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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

愛し愛されることを知ったのは。

作者: 熊ゴロー。

残酷な表現、性的表現があります。ご注意ください。



 政略結婚をした。顔良し、家柄良しの次期侯爵。性格は穏やか…というより、ヘタレっぽい気がするのよね。


 貴族だからいつかは結婚しなければいけないのは分かっていたけど、結婚をしたくなかった。いつか家を出て、仕事をして生きていこうと考えていた。


 それをいつの間にか父に知られていたようで、逃げ出せないように沢山の侍女と護衛をつけられた。次期侯爵夫人になるのだからと勉強量も増えて、外出も出来なくなった。



 逃げ道はない。このまま結婚して、子供を生んで一生を終えていくのね…



 何もかもを諦めたフリをして、大人しく過ごしていると、私が従順な人形になったと思ったのか、結婚の日取りを早めた。何もかもを勝手に決める父に、ハゲてしまえと何度も祈った。


 結婚式が始まる前に父が言った。「愛されようと思うな。政略結婚なんだ。愛なんてなくていい」と、親として最低な人だ。ハゲてしまえ。





 そして、ついに結婚式を終えた夜。


 

 寝室にて、初夜だからと薄いいやらしい下着姿で待たされていると、夫となった男に流行りの『他に愛する者がいる!』宣言をされた。ドヤ顔なのがムカつくわ。



 「だから君を抱くことは出来ない。彼女を傷付けたく…って、あ、ちょっ」



 慌てる夫を押し退け、部屋を出て、義父の寝室まで走っていく。



 よし!こいつのせいなんだから離婚に持ち込める!



 貴族だから仕方ないと諦めて結婚したけれど、彼も同じ気持ちだったとは!ラッキーだわ!離婚よ、離婚!ほんの少し、結婚に期待してたけど、馬鹿みたい。




 ワクワクした気持ちで義父の寝室の扉をノックする。暫くして、ノロノロと扉が開いた。眠そうな顔をした義父が顔を出す。


 

 あら、可愛い。目をしょぼしょぼされてる。



 「お義父様!夫から私を抱けないと宣言されましたわ!」



 嬉しそうに報告してしまったわ。いけない、悲しげな顔をしなきゃなのに!さぁ、泣きそうな顔をするのよ!まずは、記憶から悲しかったことを思い出して…


 

 「…それでですね…離婚を…」



 悲しげな顔を作りながら見上げると、恐ろしい顔をされて、私の腕を掴み、部屋の中に引きずり込んだ。



 「な、なんて格好をしているんだ!そんな姿で、ここまで来たのか!?」



 あっ…そうだった。離婚出来る理由が出来たと喜びで忘れてしまっていたわ。透けている、いやらしい下着姿だったことを思い出す。


 義父は私にガウンを渡して顔を背けた。


 やだ…恥ずかしい…私ったら、なんて事をしてしまったのかしら。ガウンを羽織り、ちらりと義父を見る。


 険しい顔をしているけど、頬が赤いわ…可愛い…40歳くらいなのに可愛いと思ってしまうわ。



 「…仕方ない」



 「では離婚を…!」



 嬉しくなった私は義父の手を握ると、ぎゅっと強く手を握られた。


 あ、あら?


 そのまま、ベッドへと放り投げられてしまった。


 ど、どういうこと!?



 「お、お義父様…?」



 「私と夫婦になれば、問題ないな?」



 羽織っていたガウンを取られ、私をじっと見つめてきた。慌てて体を縮こまらせて、少しでも見えないようにする。やだ、見ないで!



 「お、お待ち下さい!」



 「離婚した所で、すぐに再婚させられるだろう?次は後妻か、ろくでもない男の元だろう。それならば、私はどうだ?身分も金もある。子を授けられる」



 まずい。ガウンを奪われてしまったわ…


 肩をいやらしく撫でられて、びくりと震えてしまう。更に太腿に手を置かれると、体が強張った。



 「顔も悪くはないだろう?体も鍛えている」



 そ、そうなのよ。夫よりも美丈夫。筋肉も程よく付いてるし…って、そうじゃないのよ!じっくり見てはいけないの!魅力に抗えなくなるわ!


 距離を取りたくて後退りするも、太腿を強く掴まれた。



 「年は、どうにもならないが、それ以外ならアリだろう?」



 後悔させない、と義父の薄い唇が迫ってきた。


 

 そして、甘ったるい愛の言葉と共に抱き潰されてしまった…





 翌朝。痛みでベッドから出ることも出来ず、義父の寝室で一日過ごす羽目になった。体中に痕をつけられたこともあり、人前に出たくない…


 義父も使用人に頼まず、自ら私のお世話をしてくれた。恥ずかしさもあるけれど、痛みで動けないし、こうなったのも義父のせいなのだから…甘えておこう。



 「…お義父様、離婚は…」



 「息子と離婚して私に嫁げばいい」



 それは醜聞になるのでは…?息子から父親だなんて、ふしだらな嫁だと思われてしまうわ。社交界で笑い者になる…



 「悪意のある者達など、蹴散らしてやるさ。我が侯爵家を敵に回せば、どうなるか…分からせてやればいい」



 怖いお顔をされた後、私の首筋に吸い付いた。また痕を付ける…!病気みたいに沢山付けたのにまだ足りないのね!



