16.念動力
前回のあらすじ。
アルムとベイが遊びに来た。外に出て朝の訓練をする。続きはいかに。
書見のほどよろしくお願いします。
「兄ちゃん。終わりか?」
「次は魔法の訓練をしようと思う」
「すげぇ! さっきの以外にも使えるのか?」
「見せて~、見せて~」
武術の鍛錬を切り上げ念動力の練習に取り掛かる。
超能力はこの世界で魔法の力とも呼ばれている。現実世界では架空の力。旧来の世界では異能スキルとも呼ばれている。
「じゃあ見ていてね」
試しに念動力を使い、石を持ち上げよう。
「浮いた! すっげ!」
「すごい~」
思ったよりも軽いな。使い勝手がいい。月影流の鍛錬のおかげで制御が簡単に行える。どうせだから畑を耕してみよう。練習には丁度いい。
「二人とも後ろに下がってくれないかな?」
「いいぜ!」
「うん!」
ボクは地面に手を付け前屈みになる。
そのままフォースを流し、範囲を指定する。
大地に空気を含ませるイメージをする。石や砂で固まった土を掘り起こし、柔らかくする感じだ。
超能力は魔法と呼ばれている。魔法は呪文を唱える習わしがある。どういう理屈か分からないけど、最低限術名を述べる行為が必要になる。
別に言わなくてもいいのだが、後で二人に騒がれても面白くない。それっぽく演技をして、誤魔化しておこう。
「大地を揺るがせ! シェイクグランド!」
「すげっ! すげっ!」
「わぁお~!」
アルムとベイが騒いでいる。
実はボクも驚いている。思ったよりも威力が強かったからだ。
土が振れ浮き上がる。まるで粒が踊るように隆起する。土と別れた砂や小石が散乱し、大地に亀裂が入る。柔らかそうな地面が作られていく。
「だったら次は、こうだ!」
こうなってくると止まらない。ボクも楽しくなってくる。
砂利を対象に持ち上げることにする。無数の小石を同時に浮かばせ、邪魔にならない場所に移動させる。
「意外と難しい」
思ったよりもコントロールできない。フォースを繊細に扱わなければ地面に落ちる。一つ一つの石に力を浸透させる作業に意識が取られていく。
筋肉も意外に使う。肉が張る感覚が伝わってくる。
「これ、いい訓練になるな」
魔法はイメージでいかようにもなると現実世界で聞いたことがある。この力は超能力だ。けれど魔法とも呼ばれている。奇跡的にも類似している点が多い気がする。
石を表面でとらえるのではなく、固い物を石と定義し、ほとんどがケイ素である事実を利用する。それが石だと現象が理解するため、より厳密に力を通しやすくなる。
よくよく考えるとボイド粒子が超能力の発端になる。ボイド粒子はどこにでも存在している。当然MDRもその一つになる。
MDRに石という存在を明確に指示してやることで、よりコントロールがしやすくなる。
MDRは超能力を増幅してくれる。もちろんMDRが無くても超能力は使える力だ。だけど存在するから仕方がない。影響がある分だけ上手く利用しよう。
空気中に含まれるMDRは、旧来よりも濃度があるらしい。昔の覚えと違い、より威力が増している気がする。
けれど面白い。手のひらサイズの石も難なく移動させることができる。調子に乗ってボクは次々に畑の土を耕していく。
「あんたたち! 何をしているのよ!」
「あっ、しー姉ちゃんだ~!」
「シーラ姉ちゃん! ノル兄ちゃんがすごいんだぜ!」
シーラが来たらしい。だが断る。作業が楽しいからな。気にせずに続けていこう。
「なんであんたが魔法を使えるよ! どうしてよ! いつ託宣の儀を終えたのよ!」
託宣の儀とは、教会が神にお願いし、スキルを授ける儀式になる。
一定数のお布施が集まったときにいつでも行うことができる。ここアルセミア王国では、各領主がお金を出し合い、年に一度盛大に成人式が執り行われる。その時の若者たち全員に受けさせる決まりがある。
参加条件は15歳。それでいてスキルが使えない者に限られる。
「シェイクグランド!」
言わなくてもいいけど、なんかかっこいいよね。ボクはシーラに気にせず畑を耕していく。
「ノル! やっぱりギルドで危険ことをしていたのね!」
またシーラが勘違いをする。彼女は先走る癖がある。
「違うよ。この力は隠していたんだ。昔から使えたよ」
ボクは噓をついた。本当のことは言えないからね。
「だったどうして黙っていたのよ! あっ! まさかあんた! 外に出ているんじゃないでしょうね!」
「そんな訳ないだろう」
外に出るとは、防壁の外に行くという意味になる。シーカーは何でも屋さん。薬草の採取で森に入ることもある。実入りはいいがその分危険な作業。戦う能力が無い者は命がけの仕事になる。
そろそろ最後にしよう。朝の恵に間に合わなくなる。
「顕現せよ。フラッフィロリー」
ボクはスプリスを実体化させ、瞬時に隠蔽を施す。
ボクにしか見えないボクの分身体。白いモコモコした毛玉のスプリスが目の前に現れる。
力が湧いてくる。どんなことでもできる気がする。MDRがスプリスを体現し、超能力の元になるフォースを実感させてくれる。
「すげー! 兄ちゃんスゲーよ!」
「すごい~!」
「……何なのよ」
月影流を意識し、体を浮かばせる。
無駄を排除し、フォースの循環を最大限に抑えていく。
そのままボクは、アースバングを意識し、奴が使っていた最大級の攻撃技をイメージする。
「グランド! インパクト!」
その瞬間、大地が盛大に隆起し、広い敷地の地面が一斉に耕耘されていく。
魔法だよ。これ一応異世界ファンタジーですからね。




