7.異能スキルを手に入れる
前回のあらすじ。
スプリスのカスタムを済ませ、数日が経つ。
さてこの後どうなるのでしょうか?
書見のほどよろしくお願いします。
初めてグレードが上がり一週間が経過した。今日もボクは電想空間に想入し、イデア型の敵と戦っている。
『マスター。敵は五体です』
『分かっている』
相変わらずのバルーンフェザー。
ボクのグレードが132になり、戦いも楽になってきた。
『上空を通過しました』
『いつもの通り援護は必要ないからね』
『むしろこの程度でやられるようでは、私のマスターである資格はありません』
『言ってくれる』
あれから何度も戦っている。今のように敵が襲ってくることもしばしある。その度に撤退し、一対一で戦える状況に持ち込んでいる。次第にグレードが上がり、今では六体を同時に相手にすることもできるようになる。
『隠蔽を発動する』
隠蔽は敵味方から姿を見えづらくする異能スキル。宣言をしておかなければオルタもボクを見失うため、できるだけ口にするようにしている。
ボクはデルタジャンプを使い、コンクリートのコンジクトでできた構造物の壁を三角飛びで昇っていく。屋上に着いて見上げるように一体の敵に狙いを定め、吸収の貯め攻撃を解き放つ。
敵が一瞬にしてフォースの輝きに昇華し、他の四体が向きを変えてくる。
その瞬間にボクは隠蔽効果を解除する。
隠蔽などのパッシブアクションは吸収スキルと併用することで準備動作の時短に貢献する。ゲーム時代ではキャンセル連撃と呼ばれ、攻撃の手数を倍にすることができるプレイヤースキルになる。
『うぉおおおー!』
攻撃と隠蔽。攻撃と隠蔽解除。こうした動作を繰り返すことでコンマ二秒の短縮が可能になる。その間に数発の吸収攻撃を放つことができる。
三体の敵があっという間に光の玉として消えていく。残るは一体。グレードが特別高い個体なのか、ボクの攻撃を受け耐え続けている。けれど他の敵と同様にエフェクトが発生し、光になって消えていく。
『よし、勝った』
ボクも強くなったな。フォースが体に流れ、グレードが上がり、力が入る感覚が伝わってくる。
『ん?』
この違和感はなんだ?
もしかして。
『オルタ、近くに居る?』
『どうしたのですか?』
『ボクのステータスを見てくれないかな? 何か変わったことが無いか調べて欲しい』
『確認します』
予想が正しければ吸収の特殊能力が発動し、新たな力を得たはずだ。
『これは……』
『分かった?』
『はい。異能スキルの効果で新しい力が芽生えています』
『やっぱり』
ようやく機運極振りの効果が表れるようになってきたな。
そういえば機運を100振ると特殊能力の発動率が5%にはなると、クラブメンバーの誰かが言っていた気がする。
『スキル名は“解析”です。私が使っている鑑定スキルの下位互換ですね』
『解析か……』
解析は戦いで敵の“戦闘力と生命力”を調べることができる異能スキルになる。
超能力の強化カスタムでより強力にすることができるのだが、それでも鑑定スキルの方が精度は上になる。
他にもあらゆる物の名前を調べ、その状態を確認することができる。それらの価値を評価することもできる。自分のステータスを詳細に調べることもできる。
しかしこの場で手にできる異能がよもや解析だとは思わなかった。ゲームでは難易度が普通の場合にのみ一層で手に入れることができる。
ここ“試練の事端”のD空間は、一層で出現する敵の種類で難易度が分かる。
これは考えているよりもずっと“優しい世界”であるという証明にもなる。
確かに身に覚えはある。敵が想定よりも弱い。スペシャルハードルインモードにもなると全ての敵がカウンターを仕掛けてくる。カウンターは最大の防御とも呼ばれ、対策のために様々な工夫が必要になる。
この世界の敵にそうした要素が無い。攻撃も簡単に通る。特別なことをする必要も無い。
全ての敵に絶対防御とした要素も無い。リフレクションガードと呼ばれる遠距離攻撃完全カウンターの極悪要素も無い。
つまり貫通攻撃が無くとも戦えることを意味している。これはとても重要な発見だ。今後の生活において大きなアドバンテージになるだろう。
それに解析が手に入ったことで他にもできることがある。以前から考えていた資産問題を解決することができる。ボクは嬉しくなり思わずガッツポーズをとる。
『よし』
『何が嬉しいのですか?』
『オルタ。今日はこれで帰ろう。研究所でカスタマイズを済ませよう』
『やけに乗り気ですね。いつもは気を失うのが嫌だとぼやいていたではありませんか?』
『いいんだよ。そんなことよりも転送処理を早くしてくれよ』
『シークエンスは起動します。完了に二十秒掛かります。差し支えがなければその間に教えてください』
『それはね。お金稼ぎだよ』
『はあ?』