 「お、お義父様…」



 「違うだろう?」



 「だ…んな様」



 「良い子だ」



 何度も食らいつくようなキスをされた。唇を甘噛みされ、舌を吸われ、私の思考は真っ白に染まった。


 まるで、愛し合ってるみたい…でも、お義父様は私を可哀想だと思って娶るのよ…愛ではないわ。


 それでも、少しでも期待してしまう。馬鹿よね。






 それから数日が経った。お義父様…いえ、旦那様は王宮へ仕事のついでに離婚届を出したこと、旦那様との婚姻届を出したことを告げられた。


 …私、どんどん流されてる…離婚して自由になるんだなんて甘い夢を見ていたはずなのに。


 私の薬指から指輪を抜き取り、放り投げると、新しい指輪を嵌めた。これ…旦那様との結婚指輪よね。



 チラッと顔を見ると、頬を赤く染め、目を合わせてくれない旦那様。


 可愛いのよね…絆されてしまいそう。



 「これから時間をかけて愛を育むのは、どうだろうか」



 「…愛し愛されるの、夢でしたの」



 そっと旦那様の手を握り、目を合わせた。


 政略結婚でもせっかく結婚したのだから、愛し合いされたいとほんの少しの淡い希望を持って嫁いできた。けれど、あっという間に希望は打ち砕かれた。


 父は知っていたのね。前夫に愛する人がいることを。だから、あんなこと言ったのね。ハゲて二度と生えなくなればいいのに。



 けれど、まさか義父と再婚するとは誰も想像していなかっただろう。



 その知らせを受けたのか、数日後に父が慌てて屋敷にやってきた。



 「侯爵!どういうことなのです!?」



 「手紙に書いただろう。私と再婚した。あぁ、結婚式はやり直す予定だ」



 私と密着して、仲良しアピールをする旦那様。私の頭に何度も口付けるのはやめてください…恥ずかしいっ!


 

 「何故、再婚ということに?!」



 「愚息が後継ぎから外れたものでね。親戚から新たに探すにも時間がかかる。彼女も結婚してすぐに離婚となれば、再婚も難しい。お互いの利害の一致だ」



 後継ぎ…私達の子供にするのね。というか、あの前夫が後継ぎじゃなくなったってことは。平民になったのかしら…あの夜から姿を見ていないから、恐らく…



 「必ず彼女を幸せにする。私が死んでも不自由なく生きていけるよう手配もしてある。まぁ、長生きする予定だ。当分、先の話になる」



 絶句した父は、もう何も言えない、言うことが出来ないのか黙って帰っていった。



 「旦那様、私のこと好きなのですか?」



 「そう見えるか?」



 「先程のお言葉、どう聞いても私が大切だと言っているようなものです」



 「そうか。だが違うな」



 え…そ、そんな。だって、あんなに体を重ねているのに!?子作りしまくっているのに!?



 信じられない!



 すると、旦那様は優しく微笑むと私を抱き上げた。





 「愛してるんだろうな」





 …ずるいわ。


 きっと体を重ね続けたせいなのだろうけど、私だって旦那様を愛しているのかもしれない。


 長生きして欲しいし、子供も欲しい、浮気しないで欲しい、ずっと一緒にいて欲しいと欲が溢れてしまう。


 政略結婚だから。結婚したくなかったから。愛なんて求めちゃいけない。と呪いのように纏わりついていた言葉達が、今、旦那様によって消えかけている。



 「…絶対、長生きしてください」



 「あぁ、頑張るさ」















 



 どうしてこうなった。


 他に愛する人がいる為、裏切れないんだと白い結婚をしようと言いかけると、書類上の妻は突然部屋を出ていった。


 …さすがに初夜に言うべき言葉じゃなかったよな。けれど、政略結婚なんだ。愛なんてないんだし。


 追いかけても仕方ないしなと、この時の僕は何も考えずに部屋へ戻ってしまった。今だから言える。ちょっと待て、追いかけろと。



 翌朝、いつも通りに起きて朝食を済ませて廊下を歩いていると、何故かワゴンを押す父がいた。



 「ち、父上…?」



 ちらりと僕を見て、何も言わずに去ろうとするので、もう一度読んだ。面倒くさそうな顔をして立ち止まってくれた。



 「何だ」



 「何故、ワゴンを…?」



 ふっと嫌な笑みを浮かべたかと思うと、彼女がな…と言いかけて、恥じらうような表情を浮かべた。え…何…?



 「激しくしてしまったからな」



 激しく…?



 「あぁ、そうだ。お前の願いを叶えてやることにした。他に愛する者がいるそうだな」



 「え、あ…え…?」



 「平民の女だったか。いいぞ。準備してあるからな。門へ行け」



 父上が認めてくださった!


