夏の日の午後
起承転結のない短文のため、
詩ジャンルとしていますが
内容としては純文学作品から
ある一場面の情景描写だけを切り出したような
そんな作品です
太陽の光に隠れるように
白く輝く糸が張り巡らされている
その身に触れた雫が
光と影を生み出すことで
ようやくその存在を感じ取れて
糸の隅には毛玉のような白い塊が一つ、二つ
そのすぐ脇では、枝葉の先で羽を休める
トンボの姿が隠れていた
頭上から降り注ぐじりじりという音と声
それ自体に熱はないのに
なぜかその音を聞くだけで
汗が滴り落ちてくるような気がする
木陰を抜ける風は生温く
けれど首筋だけは氷が側を通り過ぎたような
微かな冷気が過ぎていく
万華鏡かステンドグラスか
風に揺れて木陰が作り出した光の芸術
同じ瞬間は一時となく
変わり続けてゆく様に命の儚さを知る
じっ、と音が弾けると
途端に訪れる静寂
遠くではまだ、同じように夏を謳歌する鳴き声が響いているのに
間近の音が一つ消えるだけで静けさを覚えるから不思議だ
木の幹の上を黒い鎧の軍隊が群れを成し
戦利品を担いで下っていく
差し込んでくる光の帯が僅かに薄れたのを知って
私も黒の軍隊に倣い、自分の戦場に帰ることにした
この夏のように熱を帯びた者たちと
言葉の銃弾を交わし合う場所へ