13.アースバングに勝利した後の状況報告
前回のあらすじ。
敵は暴走し、能力を大幅に強化する。FPも無限使用。攻撃を通す手段がなく、万事休す。そこに救世主からの連絡が送られる。
オルタのフォローを受け、いつでも逃げられる状態になる。それが心に余裕を生み、起死回生に戦意を奮い立たせ、戦いに挑んでいく。果たしてノルテアはどうなったのでしょうか?
書見のほどよろしくお願いします。
「マ……起きて……ター」
誰かの声がする。
「回復は済んでいますよ。いい加減に起きてください」
ボクを呼ぶのは誰だ。
「うぅぅ……」
「マスター。ようやく目を覚ましましたね」
「ん?」
仰向けになって寝ていたのか。浮かぶ丸い姿のオルタに向け、ボクは朝の挨拶を言葉にする。
「おはよう」
「寝ぼけているのですか? 今は夜中ですよ」
「そんなはずはない。空が明るいよ? にしても見慣れない場所だね。ここはどこなんだ?」
「貴方が指定したD空間の中ですよ。忘れてしまったのですか?」
「……あ、そっか……」
やっと思い出した。ボクは丸い体を反転させ、モフモフと起き上がる。
「戦いに勝ったんだね」
「はい。私も信じられないと感じています。まさかあれほどの能力差があるにも拘わらず、戦況を覆すとは思いませんでした」
「そうだね。紙一重だったね……」
最後の三時間。ボクは敵と死闘を演じた。
難易度最強の敵と戦った経験を生かし、同じ要領で反撃を行っていった。おかげでリミット時間内に戦いを終えることができた。
しかし終わりの数秒遅れていたら倒すことができなかっただろう。
敵は知能が高く、途中からボクが望む攻撃を一切出さなくなる。
最後の60分は死に物狂い。10秒毎に1ダメージを重ねる。そんな戦いだった。
「本当に強かった」
「そうですか? 強そうな個体ではありましたが、野良のネガとしては三流以下です。あの程度の敵でここまで疲弊するようでは、外で生きていくことなど到底できるはずがありませんよ。自分がどれほど弱い存在なのか分かっているのですか?」
「手厳しいね」
「そんなことよりも聞きたいことがあります。なぜ私の忠告を無視したのですか?」
「どういう意味?」
「以前もそうでしたよ? ここへ来て最初にネガと奮戦した時のことです。私がフォローすると言ったのに、貴方は一人で先に行ってしまった」
「ああ……、懐かしいね」
「今回もそうです。貴方は私の忠告を無視し、敵の中へとシークしていったのです。一体どういうつもりなのですか? 納得のいく説明を聞かせください」
「前は出会ったばかりだったから仕方がなかったけど、今回は違うよ。オルタを助けようと思っただけだ」
「私を助ける? 何を言っているのですか?」
「仕方がないだろう。体が勝手に動いてしまうのだから」
「馬鹿なマスターですね。本当にどうしようもない人です。ですが、その心意気だけは評価します。私ではなく、グランドマスターがそう言っています」
「エルノアが? ボクの話を聞いているの?」
「おや? グランドマスターを呼び捨てですか? いい度胸ですね。ええ、そうです。貴方に感謝していると言っています」
「そっか……」
エルノアが生きている。そう確信できる内容だね。
エルノアは負感応症という病気に侵されている。
負感応症はフォースアレルギーとも呼ばれ、超能力の負荷を受けやすくなる奇病になる。フォースを使うと発熱を誘引する。
重度の患者は必ず死ぬと云われている。克服するためにはクローンニングの技術が必要になる。
「ボクに手伝えることはあるのかな?」
「何を言っているのですか?」
「エルノアを復活させる手助けだよ」
「……そう思うのでしたら、死にそうな目に合うのだけはやめてください」
「えっと……」
貴方にできることが無いと言っているのだろうか?
