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マシンガンズ・アニマ  作者: 白沼 雄作
第一章 運命の糸に触れる者
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第七話 人は見かけによらないもの

「た、退治!?」


 楓から依頼されたエイトは驚く。

 エイト自身、戦う事に抵抗はないのだが、初対面の人に頼まれるとは思わなかった。


「はい! 実は屋敷の中に棲み着いているあの怪物たちを倒してほしいんです! 倒さずとも、屋敷の中から追い出してほしいんです!」

「棲み着いている!? 三咲先輩は大丈夫なんですか!?」

「棲み着いている一帯は私が閉鎖したので大丈夫です! あの怪物たちも、その敷地内に入らなければ攻撃してくることはないので、放置しても問題ないと言えば問題ないのですが……屋敷の六割を独占してるので、三咲様に窮屈な思いをさせてしまっているようで……」

「六割…………」


 エイトは屋敷を見回すように視点を左右に動かす。

 屋敷は高さこそないもの、全体の面積が広く学校と同じくらいの広さをしている。


(四割でも充分――って言ったら殺されるか)


「……わかりました。ただ、学校が終わってからでもいいですか?」



   ※



「いやーびっくりした。お前もグレたのかと思ったぜ!」

「昭伍じゃあるまいし」


 学校の昼休み。

 エイトと昭伍の二人はいつものように屋上で弁当を食べていた。


「てかびっくりしたのは俺もだよ。お前が真面目に授業に出てるとこ、久しぶりに見たぞ」

「仕方なくだ! 今度の授業に出なかったらスマホの秘蔵フォルダ拡散するって言うもんだから、仕方なく」

「先生がその脅しするのか――いや、あの先生ならするか……そういえば、昭伍」

「ん?」

「昭伍って……妹とかいたりする?」

「いいや。妹はいないぜ」

「そっか。実はさっき昭伍と同じ『飛山』って苗字をしてる子にあったから、もしかしたらと思って」

「ふーん」


 昭伍が素っ気ない反応を示すと同時に、屋上の扉が開く音が聞こえてくる。


「あっ、紗菜先輩!」


 一人でやって来た紗菜。


「やっぱりここにいたんだね! ……エイトくん、三咲のこと知ってる?」

「はい。体調が悪そうだったので、俺が送りました。ちょっとした風邪だと思うので、すぐに良くなると思います」

「良かった……」


 エイトの話を聞いて紗菜は安心する。


「私、学校が終わったらお見舞いに行こうと思うけど、エイトくんも一緒に行かない? その方が、三咲も()()と思うから」


 喜ぶ――感情を失った三咲ができないことであるのは事実。

 そんな彼女に対してそう言った言葉を言うのを恐れていたが、紗菜は口に出した。


「…………実は、先輩の家の使用人から、【アニマ】の討伐を依頼されたんだ」

「!?」

「!?」


 少し迷ってから放たれたエイトの言葉に、紗菜と昭伍が驚く。


「確かに棲み着いてるのは知ってるけど……それをエイトくんが!?」

「はい。だから、今日は俺一人で行かせてください」

「……何言ってんだ相棒」


 空かさず昭伍が口を挟む。


「お前が戦うってんなら、俺も一緒に戦うに決まってんだろ!」

「昭伍……!」

「それに、もしかしたらお前の能力を拝見出来るかも知れないしな!」

「……そっちメインで考えてない?」

「わ、私も行きます!」


 紗菜もエイトについていこうとする。


「やめておけ。覚醒していない先輩が行っても怪我をするだけだ」


 昭伍が真面目な雰囲気で言う。

 力を解放できない者が行っても無駄なことを、紗菜自身が一番良くわかっていた。


「それでも……三咲のために!」

「……こればかりは昭伍の言う通りです」


 エイトは敢えて、紗菜を睨み付け圧をかける。


「一緒に来ても、足でまといにしかなりません…………それでも来るんですか?」

「はい!」


 紗菜の迷いのない目を見たエイト。


「……わかりました。では、三咲先輩のことをお願いします。三咲先輩は【アニマ】が見えないと思うので、万が一凶暴な【アニマ】が向かってしまった際は、先輩を連れて逃げてください」

「! ありがとう!!」

「まぁ【アニマ】討伐は俺らに任せろ。元より、《リベレイト》できないと致命傷を与えられないからな」


 【アニマ】は名前の由来の通り、魂が何らかの肉体に宿らず異形になって彷徨っている存在。

 そのため、どれだけ【アニマ】の肉体にダメージを与えても、魂のエネルギーが尽きない限り、何度でも再生してくる。

 【アニマ】の元の魂についてエイトたちはわかっていないが、《テルム》による攻撃、または解放した超能力による攻撃でなければ魂のエネルギーを消せない事だけはわかっていた。


