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1.勇者の特訓

俺、長田陽斗ながた・はると、高校2年生。

今日もいつも通り、スマホ片手に塾へ向かっていた――そのはずだった。


でも、急に視界が真っ白になって、気がついたら…


「ここ、どこだよ……」


どう見ても、異世界だ。これが異世界転生というやつか?

まさか現実にあるなんてなあ…。


「来たか、勇者よ!」


「はい!? ……え? 俺ですか!?」


俺を指さして、国王を名乗る男が叫ぶ。


「そなたこそ、勇者に相応しい!魔王を倒して、世界を救ってくれ!」


「ちょ、ちょっと待って!? 塾行く途中だったんですけど!? 英語の小テストとかあったんですけど!?」


「――というわけで、魔王アリスを倒していただきたい。」


「急展開すぎるだろ!? 俺の話、聞いてた!?」


その後、何を言っても聞き入れてくれなく、俺はしぶしぶ魔王アリスを倒すことを承諾した。


「さすが勇者である!ーーそなたにしか、魔王アリスは倒せん。よろしく頼んだ。」


「はぁ……。」


勇者って剣で戦えばいいの?俺、剣とか持ったことないんだけど。


「そなたには、魔王を倒すための協力な仲間を紹介する。まずは聖騎士、リリス。リリスは真面目で剣の腕も確かだ。」


リリスと紹介された、長い金髪をポニーテールにまとめた強気そうな美少女が俺の前に立つ。


「こんなのが勇者?本当に大丈夫?……足ひっぱらないでよ。」


ファーストコンタクトは最悪だ。


「次に、魔導師のアリシア。この国で1番の魔導師だ。」


アリシアと紹介された、肩くらいの長さの青い髪のおとなしそうな美少女が俺の前に立つ。


「アリシアです…その、よろしく…。」


緊張しているのだろうか?

声が小さくてよく聞き取れない。


「勇者には、この2人と一緒に旅をしてもらい、魔王城を目指してもらう。魔王城に行く前に、旅をしながら半月ほど訓練をしてもらう。訓練の指導員は、2人にお願いする。」


「なんで私が……」

気だるそうに呟くリリス。


「が、頑張ります…」

自信がなさそうなアリシア。


こうして、訓練という名の旅が始まった。


「いい?剣の振り方はこう。…だめ、全然だめ。力が足りない。あんたそれでも男?……なんでこんな奴が勇者なのよ……。」


訓練1日目。午前中のリリスの剣の訓練はあまりにもハードだった。

俺、今まで剣なんて持ったことないんですけど?


「まず、構えがおかしいの。こんなんじゃ力、入りにくいでしょ。」


そう言ってリリスは俺の背後に回り、剣の構えから教えてくれた。

胸が当たっていて、剣の構えどころではない。


「あの……リリスさん、その…む、胸が…」

「……………死ねば?」


怒られてしまった。


午後からは、アリシアとの魔法の訓練だ。


「ねえ、そもそも俺って魔法使えるの?この世界はみんな魔法が使えるものなの?」


「いいえ、魔法は魔法の適正がないと使えません……。でも、勇者様には、魔法の適正があります。少し特訓すれば、簡単な魔法は使えるようになるはずです。」


魔法を使うには、魔力を込めて詠唱をする必要があるとのことだ。

まずは、魔力のこめ方を教えてもらう。


「えっと…私がこれから、魔力を込めます。魔力を込めると、胸の当たりが熱くなるんです。この感覚を共有したいのですが……その、私の胸、触ってもらえますか…?」


何を言ってるんだ。痴女なのか?


「え、胸を…触る…?」


「あの、変な意味ではないんです!ただ…この感覚を共有するには、実際に触ってもらわないとわからなくて……。」


よくわからないが、わかった。


「じゃ、じゃあ…失礼します。」

見た目以上に豊満な胸に触る。や、柔らかい…。


「は、はい……。じゃあ、魔力を込めますね……。」


熱い。これが魔力か。

不思議な感覚だ。


「では、やってみてください。胸の当たりに力を込めて。」


俺の胸が熱くなり、胸のあたりが光る。

どうやら成功したらしい。


「一発で成功するなんて…すごいです!」


アリシアはぱっと笑顔を見せた。さっきまでとは違って、どこか安心したような、そんな表情だった。


「ありがとう、アリシアのおかげだよ。感覚、なんとなく分かった気がする。」


「よかった……私、役に立てたみたいで……。」


ぽつりと呟いたその声には、ほのかな嬉しさと自信がにじんでいた。


それからしばらく、俺はアリシアと魔法の基本を反復練習した。火の玉を灯す程度の簡単な魔法ではあったけれど、自分の中に何か新しい力が芽生えているのを感じた。


夕方。訓練を終えた俺は、焚き火を囲みながらリリスとアリシアと並んで夕飯をとっていた。


「……今日の訓練、悪くなかったわね。私の特訓についてこれるなんて、なかなかやるわね。」


リリスがぽつりと呟く。


「お、それって褒めてくれてるのか?」


「別に褒めてない。――ま、ちょっとだけ見直しただけよ」


リリスが赤くなった頬を隠すように顔をそむけた。


その仕草が、なんだか少しだけ可愛かった。


「私も、楽しかったです……。また、魔法の訓練、しましょうね……?」


アリシアが控えめに微笑む。



こうして、俺たちの特訓1日目が終わった。

最初はどうなることかと思ったが、2人とならうまくやっていける…かもしれない。

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