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それから

部屋に入ると、アオイは崩れるように胸元へと飛び込んできた。

「…っイト…」

それを受け止めて引き寄せながら、それでも、あと一滴の迷いが、イトの手を止める。

いつだって、決断してきた。

それが、どんな痛みを伴うことであっても…それが己の痛みでも、他人の痛みでも、イトは常に決断を下す側の人間であろうとしてきた。

迷うことなど、愚かとさえ思っていた。

決断しなければ、何も変わらない。

迷うだけでは、何も動いていかない。

この世界に足を踏み出した時から、決断を下し、覚悟を決めてきた。

だが、今、イトは迷いを捨てきれない。覚悟を決めきれない。

アオイを手に入れる。

本当に?

本当に手に入れて良いのか。

思い出せ。

イトヨウとは、どんな男だ?

「イト…お願い、私を拒まないで」

迷う男を蔑むこともなく。

決められない男を詰るでもなく。

アオイはまっすぐにイトを見た。

「…私を…受け入れて…」

細い指が、イトに伸びる。

いつもは衣を握るために伸ばされる指先は、今は衣を紐解くために。

そして、僅かに現れるイトの浅黒い肌に、触れてくる白い手のひらは震えていた。

「アオイ」

健気な、それでいてどこかに淫らさを含むそれ。

拒みたい訳ではない。

受け入れて欲しいのはイトの方こそ。

イトはアオイの頬を両手で包むと、顔を上げさせた。

僅かに頬を染めながら、それでも、アオイはやはりその真摯な瞳でイトを射抜く。

「俺は、人を殺すことで生き延びてきた…滅ぼすことで生きながらえている」

やはり告げない訳にはいかない。

己が犯した最大の罪。

それを知っても、なお、この娘はイトを求めるだろうか。

「最初に殺したのは10の時…俺の祖父だという人間だった」

血の繋がりがあったというだけの者だ。

僅かな情もなかった。

しかし、イトが最初に命を絶ったのは、己がこの世にある根源の一つだった。

イトの告白に、アオイは僅かな驚きの表情を見せはした。

だが、その視線を揺るがせはしない。

静かにイトの言葉の続きを待つ。

「神伽の司祭だった男だ…俺の母親は、神伽の巫女になる女だった」

母親は知らない。

一度として会ったこともない。

その女のことで知っているのは、既にこの世にはいないという、たった一つの事実だけだ。

「シンカ」

独特の発音は、言い慣れない者にとって声にするのが難しい。

多くの者と同じ微妙に違う響きを口にしながら、アオイの表情が記憶を辿るようなそれに変わる。

記憶の中に、その名を探しているのだろうか。アオイのように若い者にとって、それは記憶の奥深くに沈んでいるものなのか。

神伽というそれは、滅びた国の名。

もっとも古い歴史を持つ国の一つだった。

神に仕え、その宣託を人々に告げる者達が集う聖地として、かつては人々の崇拝を一身に受けて栄えた国は、しかし、争いが核をなす時代にあっては存在し続けることはできなかった。

もはや、人々が望むのは見えない神ではないから。

人々は、祈るだけでは救われないことに気がついてしまったのだ。

人々がかしづくのは、戦を制する軍神であり、世界を統べる現人神にとってかわった。

イトが最初に殺したのは、人々に見捨てられ、滅びつつある国に在った、一人の神の僕だった。

「俺の父親はこの姿が語る通りグレンダだ。神伽の女とどうやって巡り合ったかなんてのは知らない。だが、事実、俺は無垢でなければならない神伽の巫女となるべき女の腹から産まれて、その女は穢れた者として幽閉された。俺はその女の父親だという司祭に…」

