第5話 魔女
ロッタの祖母が暮らすのは森の縁。
村と離れた一軒家にいるのは、魔女の系譜を継ぐ者だからなのだろう。
料理は配合、調合だと考えれば、ロッタの才は祖母ゆずりなのかもしれない。
ロッタもまた、魔女の血の者なのだ。
「あれ、ヴォルフさん! 今日は会えないかと思いました」
「おう。ちょいと用があってな。祖母さんちの近くまで先に来てた」
ヴォルフは何食わぬ顔でロッタを迎えた。猟師はツタでぐるぐる巻きにし、本人のハンカチを猿ぐつわにして藪に転がしてある。
「またパテを作ったんです、ヴォルフさんのぶんも。美味しいって言ってくれたから」
「ああ、あれはいいな。まあおまえの作る物は何でも旨いんだが」
「やあん、もう! 何も出ませんよ!」
「いや、料理が出るだろ」
嬉しそうに笑うロッタ。普通に友好を保っていると思うのに、何故ヴォルフが殺されかけるのかわからない。
おい聞いてるか、とヴォルフは藪をチラリとうかがった。小さくモガモガいった気がした。
「じゃあ今日は、ヴォルフさんもお祖母さんに会ってください」
ロッタの言葉に、藪が大きくモガモガいった。
あん?
ヴォルフは振り向かず、考える。
この猟師はヴォルフが魔狼だと知って狙ってきた。本気の殺意だった。
ヴォルフが森の生き物たちを抑え人間との余計な争いを避けてきたことは、周辺の猟師ならば承知しているはず。
それをあえて殺そうとするのは――。
「……まさか、おい」
「どうしました?」
愛らしく首をかしげるロッタの顔をのぞきこみ、ヴォルフは尋ねた。
「なあ、おまえ――魔女なのか」
「え。あ、はい。見習いですけど」
「だろうな。だけどそうか、どうりで美味しそうだと思ったよ」
ニヤリとしたヴォルフはわざと声を張った。