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マシンガンズ・アニマ  作者: 白沼 雄作
第二章 光纏いて彷徨う朱雀に、導きの愛を
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第十六話 望まぬ一騎討ち

 時刻は正午になる前――。


 昼間の路地裏にて、紗菜たちを誘い込み奇襲をかけた【アルカロイド】の三人。

 そこへ、一樹が駆けつけてきたのだ。

 トメントーサは既に灰と化し、残りはスノーフレイクとロベリア。


「まさか……『朱雀』が自分から姿を見せるなんて……嬉しいね!!」


 少年(スノーフレイク)がナイフで一樹の腹を刺そうとする。


「…………」


 一樹は何故か無反応。

 そのままナイフを腹に受ける。


「……うッ! なんで…………!?」


 しかし、何故か逆に少年が血を吐き始める。

 ナイフの刃が一樹を貫かず、折れていたからだ。

 力を解放した一樹の体は、生半可な《テルム》では傷一つ付けられない。


「子供だから一撃くらい受けておこうと思ったが……すまない」

「な、舐めるな!!」


 激昂した少年がもう一本のナイフを生成。再度一樹に攻撃を仕掛ける。

 今度は受けまいと一樹は右手に持っていた剣でナイフを弾き、左手で少年の首を掴もうとした。


「!?」


 掴まれた時点で終わり――先程あっけなく散っていったトメントーサを思い出し、少年は能力を発動。

 自分を中心に『バリア』を展開して一樹の攻撃を阻止する。


「《プロディス》――【朱雀(すざく)永炎(えいえん)】」


 一樹は何の躊躇いもなく『バリア』に触れ、《プロディス》を使う。

 少年は思わず縮め、防御態勢に入る。


「…………?」


 しかし、何も起きない。

 不発に終わったと思った少年は、体勢を戻す。


「え?」


 だが安心するには早かった。

 能力を解除して攻め直そうとする少年だったが、どう頑張っても『バリア』が解除されない。

 《プロディス》――【朱雀永炎】は、他者の能力を上昇させる技。

 味方に付けて能力の向上をさせることもできれば、敵に過剰付与して制御困難に落とし入れることもできる。


「!」


 その途中、ロベリアが不意打ちで鎖を飛ばしてくるも、一樹は難なく回避する。


「《プロディス》――【朱雀(すざく)念炎(ねんえん)】」


 そして一樹が再び『バリア』に手を当て、《プロディス》を使う。


「は…………!?」


 すると突然、スノーフレイクの体が燃え始める。


「熱い! 熱い!! 出せこの外道!! あ゛ぁ゛――!!」


 少年は喉が潰れる程の強い悲鳴を上げながら、解除できない『バリア』を叩きだす。

 その悲痛の叫びは、戦場に慣れていない紗菜に恐怖を与え、体を震えさせた。


「ぁ……ぁ――――」


 黒焦げになったスノーフレイクは、そのまま力が抜け、絶命する。


「あの二人を一瞬で殺すか……ダリアが慎重になるのも納得だな」


 残されたロベリアが冷や汗をかき始める。


「だが、退く理由にはならねぇな!!」


 彼は先端が刃になった鎖を勢いよく飛ばす。

 これまで以上に速い速度で飛ばされた鎖だが、一樹はスッと横にかわした。


「!?」


 しかし鎖の勢いは止まらない。

 鎖は一樹の周囲を囲むように伸び続けている。


「《プロディス》――【コンプレシオ】!」


 一樹を囲った鎖全てに刃が付き、彼を圧縮させようと一気に縮む。

 一樹は上が空いていることを見逃さず、桁外れの跳躍力でそれを回避した。


「《プロディス》――【朱雀炎風】」


 一樹が居合いのような構えを取り、宙を蹴ってロベリアに迫る。


「ちぃ!」


 ロベリアは足に力を入れ、大きくバックステップした。