 何も考えずに門へと向かうと、馬車が用意してあった。御者が「荷物等は後ほど。さぁ、お乗りください」と急かした。


 この時に戻れるのなら。


 妻の元へ行き、すまなかったと謝っておけば。


 普段から厳しい父上が、優しかった理由を怪しんでおけば。


 『激しくしてしまった』という言葉をよく考えておけば。



 僕は僕でいられたのだろう。



 














 「どこで育て方を間違えたものか…」



 嬉々として馬車に乗り込む愚息。


 もうお前はこちらに帰ることも出来ない地獄へと向かうだけだ。


 貴族の政略結婚を甘く見たな。平民の女を愛人にしておけば、まだ許せたものを。あぁ、だが今となっては良かった。


 義娘は…いや、妻はもう私のものだ。子作りを頑張らねばならんな。また一から後継ぎを育てるのは大変だが、仕方ない。


 愚息は平民の女と共に消えてもらう。死ぬまで苦しんでくれよ、と願いながら出発する馬車を遠くから見送った。





 妻が庭で散歩をしているのを見つけ、背後からこっそり近寄り、抱きしめた。



 「だ、だ、だっ、旦那様!」



 顔を赤らめ、慌てる姿を愛おしく思える。


 あぁ、これが愛なのだな。


 利益を考えて再婚でいいだろうと純潔を奪った。逃げられないようにしようと。


 体を重ねると相性が良かった。あの社交的な微笑みが崩れ、快楽に溺れた表情に酷く興奮した。



 若返ったかのように抱き潰しても足りない程。


 もう前の自分に戻れる気がしないな。


 


 愛に飢えている妻に、愛の言葉を囁くと喜びもするが、疑ってもいた。あの父親のことだ、愛など与えなかったのだろう。私もそうだったか。


 何度も口付け、強く抱きしめた。


 愚息にも、妻の父親にも渡さない。



 死んだとて渡すものか。















 酷い頭痛がする。あれ、僕は…彼女の元へ向かっていて…それから…馬車が止まったんだ。降りると……



 「さて、坊っちゃん。今日から楽しいお仕事をして頂きますよ。あぁ、お父上からはもう許可を頂いていますので」



 にこやかに、けれどおぞましさを感じさせる男が僕の前で書類を見せた。



 …娼館?男娼?どういうことだ?



 「な、なに…?」



 「貴方の恋人は娼婦として。貴方は男娼として。あぁ、お父上からは時々会わせてやってくれと大金を頂きましたので。そうですね、一日一回は会わせてあげますよ」



 まさか…父上は僕を売ったのか。


 男娼…?冗談じゃない!!汚らわしい!


 僕は愛する人としか出来ない!



 「あぁ、先にいらしてる恋人の方に会います?」



 早く会いたくて。これが現実とは思いたくなくて。


 それでも現実は残酷で。父上は僕を許していなかった。認めてもいなかった。




 案内された部屋の前で、扉を開けることが出来なかった。


 部屋から漏れ聞こえる、愛しい彼女の喘ぐ声など。


 嫌がる声ではなかった。もっと、もっとと強請る声に絶望した。


 案内人の男は、笑いながら扉を開けた。彼女が複数人の男と交わる姿を見せつけられた。



 「やぁっ…!ち、違うの…あぁっ」



 僕の姿を見て慌てるも、男達は止まることなく彼女を…



 汚らわしい。



 近くに落ちていたワインの瓶を拾い、彼女の頭に勢いよく振り下ろした。











数年後。







 「あらあら、親子で泥だらけだなんて。一体、何があったのですか?」



 旦那様と幼い子供達が体中、泥だらけになっていた。確か今日は庭で何かするとか…



 「泥で遊ぶのが楽しいのだと言われてな…」



 「ふふっ。楽しかったようですね」



 「次はお母様も一緒に遊びましょう!」



 「お母様!泥も良いけれど、お庭でお茶会をしたいわ!皆でっ」



 「あら、いいわね。まずはお風呂へ入ってきなさい。お茶の準備をしておくから」



 「「はーいっ」」



 子供達が侍女達と一緒にお風呂へ向かうのを見届けた後、旦那様にもお風呂へ…と言いかけると、抱き上げられた。



 「泥を綺麗に落としたいんだ。手伝ってくれないか?」



 「だ、旦那様っ。もう…まだ明るいのにっ」



 「さぁ、愛しい妻よ。隅々まで洗ってくれ」



 子供達が生まれても旦那様からの溺愛は止まらず、子供達の前でも愛を囁いてくる。


 数年経って、嫉妬も執着も酷くなっているけれど、愛されているんだと思うと喜びが溢れる。



 旦那様は浮気もせずに、毎日のように私を抱く。どんどん若返っているのかしら?また子が出来そうだわ。



 「ねぇ、旦那様。私、貴方を愛してるの。誰よりも」



 蕩けるような笑みを浮かべた旦那様は、私もだと口付けてくれた。



 愛とは素晴らしいものだと、ようやく愛し愛されることを疑うことなく、受け入れられた。



 愛しい旦那様、どうか貴方が亡くなるその時、私も連れて逝ってください。



 

 

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