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マシンガンズ・アニマ  作者: 白沼 雄作
第二章 光纏いて彷徨う朱雀に、導きの愛を
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第十七話 光の狂乱者

「《プロディス》――【デビリット】!」


 一樹の体勢を崩したダリアが、彼の首に注射器を刺した。


「くそッ!!」


 一樹は剣を振ってダリアを退かすも、既に液体が注入された後だった。


「…………っ!?」


 一樹は立ち上がるも、足にうまく力が入らず片膝を着く。

 《プロディス》――【デビリット】は身体能力を低下させる液体を注射器内に生成する技。


「もらったぞ!」

「くっ!!」


 接近するダリアに対し、一樹は炎で対抗しようと左手を前に出すが、何故か炎が生成出来ない。

 【デビリット】の液体には、相手の能力を一時的に無力化する効果もあった。

 炎を出せなかったことで、一樹はダリアが放つ散弾を胴体に受け、後ろに倒れる。


「くそ……!!」

「能力が使えないだろ? これなら『朱雀』の()()()も使えまい」


 ダリアは一樹の頭に銃口を向ける。


「……やってみろ」


 この状況で何故か挑発する一樹。


「…………」


 ダリアは引き金を引こうとするも、背後に何者かの気配を感じ、後ろ蹴りを繰り出した。


「うっ!!」


 それは密かに力を解放し、一樹を助けようと闇討ちを狙った紗菜だった。

 しかしダリアに気配を察知され、蹴りを受けたことで後ろに吹き飛ぶ。





「これで終わりだ……『朱雀』!!」





 そして無情にも――――ダリアは一樹の頭を撃ち抜く。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 紗菜の叫びが周囲に響く中で、ダリアは念のためもう二発撃ち、一樹の頭を粉々にする。


「一樹、一樹ぃ――!!」


 紗菜は思わず呼び捨てで、彼の名を叫びながら駆け寄る。そして涙を流しながら何度も彼の名を呼び、体を揺さぶる。

 頭を破壊された彼が生きているわけがないのだが、その現実を紗菜は受け入れることができなかった。

 ダリアも流石に彼女を撃とうとはしない。


「確か、零宮紗菜――だったか。その心の痛みを糧にして強くなれ。そして俺を殺しに来い! ……君にはその権利がある」


 そう言って、今度はエイトを抱えた三咲の方へ歩き出す。


「『死神』がまだ残っているが、ここで『藍色』を捕らえれば期限を延ばしてくれるだろう……傷つけるつもりはない、大人しくその少年を俺に渡してくれ」

「……エイト、エイト」


 ダリアの言葉を無視するように、三咲はエイトの体を揺さぶって起こそうとする。

 しかし、目が覚めない。


「エイト!」

「ぶはッ!」


 そこで三咲は彼の頬を叩き、無理矢理起こした。


「エイト、あなたの父さんが死んでる。早く能力を使わないとマズいんじゃないの?」

「父さんが? ……何回目?」

「えっ?」

「死んだの、何回目? 一回目なら、大丈夫。むしろ余計なお世話だって怒られ――る――」


 力が残ってなかったエイトは、再び意識を失った。


「…………??」


 寝ぼけたような発言をしたエイトに、ひたすら困惑する三咲。




 ――ゴォ!!




「!?」


 突然、炎が巻き上がる轟音が聞こえてくる。


「まさか、発動したのか!?」


 ダリアが後ろを振り向くと、両足で立っている一樹の姿があった。

 体の傷が全て完治しており、背中には大きな炎の翼が。

 その翼は、まさに『朱雀』のようだ。


「一、樹……?」


 急に生き返った一樹に、紗菜の思考が追いつかない。

 どういう理由で蘇ったのか不思議に思うところもあったが、その反動か彼の前髪が下ろされ、雰囲気が一気に変わっていたことに心が奪われていた。

 数秒後、翼が消えて辺りが静寂に包まれる。


「……()()、心配させてしまったな」

「えっ!?」


 一樹が普段よりも優しい声色で、紗菜の下の名前を口にした。

 紗菜が驚いているのも束の間、一樹が身を屈め、ぎゅっと抱きしめてくる。


「えぇ!?」

「でも嬉しい。オレにここまで寄り添ってくれる人がいると思わなかった。ありがとう…………紗菜」

「は、はい……」


 紗菜は湯気が出るほど顔を真っ赤にしていた。


「どういうことだ!? なぜ【朱雀(すざく)転生(てんせい)】が発動した!? 【デビリット】で無力化できないのか!?」


 ダリアが困惑していると一樹は紗菜から離れ、髪型をオールバックに戻しながら答える。


「文字の通り、『蘇生』ではなく『転生』だ。見た目は一緒に見えるだろうが、新しい肉体と魂のエネルギーに入れ替わっている。お前が無力化したのは、前の肉体と魂だけだ。強いて一つ、変わらないものがある…………大切な人から貰った、心臓だけだ」