 一樹が繰り出そうとしている技の詳細を、事前に把握していたからだ。


「――悪いな」


 一樹がそう呟くと、剣を居合い斬りと同じ動作で振る。


「なっ!? ふざけ――!!」


 動作の意味を察したロベリアだが、反応が遅れた。

 一樹の前方――ロベリアを中心に炎の竜巻が巻き上がる。


 【朱雀炎風】は通り道に炎の竜巻を置く技ではない。剣から炎の竜巻を生み出すだけのシンプルな技なのだ。

 あの時、監視されていることを見越した一樹はわざと変な出し方をすることで印象づけ、相手の意表を突けるようにした。


 竜巻に飲み込まれたロベリアの体は焼き尽くされ、灰と化す。


「…………」


 短時間にして、【アルカロイド】の三人を倒した一樹だが、剣を消滅させなかった。

 誰かがこちらに向かってくる気配を感じ取っていたからだ。


「……やはり、無断で動いたか」


 その人物は――ダリアだ。


「!?」


 彼の顔を見た紗菜が思わず身を縮込ませる。

 ダリアは昨夜助けてくれた恩人。その人が、意中の相手と激突してしまう姿を真っ先に思い浮かべたからだ。


「スノーフレイク、トメントーサはともかく、ロベリアまでやられるとは…………」

「……仲間が殺された割には、冷静だな」

「確かに俺の部下だ。だがスノーフレイクとトメントーサは快楽目的で人を殺しすぎた。不思議と悲しい気持ちにならない。比較的まともだったロベリアが逝ったのはショックだが…………感傷に浸っている時間はない」


 ダリアは一樹と目を合わせると、意外な提案を出してくる。


「『朱雀』……俺たちの仲間にならないか?」

「…………」

「お前たちが何でも屋をしながら、人々を守っていることを知っている。俺たち【アルカロイド】も世界平和が目的だ。組織の中に野蛮な奴らが少なくない。悪い印象を持ってしまっているだろうが、決して悪の組織じゃない。なんなら、一緒に内情から変えていかないか?」

「…………」


 とんでもない提案をしてきたダリアに、一樹は無言を貫く。


「俺は幹部の中でも側近と対等に話せる立場だ。仲間になってくれるなら、身内の安全は保証する。もちろん、俺の部下になれとは言わない。同等――なんなら俺が部下になっても構わない。俺は荒れたこの世界を本気で良くしたいと思っている。それには『朱雀』の力が必要だと考えた…………どうだ?」


 自分の考えを最後まで述べたダリア。

 数秒の沈黙が周囲を漂った後、一樹が口を開いた。


「――最初は命乞いかと思ったが、その目から強い意志を感じた。お前の言葉は信じる…………だが、オレは何があっても【アルカロイド】を壊滅させ、そのボスを殺すと決めている」

「何故だ? ボスを殺すことにこだわる理由がわからない」

「情報収集に時間が足りなかったのか、それとも見落としていたのか……オレは『死神』――()()()()の相棒だ。オレはあいつに色々と世話になった……少なくともオレは、あいつを裏切ることだけはしたくない」

「片桐、瑛弍!? ……そうか、ボスがやたら二人の抹殺にこだわる理由がわかった……」


 何かを理解したダリアは、散弾銃を取り出す。


「戦いは避けられないのか……」

「あぁ、お前が【アルカロイド】である以上、戦うしかない」

「…………」

「…………」


 互いに見つめ合った後、同じタイミングで駆け出す。

 ダリアが引き金を引き、先制攻撃を仕掛ける。一樹は横にかわしながら懐に入り、剣で彼の腹を斬ろうとした。

 ダリアは剣を足で弾きつつ、素早く身を翻して弾を放つ。一樹は炎の壁を生成して弾丸を燃やしつつ、死角に入り込む。

 ダリアは攻撃を繰り出される前に後ろに飛びながら一樹の姿を目視。彼に向けて散弾を放った。

 一樹は弾を回避し、地面に着地したダリアへ急接近。再び激しい攻防戦が繰り広げられる。


(す、凄すぎて、何が起きてるのかわからない……!)


