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アストロクイーン ―月駆ける乙女たち―  作者: まじとも詩
第一章 宇宙探索者ショーンとアストロノイド・アテナ
13/39

第3話(5)傭兵シャッテの憂鬱

西暦2381年。

この時代、地球と月、そして宇宙コロニーを結ぶ交易航路は発達し、

宇宙は冒険の場であると同時に、

誰もが暮らす「生活圏」となっていた。


これは、月面都市を舞台に繰り広げられる、

少し先の未来を夢見るファンタジー。

◆傭兵シャッテの憂鬱◆

月面都市“ルナシカゴ”、その繁華街の一角。

小さいながらセキュリティの行き届いた

   バー【ロビンドリーム】には、

   ゆったりとしたジャズが流れ、静かな空気が漂っていた。


カウンター席で頬杖をつきながらカクテルを揺らしているのは、

金髪ツインテールの女性――

   シャッテ・ホルスタイン、17才。

   160センチと小柄な体型に反して、アンバランスな胸とヒップ。

   タンクトップを持ち上げ、はちきれんばかりの豊かな胸、

   ホットパンツにムッチリと食い込んだ大きなヒップが、

   パンク系ジャケットとロングブーツ姿と相まって、

   周囲の男性達はチラチラと視線を送っている。


だが、彼女のきりっとした紫の瞳は近寄りがたく、

   周囲の男性客たちが声をかける勇気を出せずにいた。


「……うぅ~~……もう最悪っ……」

   カウンターに額をこつんとぶつけ、小さく唸る。

   キツい表情をしていても、落ち込んだ時の仕草は

   どこか子猫のようで可愛らしい。


昨日まで彼女は“傭兵だった”それも“在宅勤務の”。

   ゲーム好きの彼女は、気まぐれで裏社会ネットワークにアクセス。

   そこで小さな募集タグに興味を惹かれた。


“求む、在宅傭兵!自宅に居ながら安全に楽しく傭兵生活しませんか?“


面白そうだと早速、彼女は軽い気持ちで応募、

   腕試し程度に思っていたが入隊試験をトップで合格してしまった。

   提示された契約条件は、

   本当に自宅ネットワークからの傭兵参加で、

   しかも思ってもいなかった高額報酬。

   彼女は二つ返事で契約してしまった。


初任務は――小惑星帯のとあるステルス要塞で監視任務。

   仕事時間は本当に一日6時間の交代制。

   担当する時間帯はほとんど動けず不自由だが、

   初任務ということでわくわく感もあり、

   最初はそれほど気にならなかった。


だが、始めて三日間、何も起こらず、つまらない仕事だった。

   要塞は常にステルス状態、だから動かす楽しみゼロ。

   見つかる緊張感もゼロ。

   監視、迎撃用の遠隔操縦ドローン戦闘機も全く出番なし。


「ふわぁ~……あと30分で次と交替……もう一ヶ月かぁ。

   ほんっと暇ねぇ……」

   もうすぐ契約更新日だけど、もう辞めよっかなぁ……

そんなことを思いつつ、彼女は――

   その瞬間までは、退屈そのものだった。

   中型宇宙船が単機、要塞の警戒宙域に入り込むと、

   何やら小惑星のスキャンを始めた。

   そう、最初はただの“観察対象”だった。

  「あら、初めてのお客さ~ん。

   でもステルス、見破れるわけないでしょ? 

   はいはい、早く帰りなさ~い」

気楽に眺めていた。


だが――それ は一瞬だった。

   妙な照準の動き。

   そして、カモフラージュを貫いた一発のスキャンビーム。

  「……はぁ!? 何あれ!」

   球形要塞が、あっさり“見破られた”。


「まあいいわ。暇つぶしには、ちょうどいいし♪」

   迎撃ドローン10機を発進させたシャッテは、

   包囲殲滅モードへ切り替える。

   三方向から囲んでジ・エンドよ


そのはずが――

  「なんで当たらないのよ!? 

   ちょっと、そのタレット、動きおかしくない!?」


宇宙船から短いケーブルで繋がっただけのショボいタレット。

   それがまるで、

   ゲームのバグキャラのような不規則な動きを見せる。

   小惑星を利用され、あっという間に、二機ロストした。


「にょっ??」

   彼女の声は裏返る。

  「相手も優秀な対戦アルゴリズム持ち……?