「ところで……一樹さんは来るの?」

「今日は父さん、忙しいと思うから呼ばない予定です。それに、言ったら止めてくると思うので…………この件については、俺の手で解決したい」

「そっか…………」


 紗菜は少し残念そうな表情を浮かべた。


(もし一樹さんも来れば、もう一度あの人の戦いを見ることが出来たかも知れないなぁ……)



   ※



 放課後となり、エイトたち三人は三咲の住む屋敷へと足を運んでいた。

 屋敷に着くまで間もなくといった所だが、それでも屋敷の大きさがはっきりと伝わってくる。


「デケぇな……」

「久しぶりに来たけど、圧倒される……」

「先輩の両親、すごい人だったんだろうな……」


 しばらく歩くと、朝と同じように門の前を掃除している楓の姿が見えた。


「……おいエイト。まさか俺を填めたわけじゃねぇよな?」


 彼女を見た昭伍が驚愕の顔で固まっている。


「え? 何を言ってるんだ?」


 彼の言うことがわからなかったエイト。

 聞いている内に、楓がこちらに気づいた。


「お待ちしてました! 紗菜様も一緒で――――え?」


 久しぶりに見る紗菜の姿に喜ぶ楓であったが、問題はもう一人の方――


「……なんで、なんであんたが一緒にいるの!?」


 楓が丁寧な口調を崩し、昭伍に指差して叫んだ。


「俺の台詞だクソ姉貴!! 相棒の先輩んとこの使用人やってると思うわけねぇだろ!!」


 昭伍も喚き散らす。


「……え?」

「……え?」


 エイトと紗菜の頭が混乱する。


「――ゴホン、失礼しました。お二方、このアホとお知り合いなんですか?」

「アホってなんだゴラ!」

「俺は中学の時から……」

「私は昨日知り合ったばかりです……」

「……この度は、弟がご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません」


 楓が深々と頭を下げた。


「弟……てことは、お姉さんなんですか!?」


 エイトが驚くのも無理はない。

 使用人と名乗ったとはいえ、小学生にしか見えない彼女が昭伍の姉なのだ。


「嘘っ!? ずっと年下だと思ってた!」


 紗菜も衝撃の事実に、少々失礼なことを口に出した。


「おいおい、威厳がなさ過ぎてなめられてんじゃねぇか」

「《リベレイト》――【ノビリス】」


 鼻で笑った昭伍に、楓は力を解放し、槍の《テルム》を昭伍の喉元に突きつける。


「あんたも姉になめた態度ばっか取ってると殺すぞ」


 鋭い目つきに、ドスの効いた声。

 エイトたちと接するときの小動物のような可愛らしさが一瞬で消え去った。


(あぁ……確かに姉弟だな。というか、能力が戦闘向きじゃないって聞いたけど、普通に戦っても【アニマ】を全滅させられそうな目をしてる……)


「やるか? 一仕事する前の準備運動になるか怪しいが……」


 昭伍も戦闘体勢に入ろうとする。


「あ、あの……喧嘩は後にしてもらえると嬉しいかなって……」


 紗菜が恐る恐る仲裁に入ると、楓の顔が元に戻る。


「気を取り乱してしまいました……申し訳ございません」


 楓は槍を消滅させた。


「では、エイト様とアホを例の場所へ案内しますが……もしや紗菜様も力を?」

「ううん。まだ私は覚醒途中みたい。戦えないから、三咲の傍にいることにしたの」

「なるほど! それなら安心ですね! 三咲様は自室で休んでおられます。場所は覚えてますか?」

「もちろん! 先に行ってるね」


 紗菜が先に門を潜り、玄関を入って迷うことなく右に進んでいく。

 その途中、家の傍にいる大きなヘビに似た【アニマ】が紗菜を見ていたが、襲う事はなかった。


「あの【アニマ】は放置していいんですか?」

「あにま?」

「今回退治する化け物どもの名称だ。そんなことも知らねぇのか?」

「黙れ巻きグソ――ゴホン。あれはこちらに害をなさないようなので放し飼いにしてます。むしろ、泥棒や三咲様目当ての変態を食べてくれるので助かってます」

「だってよ。気をつけろよエイト」

「はは……………………うん」


 エイトたちは楓の案内の元、【アニマ】が棲み着く場所へ案内されていく。






「…………この屋敷、広くて助かりますね」


 しばらくして、眼鏡をかけた青年が門の前にやってくる。


「ここなら、後処理に困らなそうです」

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