 二人の戦闘を見ていた紗菜だが、異次元の攻防に頭が追いつかなかった。


(私も、あれくらい戦えるようにならないと……一樹さんの力になれない……)


 紗菜が不安を浮かべる中も、二人は戦い続けている。


「《プロディス》――【朱雀炎風】」


 一樹が居合いの構えに入る。

 ダリアはロベリアと同じ反応を取り、バックステップした。

 一樹は何の躊躇もなく剣を前に振り、炎の竜巻を巻き起こし、ダリアを巻き込んだ。


「……妙だ」


 しかし、感触に違和感を覚える一樹。

 もしやと上を向くと、なんとダリアは上空を舞っていた。竜巻に上手く乗り、靴を焦がしつつも空に上がったのだ。

 ダリアは落下しながら散弾銃を一樹に向ける。一樹は彼が引き金を引く寸前、剣で銃口を逸らす。


「甘い!」


 だがダリアは隠し持っていたもう一つの散弾銃を取り出し、着地と同時にゼロ距離で一樹の左胸を撃つ。


「うぐッ!!」


 反応できなかった一樹は直に受けるが、そのままダリアの腹を斬り裂く。


「くッ!」


 ダリアの腹が横に裂かれたものの、直前で後ろに飛んでいたことから、深く入ることはなかった。


「…………」


 一樹は平然と自分の傷口を確認する。

 超至近距離で撃たれたことで大きな穴が空いたものの、そこから見える心臓には一切傷が入ってない。

 一樹は緑の炎で穴を塞ごうとするも、なぜか再生しない。


「一樹さん!?」

「安心しろ、この傷でも動ける」


 心配の声をかける紗菜を、あっさりと流した一樹。


(ど、どう見ても致命傷にしか見えないけど!?)


「お前、弾丸に何か細工してるな?」

「その通りだ……弾丸には、【アニマ】の細胞が組み込まれている」


 ダリアも平然としていられるほど浅い傷ではないが、普通に立っている。


「さすが『朱雀』と呼ばれた男。《プロディス》を四回も使ってまだ立っていられるのか……」


 すると、片方の散弾銃を地面に落とす。


「《リベレイト》――【ダリア】」


 ダリアがついに力を解放させた。

 空いた左手に出現したのは、一本の注射器。

 中には肌色の液体が入っている。


(えっ!? いままで力を解放してなかったの!?)


「俺もここで死ぬ訳にはいかない……妹のために!」


 ダリアは注射器を自身の首に刺し、液体を注入した。

 すると、傷口が一瞬で塞がる。


「!?」


 同時に、彼がとんでもない速さで一樹の後ろに回り込む。

 紗菜の目には追いつかなかった。


「くっ!」


 一樹は間一髪反応し、ダリアが放った弾丸を避けつつ剣を振る。


「ほう、反応できるか!」


 ダリアは剣を避け、ながら再び弾丸を放つ。


「アホみたいに動く馬鹿がいるからな!」


 一樹は軽口を叩いているが、少し焦りながら弾丸をかわしているようにもみえる。

 彼が剣を振り下ろそうとするが、その前にダリアが背後を取ってきた。

 一樹は素早く後ろ蹴りで対応しようとするが回避され、ダリアは銃口を向ける。一樹はもう片方の足で前に飛びながら身を翻しながら剣で空を斬り、炎の斬撃を飛ばす。ダリアは散弾銃の銃身でそれを弾き飛ばした。


「《プロディス》――【朱雀(すざく)狂炎(きょうえん)】」


 その隙を突こうと、一樹は目にも留まらぬ速さでダリアに接近する。

 【朱雀狂炎】は炎を纏った剣による高速乱舞。戦いの決め手にもなる技で、一樹の中でもトップクラス。

 瑛弍にも引けを取らない速度の攻撃だが、身体能力が異常に上がっていたダリアはそれを全て防いでしまう。


「もらった!」


 ダリアは不意に足払いをする。

 完全に散弾銃にしか意識が向いていなかった一樹は体勢を崩してしまう。


「《プロディス》――【デビリット】!」


 そしてダリアは、一樹の首に注射器を刺した――――

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