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プロローグ
「やっと来てくれたのね、陽斗くん」
玉座の上。黒いドレスを纏った美女が、ドレスと同じ色の黒い髪をなびかせて微笑んだ。
「魔王アリス…いや、天音さん…」
「ふふっ…この世界ではアリスって呼んで?それとも、昔みたいにお姉ちゃんて呼んでもいいけど?」
俺が小学生のころ、マンションの隣の部屋に住んでいた5歳上の天音さん。
美人で優しくて、俺の初恋の相手だ。
でも3年前のある日、天音さんは突然居なくなった。
引っ越したと聞いていた。
そこからずっと、会うことはできなかった。
ずっと会いたかった天音さん。
まさか、天音さんとの再会が異世界になるなんて。
そして、俺が勇者で天音さんが魔王だなんて。