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散文

小さな丘

作者: 永井晴


(ある川沿いの小さな丘で)


一羽の可愛い小鳥が、ある梢の上で風を待っていました。

遠くには林があって、そこでは黄色い羽の鳥たちが歌います。


ピューピューピュー、


なるほど、何も意味はわかりません。ただ何処か幸せそうな旋律です。


ピュー、ピュー、ピューピューピュー、


すぐに空へと消えてしまう、心細いような声を馬鹿馬鹿しく懸命に出し続けています。


小鳥は自分がそういう風になるのを想像してみました。

(ピューピュー、ピュー、ピュー、ピ、ュー、ピ、ュ、ー……)


川のほとりで戯れる鳥たちもいました。

青い光に慣れてしまった目玉で、川に反射した裏返しの出鱈目な世界を見ているのです。

ここの鳥たちは歌います。


グヮーグヮーグヮー、


ガラガラとした声は、胸筋を膨らませて厳しい顔をしています。川に剥がれ落ちていく、鳥たちの羽も滑稽に見えてくるほどです。


グヮー、グヮー、グヮーグヮーグヮー、


誰もいないところへ威嚇をするような小さな声が聞こえます。


小鳥は自分がそういう風になるのを想像してみました。

(グヮーグヮー、グヮー、グヮー、グ、ヮー、グ、ヮ、ー……)


上空には大きな鳥が一羽、高みの見物をしています。

意味もなく大きく円を描くように飛ぶのです。

小鳥はその大きな鳥に見入りました。とても静かな様子でグルグルと空を飛んでいます。

しかし、暫くしてから突然に、大きな声を一声。


キュィーーーィイ!!!


それからいやらしく大きな羽音を立てながら何処かへと飛んでいきました。

小鳥はびっくりしましたが、もう大きな鳥の姿を目にしたいとは思いませんでした。


小鳥は自分がそういう風になるのを想像してみました。

(…………、…………、…………、…………、

キュィーーーィイ!!!

…………、…………、…………、)


風が来るのを待っていたら、もうお月様が見え始める時間になってしまったので、今日はもうお家に入ることにしました。

夜になってもうるさい声が絶えず辺りに響きました。

やがて朝が来ても、小鳥はまた梢に立って風を待ちました。

朝日が綺麗に森、川、空を照らします。

大地には微風が吹きました。

小鳥の趾は一つ前に出ます。翼も疼いて震えます。

しかしよく思えば、まだ寒い時間です。

グズグズしているうちに、微風も消えてしまいます。

小鳥はまた風を待ちました。

黒く澄んだ目には、段々と何も映らなくなりました。


ーー暖かい陽が丘を差します。また一日が始まるのでした。


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