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9.オルタとの別れ

 前回のあらすじ。

 お金稼ぎを成功させ、数日が経過した。

 次はどんなことが起こるのでしょうか?

 書見のほどよろしくお願いします。

 解析の能力を得てから三日。D空間に入り戦いを熟している。グレードが212になり、ステータスもそれなりに充実してきた。相変わらずのバルーンフェザーばかりだが、それも今日で終わりだ。


『マスター。構造体の執着点です。転送装置シークデバイスのコンジクトが設置されています』

『分かっている』


 転送装置がある場所は幾何学模様が床に刻まれている。フォースを流せば設定された場所に移動することができる。模様を解析するとFTナンバーが分かるようになる。現実のQRコードと似ている機械語のようなもので、専用のアプリを通すことで解析できる。


 別に調べる必要はない。だが次から直接転送するため知っておいても損はない。


 ボクはノルテアになってからそうした知識が分からなくなっている。参考書や専用のコンピュータが有れば話は別だが、手作業で解くことができなくなっている。こうした作業はオルタにお願いしようと思う。


『ねえ。フォースタームの解析はできるよね?』

『おや? その手がありましたね。さっそく試してみましょう』

『頼むよ』


 この先へ行くと出現する敵の個体が変わってくる。ゲーム時代と同じであればおおよその検討が付く。


 とは言っても場所が変わる度に種類が増える程度。記憶が確かであれば洗浄の能力を持つウォッシュグリッターが出現するはずだ。


 丸いスプリス体のオルタが浮いたまま地面に光を当てている。やや広い祭壇のような床にある幾何学模様の白と黒の線を解析している。


 ボール型で機敏に動く姿はまるでビット兵器みたいでかっこいい。


『解析が完了しました。これからは一度転送した後に直接行けるようになります』

『一回は踏み入れておかないと行くことができないんだね』

『いいえ、違います。転送は間違った場所に移動するとネガの深層域に囚われることになります。安全確認は必須です』

『なにそれ? 初めて聞くよ? ここに来た時はためらわずに転送してくれたよね? ボクの提案したFTナンバーが正しくなかったら今頃どうなっていたんだよ』

『間違いなく死んでいたでしょう』

『ひどい! どうしてあの時に教えてくれなかったんだ!』

『仕方がないことです。マスターと出会って間もなくでした。私にとってマスターはどうでもいい存在でしたので』

『でもその言い方だと今は違うってことだよね?』

『…………そうですね』

『今の間は何だったんだよ! オルタってボクに優しくないよね!』

『そう思うのでしたら私に優秀性をアピールしてください。そうでなければいつでもマスターを裏切る用意があります』

『それ本音じゃないよね?』

『黙秘します。回答は控えさせていただきます』

『おい! どういう意味だよ!』


 全くオルタも人が悪い。きっとツンデレなだけで実はボクのことが好きなんだよね。まあ今は置いておこう。


『目的の場所に移動しよう。本当はもう少し慎重になってから準備をしておきたいところだけど、この先に気を配る必要もないからね』

『その口振りから推測するに、マスターは状況把握ができているのですね?』

『前世の記憶があるからね。ここと似た場所に一度だけ来たことがある』

『別世界のマスターの記憶ですか? この世界と違う世界であるという妄言でしたね。参考までに聞いてあげてもよろしいですよ?』

『確かにそうしておかないと不味いかな? いいよ。話しておく』

『考え違いの無いように確度の高い知識だけをお伝えてください。私はまだ貴方を信じることができていません。この世界はゲームの世界だった。そんな三文小説のような話は嘘でしかありえません。おそらくマスターは新人類に洗脳されているのです。長い眠りの末に全神経が狂ったに違いありません。冗談はその顔だけにしてください』

『そこまで言わなくてもいいよね!』


 そうは言いつついじられて楽しい気分のボクは、独り言のように知識を語り始める。


 ここは“試練の事端”と呼ばれ、公式認定のディメンジョンダンジョンになる。ゲームの探索パートでFTナンバーを入力し行くことができる。


 全78層。最終地点に着くと特別な桃色シーンを見ることができる。CG保管のために一度は訪れたい場所。


 多彩な能力を有するイデア型のスプリスだけが出現するD空間。


 吸収で取得できる異能スキルを余すことなく手に入れることができるため、今のボクと同じようにリセット育成をする場合に限り、重要な場所にもなる。


 そうした行為を何度も行ってきたボクにとってこの風景は見慣れた場所。


 十層毎にグレードが倍になり、フロアトラップが仕掛けられ、強い個体が出現していく。


 フロアトラップがある部屋は戦闘行為に制限が設けられる。例えば、回復無効や能力上昇など、その種類は多彩に存在する。


 しかしここでのトラップはどこもグレードが高くなるだけで危険がない。敵の種類さえ分かれば対処が簡単に行える。


『とまあそんな感じだから、十層毎に出現するボスに注意して順序良くグレードを上げていけば問題ないと思う』

『それは夢で見た記憶での話ですよね?』

『そうなるね』

『……ふむ。分かりました。参考として理解しておきます』

『気になることでもあるのかな? 次の層も問題ないはずだよ?』

『そうでしょうか? ネガのグレードが高いという大きな違いがあるのです。この先がマスターの予想通りとは限りません』

『それも一理ある。けどここで気にしていても仕方がないと思うよ?』

『では提案なのですが、私を先に行かせるというのはどうでしょう』

『そんなことができるの?』

『私は高性能です。単独で移動できない他のAIとは違うのです。お任せください』

『わかった。オルタに任せるよ』

『では行ってきます。マスターはここから離れていてください』

『うん。気を付けてね』


 オルタの指示通り祭壇のような転送床からモフモフの脚を動かし離れる。振り返り状況を確認すると、床から光が昇り、次第に輝きが増し、一瞬にしてオルタの姿が見えなくなる。


「行っちゃった……」


 オルタが帰ってくるまでに自分のステータスを解析する。


―――――――――――――――――――――――

 能力ステータス:

 グレード[212]

 戦闘力[7996]

 HP[116/116]

 FP[143/146]

 攻撃力[111]

 防御力[112]

 抵抗[123]

 速力[125]

 幸運[1065]

―――――――――――――――――――――――


 平均的な数値だ。幸運の値が突出している。これだけ高ければ吸収の特殊効果も発動しやすくなる。


 グレードも高い。ゲーム時代だと200を超えた時点で進化をしていた。ここまで強くしたことがない。今後はどのように成長していくか予想ができない。


 それにしてもオルタの帰りが遅いな。何かあったのだろうか?


「…………」


 状況が分からない。チット通信を試してみよう。ボクはフォースを消費して遠くを意識する。


『……あれ? フォースが足りないのかな?』


 もう少し多く流してみよう。


『ザ……ザザザ』


 今度は繋がったみたいだ。ノイズが走る音が聞こえてくる。


『マスター』

『今はどういう状況?』

『危険……です……すぐに……ラボへ……お帰り……くだ……さい』

『オルタ! 大丈夫なの!』

『私……は……です……み…………ください』

『そんなことできるかよ! オルタ! なあ! オルタ!』

『ザ……ザ……ザザザ……』


 オルタを見捨てる訳にはいかない。ボクは急いで階段を上り模様のある床の中に足を踏み入れフォースを流す。


「起動しろ!」


 白いボディが光り輝く。


「動け!」


 装置に光が宿る。幾何学模様の線が輝き周囲を明るくする。


「待っていろよ。今助けてやるからな」


 ボクは浮遊する感覚を覚え、まるでエレベーターに乗り下りする重さを実感する。

 オルタが居なくなっちゃった。

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