5月4日
今日のバイトで、店長に相談をしてみた。
俺が割引商品の広告を設置する際に使うL字ハンガーの置き場所、低い位置にしてほしい。
目測で180cmくらいの棚の、一番上にまとめて置かれている。
整理整頓と言われているが159cmの俺が、あんなに高いと持っていくのはまだしも、戻すのに一苦労。
「踏み台使えば届かないことはないですが……」
って譲歩したのが良くなかったのか、俺の相談は却下された。
その下の段には置けず、整理整頓を重視するため箱にまとめることも無理だと。
「ハオリ君には踏み台でがんばってもらって」と言われた。
店長にとっては数分の手間かもしれないが、踏み台による作業がなくなればその数分早く俺は残業を終えて帰れるのだが。
その分残業代も減るからウィンウィンというやつではないのか。
言いたかったが言えない、アルバイトの限界である。
まあ、来年には就職してるし、それまでの辛抱だな。
今日頭の中に出てきたのは少年だった。
部屋でゴロゴロしてた時に「ねぇねぇ」と響いた。
え、誰……と咄嗟に思った時には、10歳くらいの、水色のジャンパーを着た少年がいた。
「はやと」
ハヤト……ああ、名前ね。
「ねぇねぇ、大人っていつなるの?」
え、大人……大人に?その内なるよ。
「ねーえ!いつ!?」
うーん、子どもになりたいって思った時……かな。
「……それっていつ?」
人による、って答えは求めてないよな。中学生くらいかな。
「大人なの?」
さあね、でも少なくとも子どもではないかも。
「大人ってたのしい?」
それも人による……うーん、分かんないかな。俺も本当に大人になれたか、分かんない。
「どうしたら、たのしいおとな、かな?」
うーん、ずーっと楽しいは無理かな。苦しいこともあるし、辛いこともある。でも、それでいいんじゃないかな。
「つらいの好きなの?」
いや、辛いのがなかったら、楽しいも嬉しいも分からないんだ。だから、きっとどっちも必要なんだよ、同じくらいね。
「……」
難しかったかな。
「ううん、ありがとう」
未来をちゃんと考えてるんだね、偉いね。
「えへへ」
頭でも撫でてやろうと思ったところで、ハヤトは消えた。
ところで、この俺の頭の中の住人の頭って撫でられるのだろうか。
今まで触れようと思ったことすらなかったが。
なんで今日は撫でようと思ったのだろう。
子ども相手だとそういう気分になるのだろうか。