イトは言葉に迷い「…育てられた」

結局、そう続けた。

あれを『育てた』というかは疑問だが。

誰もいない廃墟のような建物の地下。

明かりの灯されていない部屋だけがイトの世界だった。

足を枷で繋がれて。

僅かな食事でかろうじて、生きながらえさせられた。

それだけだった。

そして、あの日は来た。

「ある日、奴はやってきた」

あの日、食事を与える時にしか現れないその男が手にしていたのは、食べ物ではなかった。

「何かを叫びながら、俺に短剣を振り上げた」

イトは、本能的にそれを避けた。

生きたいと願った訳ではない。

そんなことを思う心もなかった。

命があるだけの存在は、その命を護ることだけが全てだった。

だから、足掻いた。

もつれ合い。

揉み合った。

短剣がイトの顔めがけて振り落とされ、刃先が左の面を切り裂いた。

痛みはどんなものだったか、記憶にない。

そもそも痛かったのか。

それさえも定かではない。

ただ、そこから零れ落ちた血が温かかったことだけは確かだ。

司祭は、白い衣装を紅に染めながら、再び短剣を振り上げた。

何かを叫び続けながら。

多分、一度として人を切りつけたことなどないだろう神の使いは、闇雲に短剣を振り回した。

「俺は、短剣をそいつから奪って、胸を突いた」

男は信じられないように、イトを見つめた。

その後、ずっと付いて回ることになる視線だ。

侮蔑と恐怖と。

今は慣れたそれに、その時のイトは意味の分からない脅威を感じて、胸から抜いた短剣で潰した。

胸を突かれ、両目を失い。

司祭はもがきながら、やがて動かなくなった。

「それが、最初に殺した男だ」

最初に殺したのは、肉親だった。

神に仕える司祭だった。

「兵士じゃない。魔獣でもない。神の名の元に悪魔の子を祓いに来た司祭だった」

ずっと、司祭が叫んでいた言葉。

何を言っているのかを知ったのは、ずっと後のことだ。

あの頃、イトは言葉というものを知らなかった。

『神よ!貴方のお望みのとおりこの子を滅します!』

多分、そう叫んでいた。

『悪魔の子を!』

そんなようなことも。

『どうか神伽をお見捨て下さいますな』

幾度も幾度も。

神の名と共に。

だが、神は司祭を救わなかった。

悪魔と呼ぶ、神の存在など知らない、血の繋がった子に返り討ちにあったのだ。

神などいない。

そして悪魔も。

あそこに対峠していたのは、己の国が滅びようとするのを受け入れられない男と。

本能で己を護っただけの子供。

そして、あとは歴史が語る。

神伽は滅びた。要となる司祭の一人を失った国は僅か数年でこの世界から姿を消した。

イトは、己の自由と引き換えに、一人の肉親を殺し、一つの国を滅ぼしたのだ。

「それからはグレンダとして、殺すだけの日々だった」

暗闇から光の下に出たのに。

結局、グレンダとして陰に生きることを選んだ。

そして、一族を率いる身になり…瞬く間に今度はその一族を滅亡に導くことになる。

それが最善の決断だと今でも思っている。

グレンダは神伽と同様、この時代には不要なものだった。

神の国はない。

兵の一族はない。

いずれもイトが滅亡に導いた。

多くの犠牲を払い。

そして。

「これからも殺して生きていく」

グレンダを捨ててもなお。

イトはそうやってしか生きていくことしかできない。

「…それでも…あんたは、俺の側にと望むのか?」

イトは尋ねた。

「俺といきたいと願うのか?」

アオイはイトを見つめている。

話している間、一瞬として逸らされなかった瞳は、変わらず…否、なお深い思いを込めて。

「例え司祭や他の多くの者が亡くなっても…いくつの国や一族が滅びても…貴方が生きていて良かったと…そう思っている私は…罪深いのかしら」

アオイは微笑んだ。

「…私、貴方といきるの」

そして、そう言った。

イトは突き上げる衝動を抑えて、なお言いつのった。

「一つだけだ」

そう、一つでいい。

「一つだけ約束するんだ」

イトを欲しいと言う。

イトが好き、と。

イトといきたい、とも。

今は喜びで、その言葉を受け止めよう。

だが。

「俺がいらなくなったら言え」

アオイは、言った意味が分からないようだった。

迷わずイトを見つめ続けている瞳に疑問が浮かぶ。

「あんたが望めば…すぐに、消えてやる」

いらなくなれば消える。

そう約束させて欲しい。

でなければ、執着心に囚われて手放せなくなるかもしれない。

それこそが、イトの最も恐れることだから。

今更、罪の一つや二つ増えたところで、何も怖くない。

ただ、イトの側にいることでアオイが苦しむことだけは。

それだけは。

だから、約束しよう。

「約束したら…側にいてくれるの?」

アオイの手がイトの頬を包む。

指先は、もう震えていない。

「ああ…あんたが望むだけ」

イトは答えた。

アオイが望む限り。

そう、約束する。

「約束するわ」

アオイも、またそう告げた。

「だから」

男の頬を包む自らの手に、力と勇気を込めて引き寄せる。

「だから、今は私を抱きしめて」

届く。