   へぇ、面白いじゃない!」

   絶対の自信、余裕の笑みを浮かべながら、

   彼女は勝負を仕掛ける。


しかし――

  チャンスとばかり速射したこちらの攻撃を、

  シールドで完璧に受け、再びタレットから攻撃、

  また一機ロスト。

  焦燥が背筋を駆け上がる。


だが、シャッテも天才である。

   プログラマーとして、

   彼女は小惑星帯用スラスター強化プログラムを自作し、

   要塞システムにアドイン、

   さらに、四機編隊で包囲してシンクロ射撃をする、

   独自の攻撃アルゴリズムを実装していた。


「こ、こうなったら……シンクロ・カルテット!

   四機同時に行けぇ!」

   完全な包囲と四発の同期着弾射撃。

   シャッテの必勝パターン。

    ――だが、

      逆に三機が瞬殺された。

     「……え?」

      シャッテは口を開けたまま固まった。

     数秒……いや十数秒。

     真っ白になった頭を、警報音が引き戻した。

要塞ステルスシステムが復旧したところで、

シャッテは冷静さを取り戻し、速やかな撤退指令を出した。


――負けた――

   安全区域まで離脱できたことを確認して、

   次の担当者に引き継ぎ終えると、

   シャッテはマルチモニター型のVRヘッドセットを外して

   デスクの隅に放り投げ、

   横にある仮眠用ソファに体を投げ出した。


ルナシカゴ、マンションの一室で彼女は恐ろしい目に会ってしまった

   ――緊張した――

   ――疲れた――

   うっかりそのまま眠ってしまった


――1時間後

   んにゃ?

   受信通知で目を覚ますシャッテ。

   クライアントから1通のメッセージ。

   契約解除。

   報酬一ヶ月分は、

   撃墜されたドローン代金として差し引かれ、

   彼女の一ヶ月は無給どころか赤字となった。

 

◇ ◇ ◇


「……はぁ~~~……マジでツイてない……」

   バーのグラスを握りしめ、彼女は独り言ちる。    

  「あれ民間船とか嘘でしょ……?

   絶対、宇宙軍のエース船が擬装して来たんだわ。セコいったら……」

   ふてくされながらも、興味は抑えられなかった。


自宅のマンションに戻ると、彼女はリンクシステムPCを立上げ、

   戦闘ログの映像を詳細にチェックし始めた。

   あのタレットに新技術があるんだわ……

   画像解析できればアルゴリズムが手に入る!

   新技術に出会えるかもと、気分が高まってくるシャッテ。

   指揮ドローン機のカメラは、

   軍仕様の8K画像・超高速1000FPS、

   1フレーム1ミリ秒の最高仕様だ


「ん~っと……あったわ、ここと……いえ、ここだけね」

   四機シンクロ攻撃で逆に三機が撃墜される直前、

   たった8フレームだけ相手が映っていた。


――「え!?」

   タレットに人が乗ってる!

   予想外のことに驚愕するシャッテ、

   向こうも無人機と思い込んでいた。


人に向けて発砲してしまった――

   シャッテは突然気分が悪くなり、シャワールームに閉じこもった。


一時間後、ようやく色々と回復し、

   気を取り直して画像解析を再開する。

   ――あらためてみると

  「案外若いわね。

   てっきり強面のおじ様と思った……ちょっと可愛い系?」


そして“異常”に気づいた。

   顔の映り込み連続8フレーム。

   だが――コマ送りすると、

   男の“目の向き”が全部違っていた。

   まるで、0.001秒刻みで

   あらゆる方向を“見切っている”ような。


「これってホントに見てるの?

   眼球痙攣とか?……じゃない!

   こいつ絶対こっちが視えてる……」

    ――特に後半の三フレームは全てこっちのカメラ目線だった。

      この人はカメラの向こうのわたしを見ている――

      彼女の心臓がどくん、と跳ねた。


シャッテは確かに感じた。恐怖と――それ以上の“好奇心”。

   キツい性格に見えても、

   本当は恋に落ちやすくて一途に尽くすタイプ

   彼女は――その瞬間、かすかに頬を赤くした。

    「……なにそれ……ずるい……。気になるじゃない……」

     シャッテの運命は、もうショーンと交わり始めていた。


======== 次回更新へつづく ========

この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません

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