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11.アースバング戦その二

 前回のあらすじ。

 突然現れたアースバング。現世より数段強いことが判明する。ノルテアはFPを消費させる作戦に出る。

 攻撃を打たせ力を削ぐ。激しい攻防の末に、戦いは続いていく。

 果たしてノルテアはどうなるのでしょうか?

 書見のほどよろしくお願いします。

 反撃が無い。これはFPが尽きたに違いない。空中を闊歩するボクは地面に下り敵と対峙する。


「これならどうだ!」


 きっかり三時間が経過した。何度目になるか分からない解析を使い、敵のステータスを確認する。


―――――――――――――――――――――――

 個体情報:

 種類名[アースバング]

―――――――――――――――――――――――

 能力ステータス:

 グレード[8532]

 戦闘力[13030324]

 HP[10000/10000]

 FP[1/5500]

―――――――――――――――――――――――


「やったぞ!」


 残り1だ。念動力が使えなくなっている。


 ここからが勝負だ。防御力が21000の壁を破り、攻撃を通さなければならない。


 まずはけん制だ。敵の背後に移動しつつ吸収撃を貯め光る弾を作り出す。そのまま背後に回り込んで巨体の中心に打ち放つ。


「やっぱりな」


 フォースが四散した。おそらく耐性が高すぎるのだろう。攻撃が通じない。


 アースバングがのっそりと体を動かし半回転した後にボクと対面する。


 遅いといっても油断ができない。近づけば“何かしらの攻撃”が来る。


 ボクは迷わず直進し、正面からぶつかっていく。吸収撃を貯め込み顔面前にその光を浮かばせる。


 次の攻撃は何が来るのだろう。


 ゲームでは回転撃とバンカースパインがアタックアクションとして用いられていた。回転撃は横に流れる体当たり。バンカースパインは体から一本の太いとげが突き抜けてくる。


 どちらが来ても対処は可能。問題は別の技を使ってくる場合だ。ボクはダブルジャンプで一直線に加速移動していく。


 赤い瞳の顔が少し傾く。回転撃の兆候だ。ボクは直感で素早く反応し、フォースを足にダブルジャンプで垂直に飛び上がる。


 回転撃の回避は苦手な部類。ジャンプアクションの高さがシビアで敵の巨体に体が触れそうになる。モフモフの足先に風が流れてくる。少しのタイミングも外せば大怪我に繋がるはずだ。固い表皮の突起に当たれば一発で人生が終了するだろう。


 風圧がすごい。砂が舞い上がり煙のように散らばっている。ボクの小さい体が吹き飛ばされてしまうかもしれない。そんな恐怖を覚え、ジャンプアクションの慣性に身を任せる。


「よし」


 避け切った。自由落下するボクはそのまま吸収撃を巨体に押し当てる。


 すると攻撃が通り巨体が反り返る。予定通りクリティカルヒットになった。威力が10倍になるクリティカルヒットは、ダメージを必ず通す性質がある。その反動を利用しフォースを全面に出し背後にステップを踏む。そのまま距離を稼ぎ、離れ際にキャンセル連撃を繰り出していく。


「うぉおおお!」


 激しくのけ反る敵の腹部に連続でフォースを打ち込んでいく。のけ反り効果の状態異常は必ずダメージが通り、およそ復帰に八秒の時間が掛かる。その間にキャンセル連撃が70から80発当てられる計算になる。


「うぉおおお!」


 隠密で時短し吸収撃を打ち続けるボクは、滞空遅延時間稼ぎの効果を利用しフォースを器用に使い、空中闊歩。次の攻撃に備え壁際までバックステップを踏み離れていく。


 実はこの攻撃も公式認定のプレイヤースキルになる。確定クリティカルと呼ばれ、攻撃を避けたタイミングで近接攻撃を与える高等テクニック。


 カウンターと同じ原理で必ずクリティカルヒットになる。そうした応用が発動条件と云われている。


 どうやらゲームのように上手く行くらしい。こうした要素はゲームと変わらないところがありがたい。そう考えると、グランドエンディングから遠い未来の現実であるという考え方も間違いではないと思う。


 これでボクの勝利がほぼ確定した。攻撃さえ通ればこっちのもの。後はミスなく繰り返せばいいはずだ。


 敵が体勢を整え、砂を盛大にまき散らし、にらみを利かせている。


 ボクは余裕を与えることなく突撃を開始する。


 今度はバンカースパインが来る。巨大な棘が一直線に突き出される攻撃だ。予備動作は体の揺れ。ボクはダブルジャンプを利用し斜め右へと浮かび上がる。


「うおっ!」


 太すぎる。ゲームと全然違うじゃないか。


 まるで大木くらいの大きさがある。槍騎士が持つランスほどの威力だったはずなのに、グレード違いで乗用車が突っ込むレベルに昇華している。こうも変わってくると、思わず冷や汗をかいてしまう。