唇に、自身の唇を重ねる。

触れることしか知らない口付けを。

「アオイ」

イトは迷いを捨てた。

手に入れる。

誰よりも美しいこの娘を。

「…アオイ…」

アオイの拙い口付けの合間を埋めて、それを激情を煽るものへと。

深く。

熱く。

絡む。

「…っイト…!…」

アオイが崩れて座り込む。

イトは、自らの衣を脱ぎ捨て、アオイを抱き上げるとベッドにもつれ込んだ。

真っ白なシーツに包まれたベッドは、小さな軋み一つ立てずに二人を受け入れた。

結われた髪を解けば、鮮やかな金糸がシーツに広がる。

ドレスを奪えば、シーツよりもなお滑らかな肌が光を放つ。

お互いに何一つ隠さない。

アオイは瞑目するほどに美しかった。

ウスラヒに唆された男は、この美しい娘を真の天使と崇めた。

抱くことなど、僅かに思いもしなかったのだろう。

だが、イトは違う。

神などいない。

悪魔などいない。

そして、やはり天使もいないのだ。

いつだって、決断するのは己。

ここに在るのは一人の女。

神ではない。悪魔ではない。天使でもない。

だから、殺すことしか知らない男が一人救われる。

「…っイト…」

伸びる腕。

絡み合う体。

そして、イトは天使と呼ばれた娘を自らの闇へと引き込んだ。



アオイは、イトの胸に身を預けながら、そこにある傷に唇を寄せた。

反応して、男の筋肉が動く。

それが面白かったのかアオイは軽やかな笑いを零して、幾らでもある傷の一つ一つに口付けを施していく。

首筋、胸、腹…好きにさせていたイトは、小さく息をのんで、アオイのその先の行動を止めた。

「それぐらいにしとけって…また、泣かされたいのか?」

イトと繋がって、アオイは涙を溢れさせた。

痛み故かと宥めるイトに、アオイは「…嬉しい」と掠れた声で告げて、男のタガを外させた。

イトの暴走を示すように、無垢だった白い肌には情事の痕跡が色濃く残る。

抱いた身体に跡を残したことはなかった。己の標を残すことを望んだことなど一度としてない。

イトは自らの証に苦笑いを零しながら、その一つにアオイがするように口付けた。

ビクリと震えるのに、だが、アオイは「…後で…」と小さく呟く。

「…後?」

新たな跡をひと際白く思える胸元に落とすと、アオイは息をのんで背を反らした。

素直な娘は、イトの頭を自らの胸元に導くように抱き寄せて。

それでも、イトの問いにコクリと頷いた。

「後で…な」

イトはもう一度目の前の肌に唇を滑らせてから、アオイを離してシーツに深く体を埋めた。

その隣に横たわりながら、アオイが尋ねてくる。

「…少し…話をしても良い?」

イトは頷いた。

「ここは、どこ?」

ラジル邸のように堅牢な館ではない。ウスラヒの屋敷のように豪奢でもない。

だが、それなりに身分のある者が住まうべき屋敷は、随分と前に、イトがとある人物からもらい受けたものだ。

「昔…俺を雇っていた男が、報酬だと寄越した」

どういう訳かひどくイトを気に入ったようで、幾度となく配下に下れと請われもした。

決まった君主は持たない。決まった棲家がないように。

イトヨウは、そういう生き物だ。

告げると身分ある男は妙に納得したように頷きながら、どういう訳か森の奥深くにある、もの好きな貴族の別宅を一つ、イトに寄越した。

「…住む場所なんかいらねえって言ったんだがな…」

結局、受け取った。

誰も近寄らないような場所にある、こじんまりとした造りの屋敷。

イトが訪れると、何も言わず、何も聞かず、ただ最低限の世話をしてくれる無口な下男。

「案外…居心地は悪くない」

何度か、訪れた。

この屋敷をイトに明け渡した男とは、幾度かここで酒を酌み交わしもした。

あれは風変わりな男だった。

「その方は…今は?」

イトは苦笑いを零す。

「死んだ…俺が殺した」

触れ合うアオイの肌が、ピクリと反応する。

また、一つ。

イトはアオイに己の罪状を告げる。

「戦場で会って…俺はその時、その男の敵だった。だから、殺した」

男はイトの剣を受けながら。

恨み言ではなく。

何故か笑いながら。

この屋敷は遺産だから受け取れ。

そう言った。

「つまらない話だ…俺の昔話はこんな話ばかりだ」

イトが言えば、アオイは首を振って身を寄せた。

何も身につけていない肌が触れ合う。

「…貴方のことで…つまらない話なんて一つもないの」

言いながら触れる唇は目元の傷に。

こうして、また一つ救われる。



イトは剣を置いてしまえばのんびりとした、怠惰と言っても良いような男だった。

何をするでもない。何もしないことが苦痛ではないように。

大きな椅子に座って、ただ宙を眺めている。

床に転がり、窓から空を見つめている。

そんな風な男は、今はソファに寝転がり、瞼を閉じている。

アオイはそのイトの傍らに座って、時々サシャを指先でからかい…そして、イトにキスをする。

イトは閉じていた瞼を開けた。

微笑み、もう一度口付けを落とせば、大きな手のひらが頬に添えられる。

深くならないキスにもどかしさを覚えることに恥じらいを覚えながら、今は自ら誘うことはしない。

聞かねばならない。