「それよりもマスター。報告があります。お聞きになりますか?」
「なにかな?」
「先ほどの戦闘でグレードが932になりました」
「えっ! そんなに上がったの?」
「はい。勝手ながらマスターが眠っている間にカスタムを済ませています。ステータスを確認してください」
「うん」
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個体情報:
使役者[ノルテア]
タイプ[イデア]
サイズ[SS]
種類名[フラッフィーロリー]
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能力ステータス:
グレード[932]
戦闘力[142449]
HP[476]
FP[506]
攻撃力[471]
防御力[471]
抵抗[483]
速力[485]
幸運[4665]
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ステータス補正値:
強度[1]
知能[4]
制御[1]
敏捷[2]
耐性[1]
機運[933]
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異能スキル:
[吸収][隠蔽][解析Ⅱ]
[生育]NEW
[念動力]NEW
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「強くなったね」
「何をおっしゃっているのです? ゴブリン程度の能力しかないではありませんか」
「え? ゴブリンはそんなに強いの?」
「強い? これが? いいですかマスター。はっきりと申し上げておきます。貴方の認識は間違っています。今の貴方はスプリスを手に入れたばかりの初心者シーカーと同じレベルです。つまりカスなのです。能無しですね」
「ひどい言われようだね!」
やっぱりオルタだ。ボクに冷たいし、ツンとしている。
「それよりも見てください。異能スキルに“生育”と“念動力”が追加されています」
「敵から取得できたってことかな?」
「はい。念動力は取得したものになります。1000万アルクを支払いカスタム済みです」
「生育はどうやって覚えたの?」
「グレードが300に上がったときに習得したようです。私のデーターには無い未知の能力です。詳細を分析しました。確認しますか?」
「うん」
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〈スキル名〉[生育]
〈説明〉生物の生育を促進することができる。
〈強化〉[育成Ⅱ]微生物促進が習得できる。
500万アルク必要。
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「変な能力だね」
「さすがはマスター。温厚な見た目通りの潜在性を発揮していますね」
「それ褒めているの?」
「いいえ。解釈は自由です」
「今はっきりと馬鹿にしたよね!」
何に使う能力だろう。用途が思い浮かばない。
「次の報告です。先ほどの戦いで1ヴァイスと3328万アルクを得ています。持っていた分と合わせ、1ヴァイスと6132万アルクを所有しています」
1ヴァイスは1億アルク。ヴァイスは桁違いのアルクという意味になる。
「潤ってきたね」
「はい。さっそくスキルの強化に使用しますか?」
「そうだね」
できれば手に入れた念動力を強化しておきたいところだ。攻撃手段の確保は重要案件だからね。
「念動力の異能をⅢにできるかな?」
「可能です。3000万アルクが必要になります」
「強いスキルはアルクの消費が多いよね。貯めた分が無くなっちゃうよ」
「これが強いのですか? ご冗談を……」
「今だけだよ。スプリスが進化したらもっと強くなるんだからね」
「夢物語です。取らぬ狸の皮算用。机上の空論とも言いますね」
「そうだよ! 弱いよ! でもボクの中では最強なんだからね!」
「念動力を本当に強化するのですか?」
「スルーかよ。ああそうだよ。さっきも言った通りⅢにしてよ」
「負担が大きくなることが予想されます。プライベートルームに戻ってから行うことを提案します」
「だったらそうしてもらえるかな?」
「了解しました。さっそくアルクをお預かりします」
「うん、お願い」
それにしても運が良かった。ボスエネミーとは一度しか戦うことができない。だというのにスキルを手にすることができた。これで戦いの幅を広げることができる。
「もう一つ報告があります」
「今度はなに? いい話かな?」
「いいえ。この先の層へ行くための転送装置が見つかりました。先ほど解析した結果、イデアオンリーフロアが適応されています」
「えっ? そうなの? ボクしか行けないってこと?」
「そうなります。ですが、ご安心ください。私はラボで待機し、マスターをハッキングするつもりです。もしも危険になった場合には、強制転移プロセスを実行します」
「そのハッキングっていうの、やめてよね! ボクがオルタに洗脳されたように聞こえるじゃないか!」
「間違ってはいません。正しい表現です。言い換える必要はありません。無駄ですよ。むしろハッキング程度で済んでいることに感謝してください」
「怖いこと言うなよ!」
次の層から索敵やマッピングのサポートが受けられなくなるのか。
少し怖いけど仕方がない。少しずつ慎重に探索していこう。
「報告はもう無いかな? 無いなら今後の予定を考えたいんだけど」
「いいえ。最後にもう一つあります」
「その言い方、嫌な予感がするんだけど……」
「はい。と言ってもあくまでも予測です。実はマスターにラブレターが届いています」
「前置きはいいから早く教えて」
「このフロアの管理者と名乗る者からマスター宛に動画メッセージが届いています。どうやらプロテクトがされているようで、イデア型のスプリスを持つ貴方だけに開示されているようです」
「どうやって見るの?」
「メッセージを転送します。ウインドウが開かれるので、その後の操作をお願いします」
「分かった。――あっ」
画面表示と共にメールが着信する。
内容はこうだ。私たちに敵対する者へ。君の求める者はここには無い。それでも先へと進もうというのならば、“ここ”にアクセスして欲しい。
ここという文字がハイパーリンクになっている。
ボクは“ここ”という青い文字に白い手先を当てる。すると、新しいウインドウが表示される。
スプリスから感応体に戻れるよね? 白い手って何なんだよ!




