第3話 食事
「あのパテは絶品だった……!」
出会いの日、ヴォルフに渡された小瓶。中身のパテは実に旨かった。
それに文字通り味をしめたヴォルフは同じ道筋でロッタを待ち伏せたのだ。繰り返し。立派なストーカーだ。
理由はいろいろこじつけた。
瓶を返そうと思って。
花は摘んでおいたから寄り道するな。
祖母さんが風邪気味だと言ってたのは治ったか。
その甲斐あって、数回会うとロッタはヴォルフと一緒に木の根もとで休憩するようになった。
「いつもお気づかいありがとうございます!」
「あ、いや……」
その気づかいの対価に分けてもらう煮込みやソーセージや、たまにクッキーなんかが目的なので礼には当たらない。
ロッタは毎週日曜日に祖母の家に差し入れに行くのだった。これまでは先日結婚した姉が通っていたのだとか。
「ヴォルフさんがいなかったら初日に迷子でした」
「おまえ、実は五歳ぐらいだろ?」
「十五です!」
むっきー、と怒る顔も美少女だ。だが人の顔など三日も見れば慣れる。
元から女と思っていないロッタがどんなにかわいかろうが、ヴォルフには無意味だった。
そんなことより重要なのは、ロッタが持って来るこの料理。これは誰が作っているのか。
「え? 私ですけど?」
「は、マジ?」
森の一人歩きもできない子どもが?
ゲラゲラ笑われて、ロッタはふくれ面だ。ヴォルフが食べかけていたサンドイッチを取り返そうとする。
「信じないなら食べなくていいです!」
「うわ!」
手を伸ばされてよけると、ロッタはヴォルフの上にベタンと転んだ。だから子どもだと言うんだ。
ヴォルフの胸の上で起きたロッタの顔は真っ赤だった。
まあ、かわいいのは認める。ヴォルフはその乱れたピンクブロンドに手を伸ばした。
「頭にサラミのってんぞ」
「うひゃ!? 取ってくださいぃ!」