頭に装着しマイクで『起動』と呟くだけで、即座に作動した。


《起動しました》

   やけに優しい女性音声が頭の中に直接響く。

   骨伝導システムに似ているようだ

   《ユーザー:シャッテ       》

   《現在位置:未登録》

   《既知ルート:ゼロ》

   《ゴール指定を要求します》


「……は?」

   シャッテは思わず周囲を見回した。

  「マップもないのに……ゴール……?」


《ゴールは、行きたい場所――

   あるいは、会いたい人――

     もしくは、手に入れたい物――

 いずれか一つを設定可能です》


通常なら、意味不明な機械だ。

   だが、この迷宮で意味不明なのはきっと当たり前。

  「……ダメ元、ね」

   シャッテは、目を閉じ、一人の男を思い浮かべた。

  「……絶対に、間違えない顔」

   胸の奥が、きゅっと締め付けられる。

  「……ショーン・マクスヴェイン。あの人のところに……行きたい」


その瞬間。

   《現在位置:マッピング終了しました》

   《ルート:新マップ探索モードで進行中》

   《ゴール指定:ショーン・マクスヴェイン》

   《距離測定……完了。

         ここより3000メートル上方に位置を確認》


シャッテは、息を呑んだ。

   《ルート算出……完了しました》

   《案内を開始します》

   《しっかり歩いて前に進んで下さい》


ゴールマッパーは歩行限定のアイテムだ

   ゴーグルで覗く視界に、線画で立体マップが浮かぶ。

   中央の〇印が自分の位置だろうか?

   ただの記号が少し可愛く見える


〇印にくっついた緑色の線がゴールまでのルートを示すのね……

   “正しいルート”を見せてくれると本当に安心する


 《目的地までの距離:12キロ》

  近くに色々なマークが点在している。

  質問するシャッテに懇切丁寧に説明してくれるアナウンス


《そこは給水ポイントです。

   水質は良好寄り道しても時間ロスは軽微です》


《ここは地面が少し温かく、

   地形も安定してるので安全に休息できますよ》


《そこには非常食パックが落ちています。

   問題ない状態かは分かりません。大丈夫だといいですね》


《およそ三十歩前方に亀裂を確認、注意してください》

《次の分岐は分かり難いので注意して。奥側の右です》

《段差に注意。転倒リスク高めです》


「……すご……」

   今まで、何時間も迷っていた迷路が、

   突然、ハイキングに思えてしまう。

   迷う必要はない。

   ガイダンスを信じて進むだけ。


《ユーザーの心拍数が上昇傾向、休憩を推奨します》

「……優しすぎない?」

   シャッテは苦笑しながら、言われた通りにペンギン歩行を止めた。


「……ありがとうね?……え~っと、あなた名前あるの?」

《このデバイスに固有呼称はありません》

《ユーザーが任意で設定登録可能です》

「そうなんだ!それじゃ……」


「リード!(Lead;導く)って呼ばせて頂戴!」

「私の事は”お嬢”で良いわよ!」


《登録しました》

《このデバイスは固有呼称”リード”》

《ユーザー”シャッテ”は”お嬢”と呼称します》

《これらはいつでも変更可能です。確定しますか?》


「確定して!これからよろしくね、リード!」

《はい、よろしくお願いします、お嬢》


……誰も知らない地下迷宮で、最強コンビが誕生した瞬間であった。


◇ ◇ ◇


――それから6時間後


《残り距離、300メートル》

《進行方向大丈夫ですよ、お嬢》


その言葉だけで、足が前に出た。


「……会いたい……」

その気持ちが、燃料になった。


《お嬢、最終分岐です。左を曲がってください》

《ここを30メートル直進後、目の前のボタンを押してください》


古い非常ハッチが見えた。

「もうすぐ……会える!」

シャッテは、おねがい!ぐっとボタンを押した。


◇ ◇ ◇


コリントに脅され、

アテナはブチ切れ、

ひと騒動が終わって、ギルドを出て我が家へと帰る、

ショーンとアテナ


「本日は……オムライス、などはいかがでしょう」

「いいな、それ」

ショーンが即答すると、アテナはいたずらっぽく微笑む。


つもの二人の距離。

それが、何よりの平穏


ルナトキオ宇宙船停泊エリア。

   ドレッドレッダー号はその片隅にいつも停泊し、

   ショーン達はいつうもそこで寝泊まりしている。


もうすぐドレッドレッダー号、二人の我が家、

そう思ったとき、アテナが反応した。

「?!」

「ショーン、そこの古いハッチが稼働を開始しました。

 とびらが開く模様、警戒します」


ギッギ……ギギ……ギイーッ


中からなんと、ペンギンがペタペタと歩いてきた。

   びっくりするアテナとショーン、

   その前でペンギンが止まった。

   「は?ペンギン?……あの~何かご用ですか?」

   ――ガタガタガタ


――ガシュン、ペンギンの胸が開く


そして――

「だ、だすげでぇ……ショォォーン……!」

   シャッテが開口一番、思い切りショーンに抱きついた。


「え?だ、誰?」慌てるショーン

「ちょっと!何ですのアナタは?!」

   こうして、シャッテはショーンと邂逅した。



この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません

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