アオイは、もうただ微笑むだけの天使ではないのだ。

この穏やかな日々は捨てがたいが、しかし、聞かねばならないことをアオイは分かっていた。

イトからは、多分切りださない。

アオイから言わなければ、一生聞かないことなのかもしれない。

だが、アオイは聞く決心を固めていた。

「イト」

アオイはイトを呼んだ。

正直な声には、いくらかの緊張がある。

「水鏡というのは何?」

アオイの頬を撫でていたイトの手が止まる。

「私は何をしたの?」

イトは身を起こした。

サシャをアオイの膝の上に乗せる。

少しだけ、考えるように黙り。

「ウスラヒのところで鏡を見たな?」

やがて、決めた男はそう尋ねてきた。

アオイは頷いた。

水を湛えた鏡。

あれが水鏡であろうことは、なんとなくだが察していた。

「水の中の鏡に…イトが見えたわ」

ウスラヒに言われるまま。

見たいものを、と告げられて。

イトの姿を望んだ。

そして、それは水に映し出されたのだ。

「あれは、誰にでも見えるもんじゃない」

アオイは眉を寄せた。

誰にでも見えるものではない、というのはどういうことだろう。

アオイには見えたのだ。

揺れる水の中に、鮮やかな存在が。

「水鏡を操る者は…運命を見る者」

イトはアオイをじっと見ている。

だから、アオイもイトから目を逸らさない。

イトの言葉を、何一つ聞き逃さないように。

表情から、一つしかない瞳から、低い声の紡ぎだす言葉の深いところにあるものまで、全てをきちんと読み取りたい。

「過去、現在、未来。それを、水鏡に映し出す者…水鏡が自ら映すんじゃない。操り手が水鏡に映し出す」

その意味をアオイは考えた。

操り手は運命を見る。

過去を知り。

現在を見て。

未来を視る。

それは、どういうことなのだろう。

たとえば、イトの過去。イトの現在。イトの未来。

どれもアオイにとっては重要なことだけど、その全てを知りたいとは望まない。

だって。

「それは…怖いことね」

そう、怖い。

アオイのいないイトの過去。聞くだけでも、胸を締め付けるような過去。

見たくない。

抱きしめられない過去のイトは見たくない。

そして、もしかしたら、アオイのいないかもしれないイトの未来。

そんなの。

絶対に嫌だから。

だから、視たくない。

そんなたった一人のそれらさえ、こんなにも胸が騒ぐのに。

水鏡は、一体どれだけのものを映し出すというのか。

「怖い…か。そうだな」

イトは答えた。

「あんたは水鏡を操った。あんたは操り手の資格がある」

資格がある、という。

それは、選択権はアオイにあるということなのだろうか。

「貴方は…私に何を望むの?」

アオイは尋ねた。

イトは水鏡を継がせたいのか。

それとも。

「俺じゃない。あんたがどうしたいかだ。あんたが、何を選んでも、俺は変わらない」

イトの答えは、いつかの答えに似ている。

笑っても、笑わなくても、変わらない。

そう言った男は、確かにそうだった。

だから、多分、これもそうなのだろう。

アオイが操り手としての道を選んでも、選ばなくても、イトは変わらない。

「それは必要なことなの?」

アオイは問いを変えた。

水鏡は必要なのか。

過去、現在、未来を知る者は必要なの?

「…さあな」

イトは肩を竦めて、そう答えた。

「イト」

意地悪にも思えるそれに、少しの非難を込めて名を呼べば。

「過去も未来も…知らなきゃ、知らないままで現在は動いていく。知っていたところでどうにもできないこともある。ただ…知っていることで最悪の事態を避けられることがある」

イトはそれを知っているのだろう。

身を持って。

「俺が…司祭を殺した直後にウスラヒが現れた。ウスラヒは水鏡に俺を見たと言った。次代の頭領を水鏡に尋ねたら…俺が司祭に襲われるところを予見したと、そう言った」

初めて見る司祭以外の人間は、片目を潰されたやせ細った子供と、血まみれで倒れている神官を見つめて…何もかも分かっているという顔でイトを抱きしめた。

その言葉を知っていたなら、多分イトは思い浮かべただろう。

これは天使?

それとも悪魔?

そして、そうではないとやはり知ったのだろう。

「…ウスラヒは俺を暗闇から連れ出した。だが、司祭は死んだ」

両方を救う道はなかっただろうか。

そもそもイトなど産まれないようには、できなかったのか。

そんなこと、考えるだけ無駄なのだ。

水鏡は、運命を定めるものではない。

操り手により、大きく動くうねりの一部を映し出す小さな器に過ぎない。

「それだけだ」

アオイはイトの顔の傷に手を触れた。

イトはたくさんの傷を持っている。

体にも、心にも。

そのイトが言う。

「それだけ…なのね」

そう。

それだけ。

アオイは水鏡を操ることができる。

ウスラヒがイトを救ったように。

何かできるかもしれない。

だが、司祭が死んだように。

どうしようもないこともある。

それだけ。

それだけなのだ。

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