ここがゲーム世界であるならばあの方法が使える。
解析の有無でアイテムの質が分かるようになる。
お店に置かれた物は質に関係なく一律同じ価格になる。例えばフォトンソードがあるとする。それぞれ攻撃力が違っていても同じ値段として扱われている。
だけど解析があればより詳細に品物の性質が分かるようになる。適正な価値を調べ、お金を稼ぐことができる。
エルノア研究所に戻ったボクは、感応体の状態のままベッドで横になり、カスタマイズ処理を済ませ、ようやく意識不明から目を覚ます。
オルタに言われるがままイフクロスにアクセスし、ウィンドウ画面を開き、自己ステータスの確認をしている。
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個体情報:
使役者[ノルテア]
タイプ[イデア]
サイズ[SS]
種類名[フラッフィーロリー]
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能力ステータス:
グレード[138]
戦闘力[3578]
HP[79]
FP[109]
攻撃力[74]
防御力[75]
抵抗[86]
速力[88]
幸運[695]
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ステータス補正値:
強度[1]
知能[4]
制御[1]
敏捷[2]
耐性[1]
機運[139]
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異能スキル:
[吸収][隠蔽][解析Ⅱ]NEW
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「気分はどうですか?」
「大分慣れてきたよ。決していい気はしないけどね」
「しかし良かったのですか? フォースを1000万アルクも使用して。残りは40万アルクしかありませんよ?」
「問題ないよ。また貯めればいいさ」
「そうですか。そうのようにお考えでしたら、私からは何も言うことがありません」
バルーンフェザー一体あたり14万アルクになる。今日は20体ほど倒している。日に日に倒せる量が増えているので、またすぐに貯めることができるはずだ。
ちなみに解析を得るための費用に500万アルクを消費している。
追加で500万アルクを支払い、解析Ⅱへの“強化”を行っている。Ⅱは評価分析能力が付加されている。物の価値が分かるようになり、今後の活動に大きく貢献してくれるだろう。
「お答えください。お金稼ぎとはどういう意味なのですか?」
「そのままの意味だよ。ボクは孤児院に借金をしている。今までの生活費に基本金が加わった返済金が必要になる。それを支払わない限りボクは自由民になれないからね」
「いいえ。そういう意味ではなく、どうやってお金を稼ぐのですか?」
「言ってしまえば転売だよ。安く物を買って、高い値で売り払う。そうしたことができる物を見つける作業になるね」
「そんなことが可能なのですか?」
「ボクはやれると思っているんだけど、ダメかな?」
「マスター。その程度の考えではリスクが高すぎます。より勝算のあるプランを私に提示してください」
「そうだね。簡単に言ってしまえば解析や鑑定と云った能力は希少だというのが理由になるね」
「ですが、街に数人は居るのでしょう? その方たちが居る限り相場よりも価値がある物を見つけるのは難しいと思います」
「そんなことは無いよ。鑑定士にも弱点はある」
「どういう意味ですか?」
ボク以外にイフクロスに直接アクセスする方法を知っている者は居ないはずだ。
「大抵の鑑定士は戦うことができないのでグレードが低くスプリスを持ち合わせていない人が多い。だから鑑定の能力を多用するにはフォースの消費効率を図ってくれるコンソールの補助が必要になる。コンソールはとても貴重だ。個人が持つにはそれなりの地位が必要になる」
「コンソールを持ち運びながら品物の良し悪しを調べていく。それほどの財が在るのならば掘り出し物を探すような商売はしない。そう言いたいのですね?」
「そういうこと」
「……ふむ。無能なマスターにしてはまともな案のようですね。確かに筋が通っています。いいでしょう。私がサポートします」
「ありがとう。オルタが手伝ってくれると非常に助かるよ」
「当然ですね」
手持ちのお金が750ゴルド。そのお金で掘り出し物を買い付け、商業ギルドで売り払う。
博打の要素は大きい。けれど利益もそれなりに大きいはずだ。
「さっそく想出して外に稼ぎに行こう」
「了解しました。フィルアウトプロセスを開始します」
先立つものがないと話が進みません。
ゆるゆる生活はお金持ちしかできないのです。