 一樹は左胸に手を添えた。


「この心臓はやたら頑丈な上、何故か他者の能力に干渉されない。オレもその理由が知りたいが……もう、知ってる人物がいないんだ」

「くっ……だが、【朱雀転生】を使った後は能力が使えず、再度【転生】するには一週間の時間が必要だと聞いた。大人しく俺の仲間になってくれ!」

「よく知ってるな。【転生】してから七日間は再度【転生】できず、【ケラスス】を解放できない」

「…………?」


 ――【ケラスス】を。

 わざわざ能力の名前を出したことに、何か違和感を覚えるダリア。

 するとその正体を証明するかの如く、一樹は右手を前に突き出した。







「《リベレイト》――【リコリス】!!」







 一樹が【ケラスス】とは別のコードを唱え、力を解放させる。

 彼の前に、懐中電灯のような筒が現れる。それを右手に持つと、筒の先から一本の光が伸びた。

 彼が手にした《テルム》は、SFアニメに出てきそうな『ビームソード』だ。


「馬鹿な……もう一つの、【リベレイトコード】だと!?」


 ダリアは驚き、思わず一歩引く。


「炎も悪くないが、こっちの方が馴染むな」


 一樹は棒回しをするかのようにビームソードを綺麗に振り回している。


「もしかして……!?」


 隣で見ていた紗菜は、瑛弍との会話を思い出す。


『一樹は、姉貴の心臓で生かされている。その影響で、姉と同じ能力を得た』


 これまでの能力は、あくまで沙七の能力。

 つまり、今解放している力こそ、一樹本来の能力なのだ。


「さて、オレもこれを出したからには後がない。最初から本気で行かせてもらう」

「新しく力を解放したからとは言え、俺の能力を見切れると――」


 思うな――そう言おうとした瞬間には、既に目の前から一樹の姿が消えていた。


「!?」


 瞬時に気配を察知したダリアは振り返り、背後を取っていた一樹の斬撃を散弾銃で受け止める。

 剣よりも切れ味の良いビームソードは散弾銃を切断したが、銃を挟んだことで隙を生み出したダリアは後ろに下がった。

 一樹の動く速度が明らかに上がっている。


「――逃がすか」


 一樹は空いた左手の上に、野球ボールと同じサイズの球体を光で生成。軽いスナップで球体を飛ばす一樹だったが、その動作から出るとは思えない速さで飛んでいき、ダリアの右肩を貫いた。