 攻撃は四回だ。すぐに二撃目が迫ってくる。右に連続でダブルジャンプ移動。最後の一撃はタイミングを外し、特別大きい攻撃が打ち込まれてくる。


 しかし慣れたものだ。過去の戦いで何度も熟してきたせいか、体感で身体が勝手に動いてくれる。棘の大きさに違いはあるが、今よりもSHRモードの方が難しい。物理攻撃無効が無いだけマシだ。


 避け切ったぞ。後は吸収撃を当てるだけ。ゲームと違いタイミングを計る必要がない。


 もちろんカウンターになる瞬間がある。その一秒に吸収撃を押し付ける必要がある。ゲームの場合は突出してきた棘に当てなければならないのだが、そのシビアなタイミングに比べたら屁でもない。


 敵が予想通りのけ反りで体を浮かせる。再びボクはダブルジャンプを繰り出し空中で攻撃を加えていく。


「いけぇえええ!」


 後はこの状態を維持するだけ。全ての攻撃が一ダメージになるのだが、数を重ね地道に攻めて行けば問題ない。


 こうしてしばらくボクは戦いを続けていく。


―――――――――――――――――――――――

 個体情報:

 種類名[アースバング]

―――――――――――――――――――――――

 能力ステータス:

 グレード[8532]

 戦闘力[13030324]

 HP[4982/10000]

 FP[1/5500]

―――――――――――――――――――――――


 HPが半分以下になった。バトルリミットナインまで五時間以上も余裕がある。十分に勝利を狙えるはずだ。このまま押し切れば時間内に倒せる。


「よし」


 回転撃が大きく反れる。おかげでバックアタックチャンスをつかむことができた。


 バックアタックはフロントアタックよりもダメージが大きくなる。クリティカルヒットの威力も高く、のけ反りにブレイク効果が付き、ダメージが通しやすくなる。これだけ防御力が高いとダメージは変わらないが、ブレイク状態によってのけ反る時間も長くなり、その分ダメージ数を増やすことができる。


 運が良ければ混乱が付く。混乱中は守備力にも影響を与え、必ずダメージが通るようになる。上手く行けばさらに数十秒間のアタックチャンスが訪れる。


「当たれぇええ!」


 いつもの吸収撃。確定クリティカルにするため近接戦を仕掛けていく。敵の背後に向け落ちるように体当たり。


「決まった――え?」


 アースブロック、だと?


 突然目の前が輝きボクの攻撃を弾く音が響く。遅れて蜂巣柄の模様が煌めき、フォースの反動をボクの全身に伝えてくる。


 なぜだ。どうしてこうなった。


 そうか。FPが1でも使えるパターンがあったんだ。


 クリティカルヒットになるタイミングから外れたんだ。まずいぞ。このままだと反撃がくる。


 アースブロックにはパターンがある。対象が近接攻撃の場合消費は少なく、飛び道具と対応が違っている。


 思い出せ。何が来るのか。ここで反応しなければ死ぬことになる。


 コンマ一秒。咄嗟にボクは眼前にフォースを放ち、ダブルジャンプを試みる。


「うぉおおお!」


 背後に飛んで敵の追撃に備える。予想の通り敵の物理攻撃が襲いくる。


「うぉ!」


 頭上から流れるように斬撃が落ちてきた。紙一重でボクは距離を稼ぎ回避する。


 立て続けに二撃が流れていった。咄嗟に動いていなかったら今ごろ死んでいただろう。


 思い出したぞ。もう一撃来るはずだ。


 ボクは地面に足を着け、そのまま動きを止める。


 四撃目は横なぎの斬り付けだ。時間差がある。おそらくそうだと決め付け、ボクは運に身を任せ丸い体を小さく地面に屈み込む。


「うぁあああ!」


 ものすごい風圧が全身を襲ってくる。何が起こったのか分からない。フォースの衝撃が背中を吹き抜けていく。


 ボクは転がるように砂地の上を滑り流される。身を起こし解析で自分の状態を確かめる。


―――――――――――――――――――――――

 能力ステータス:

 グレード[212]

 戦闘力[7996]

 HP[15/116]

 FP[87/146]

―――――――――――――――――――――――


 危うく死ぬところだった。余波でHPの九割が消失した。


 体中が痛い。全身が打撲したような気がする。幸いにも動きに影響はない。戦いは継続できる。


 気を取り直し戦おう。だが次はない。体勢を整え敵に突撃を仕掛けよう。


「このぉ!」


 バックアタックを狙うのは止めよう。確実に正面から行こう。もう二度と同じ失敗はしない。


 ボクは残りのHPを消費させるため正攻法でダメージを重ねていく。

 気にせずバックアタックを取れよ。だってFPゼロじゃん!

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