5月8日
大学の授業は退屈だ。
興味を持ったからプログラミングの講義をとったが、これが大変分かりにくい。
教師自作のテキストが酷い出来だ。
コードや文法の説明はほぼなし、あったらあったで不十分。
しかもそれを見て用意された課題を自ら行う、自主学習とほぼ変わらん講義だ。
質問をしたとて分かりにくい、普通に別の参考書を書店で買った方がよかったかもしれん。
恐らく、あの教師はこちら側が何故分からないのかを理解できないタイプだ。
自分の頭では理解出来てるから、理解出来ない人を理解できないのだ。
故に細かな説明が抜けるのだ、とるんじゃなかったなこの講義……。
今日出てきたのは、ナルシストと同様に準レギュラーなやつ。
特にこれといった特徴のない、普通な男って感じなやつだから、そのままだが「普通の男」って呼んでる。
年齢は俺と同じくらいに見える、20代だな。
どんなノリにも応えてくれるけど、これといって目立つところがない大学生って印象だ。
だから……印象に残りづらくて服装などを覚えてない。
だが、こいつと話すのは嫌いじゃない。
「今日は随分退屈そうだね」
ふと話しかけられて、無駄に頭を使って疲れたと返した。
「うんうん、教えるのが下手な人から汲み取るのは疲れるよね」
ああそうだ、分からない者に伝わらなければ、それは言ってないに等しい。
「だが、君は課題をよくこなしている。すごいよ君は」
最近のChatGPTというものが優秀なのさ、プログラミングに関してはアドバイスが良い。
「ともあれ、それは君の力になってる。君自身も優秀なのさ」
ありがと……ところで、聞きたいんだが。
「なにかな?」
なんで、俺の頭の中に皆いるんだ?他人にはない、普通じゃないことなんだろ?
「……君は、右手について覚えているかな?」
右手?何の話だ?
「そうか……まだ気づいてないか」
なにに?
「すまない、もう時間だ」
時間って?
「もしまた会えたなら、その時話そう」
そう言って、消えてしまった。
これ時間制限とかあるのか……ごまかされただけ?
まあとりあえず、なにか、先に進めた気がする。
右手……右手か、身に覚えがあるような、ないような。
とにかく、その右手が重要なんだろう。
隠し事があるにせよ、ピースを集めて繋げれば……。