 その様は、まるで『レーザービーム』を放ったが如く。

 【リコリス】を解放させた一樹の能力も至ってシンプル。光を自在に操る能力だ。


「ちぃ!!」


 ダリアは右肩の傷口を左手で抑え、体を怯ませた。


「《プロディス》――【レッド・クリミナル】!!」


 一樹が《プロディス》を発動させると、ビームソードの光の色が赤くなる。

 ソードを両手に持ち、一樹がダリアに急接近した。


「諦めてたまるかぁ!!」


 ダリアは足下に落ちていた、もう一つの散弾銃を足で上手く弾ませ、左手に取る。

 一樹に向けて構えるが、それと同じタイミングで一樹の斬撃が彼の腹を斬っていた。


「ぐぶッ!!」


 この時点で重傷だが、彼の腹を斬った赤い光が無数の小さな球体となり、周辺に散らばる。

 そして追い打ちをかけるように球体がダリアに向かって飛び、全身に穴を空けた。


「が…………ぁ…………!!」


 全身から血を吹き出させながら、ダリアは後ろに倒れる。


「な……ぜだ……!」


 しかし、まだダリアは生きている。


「なぜ、急所を外した……!?」

「……お前を殺すべきかどうか、最初から悩んでいたが……殺すべきではないと、戦いの中で思っただけだ」

「どうする、つもりだ……!?」

「奇妙な提案をする。お前、オレたちの仲間にならないか?」

「は…………?」


 一樹はダリアに対し、彼から提示された同じ提案を出してきたのだ。


「敵を勧誘……馬鹿なのか!?」

「お前もそうしてただろ。オレはお前がいい奴だと思ったから、勧誘している」

「――私も、その意見に賛成です!」


 一樹に同調した紗菜がダリアに歩み寄った。


「私を覚えてますか? 昨日、あなたに助けてもらったんです」

「……覚えてるも何も、『朱雀』の女だ。情報として頭に入れるのは……当然だ」

「あの時、いじめっ子を容赦なく殺した時、一瞬怖いって思ったけど……本当は優しい人なんだろうなって思った。正しいやり方を知らないだけなんだろうって」

「…………」

「紗菜の言う通りだ。お前は正しいやり方を知らない。【アルカロイド】が正義の組織なんていうのは、真っ平嘘だ。だから教えてやる。【アルカロイド】の本当の目的を――――」





「――その必要はない」





「!?」


 謎の男の声が聞こえると同時に、ダリアに向けて一発の弾丸が飛んでくる。

 それを一樹がビームソードの光を素早く生成し、弾丸を見ずにそれを防いだ。


「反応できるか、『朱雀』――いや、今のお前は『光の狂乱者』と呼ぶべきか」

「懐かしい肩書きが出てきたな……その声、ラティフォリアか」


 一樹たちが声のする方を向くと、ピンク色の少し長い髪をした男が、拳銃を持って立っていた。

 彼のコードネームはラティフォリア。ボスの側近の一人であり、過去に一樹と戦った経験もある。


「ちっ……ボスの側近様が、何の用だ……」

「難しい用じゃない。任務を果たせないカスを粛清しに来ただけだ。大人しく死ね。さもなくば妹がどうなるか」

「貴様……!!」


 怒りを見せるダリアに銃口を向けるラティフォリア。

 すると更に別方向から、よく分からない言葉を発する声が聞こえきた。


「うぉぉ!! こういう時に言いがちな台詞(セリフ)ランキング第三位!!」


 答え合わせをするまでもないが、その声の正体は瑛弍。

 建物の上から斜めに飛び降り、ピンク男(ラティフォリア)の喉を木刀で突こうとしている。


「『引導を渡してやる!』」


 しかし、あっけなくピンク男に回避される。

 瑛弍は特に悔しがる様子も焦る様子も見せず、素早く一樹の横に並び立つ。


「ヒーローは遅れて登場する! ……あっ、そうそう内津(うつつ)聡四(あきし)くんに朗報があります!」


 瑛弍がダリアの方を向きながら何かを伝えようとする。

 内津聡四は、ダリアの本名だ。


「君の妹――四乃ちゃんは俺の知り合いが預かった。今頃温かいスープを飲んで心安まっているだろう……」

「何言ってんだ……『死神』――」


 それを最後に、気を失ってしまう。

 ちなみに瑛弍の言っていることを正すと、敵の素性を調べてこうなることを想定していた瑛弍は、暴走する【アニマ】を全て倒した後、内津宅に向かって彼女を保護した。その際、瑛弍一人だと怪しさ全開なので愛生も同行。今は遥未宅で丁度昼食を食べているところである。


「……強敵二人を一度に相手するのは分が悪い。今日は大人しく帰るとしよう」


 そう言って、ラティフォリアは消えるように去って行く。


「おいおい! 側近がそんなんでいいん!? 一樹、追いかける?」

「いや、今は安全の確保が優先だ。特にこいつ――聡四と言ったな? このままだと彼が死ぬ」

「お前の能力でパパッと治癒すれば――ってさては……一回死んでるな!?」

「あぁ、こいつにやられた」

「聡四くんやるなぁ! この逸材は生かしておかないと!」


 瑛弍はダリアこと、聡四を抱えようとする。


「私も手伝――」


 紗菜も瑛弍の手助けに行こうとするも、急に足の力が抜ける。

 前に倒れそうになるも、一樹が抱きしめるように彼女を支えた。


「紗菜も無理が堪っている。休んでいい」

「は……い…………」


(名前呼び……定着してる…………)


 二つの意味で安心した紗菜は、そのまま眠るように意識を失った。


「さて、オレは紗菜を家に置いてくる」

「……私も、エイトを連れて帰る」


 一樹と三咲が、一足先にこの場を去って行く。

 残された瑛弍は聡四を抱えながら、ため息を吐いた。


「どうせなら、巨乳美少女運びたかったな~」

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