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マシンガンズ・アニマ  作者: 白沼 雄作
第二章 光纏いて彷徨う朱雀に、導きの愛を
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第十五話 少女の初陣

「《リベレイト》――【ナデシコ】!」


 ついに覚醒した紗菜が、力を解放させる。

 彼女の目の前に出現した《テルム》を左手に持つ。

 その《テルム》は――――


「……えっ、盾!?」


 なんと防具の盾だった。

 紗菜は名前から和風な武器をイメージしたのだが、西洋風の防具が出たことに更に驚いていた。


(こ、これで殴って戦えってこと!?)


「ここで覚醒するんだ……でも、僕たちが相手で運が悪いね!」


 スノーフレイクがナイフで紗菜の体を貫こうと突進してくる。


「!?」


 思わず怯む紗菜。


(……あれ?)


 あることに気づいた紗菜の緊張が解ける。

 少年(スノーフレイク)の動きが、スローモーションに見えたのだ。

 紗菜は少年の攻撃を的確に盾で防ぐ。


「あれ――」


 防がれた事に驚く少年に対し、紗菜はそのまま盾で少年を突き飛ばす。


「おもしれぇ! 俺様の《テルム》に耐えられるか!?」


 今度はトメントーサがチェンソーで襲いかかってくる。

 紗菜はチェンソーの刃を盾で受け止めた。

 チェンソーの刃が回り、盾を削ろうとするも、傷が付く様子がない。


(防戦一方じゃ勝てない! 何か攻撃手段を――!)


 そう思っていると、空いている右手にもう一つの《テルム》が出現する。

 それは盾――ではなく拳銃だ。


「馬鹿な!?」


 (トメントーサ)が驚く。

 無理もない、《テルム》は複製出来るものの、別の武器を生成することは基本不可能なのだ。

 紗菜は考えるよりも先に拳銃で男の右足を撃ち抜く。


「ぐッ!!」


 男が怯んだ瞬間、紗菜は盾で男を突き倒した。


「信じられないが……《バーサタイル》か!?」


 ロベリアが謎の言葉を口にした。


「バーサ、タイル……?」


 紗菜が疑問を口にしていると、瀕死のエイトが立ち上がりながら答える。


「固有の武器に囚われない……《リベラ》。父さんは……一人しか見たことがないって――」


 上手く力が入らなかったエイトが再び倒れそうになるも、体勢を整えていた三咲が素早く駆けつけ、彼を受け止めた。


「殺すべきか、捕らえるべきか…………ボスの意向が気になるが、待っていられん。脅威になるのであれば、今の内に若い芽を摘むまでだ!」


 ロベリアが鎖を紗菜に向けて飛ばす。

 鎖の先端が矢の形に変形している。彼の能力は『物体の形を自由に変化できる』能力だ。


「…………」


 紗菜は直立している。

 彼女にある考えが浮かんでいるからだ。


(力のこと、わかってきた…………能力を使うなら、今ここで――!)


「何ッ!?」


 ロベリアが驚愕の声をあげる。

 狙いを定めていた相手の紗菜が、何の突拍子もなく消えたからだ。


「何処にいる!?」


 ロベリアは周囲に結界を張るように鎖を張り巡らせる。


「もし『透明化』の能力であれば、動きを察知すれば――待てよ……」


 ここである疑問が浮かんでくる。


「あの時、スノーフレイクの攻撃が当たらなかった……あの距離で『透明化』しても、かわせるとは思えない…………まさか、そんな単純なものでは――」


「――ごめんなさい」


「がはッ!!」


 いつの間にかロベリアの背後に出現した紗菜が、生成した刀で彼の背中を切り裂いた。

 直撃した彼は体勢を崩し、前に倒れる。


「どういう……ことだ……!?」


 ロベリアは未だに紗菜の能力について理解していなかった。


 紗菜の能力――簡単に言うのであれば、『完全無敵付与の透明化』

 より詳しくいうのであれば、『存在を操れる能力』、『時間軸から自分を外す事ができる能力』

 現在という時間から自分の存在を消すことで、誰も認識できなくなり、『肉体の存在』も消えているため触れる事もできない。

 それは紗菜も同じであり、能力発動中は相手に触ることはもちろん、物体に触ることもできない。その間は、幽霊のように空中浮遊で移動することになる。ロベリアとの距離がそこまで離れていないのに背後に回るまで時間がかかったのは、浮遊での移動に苦戦したからだ。

 副作用がありそうな強力な能力だが――その有無に関しては本人もわからないのである。


「くッ……油断していた……この女にここまでの素質があるとは思ってなかった…………!」


 ロベリアが体勢を戻そうとする。


「…………」


 紗菜が集中した様子で刀を前に構えた。


(『あれ』を使うのは不安だけど、出し惜しみしてたら、先に皆がやられる……!)




「《プロディス》――【アローン】」




「!?」


 これにはこの場にいた全員が驚く。

 覚醒したばかりの彼女が、《プロディス》を使うことは異常な話だ。

 《プロディス》を習得するには能力の熟知と、技を実現させるための特訓が必要。

 一つでも習得出来れば凄腕の《リベラ》と言われており、エイトと戦いを共にしてきた昭伍ですら習得出来ていないのだ。


「僕ですら……使えないのに!!」


 逆鱗に触れたとばかりに怒りを露わにしながら立ち上がるスノーフレイク。


「…………」

「どうしたの? さっさとかかって来いよ!!」


 《プロディス》を発動させたはずの紗菜だが、微動にしない。

 そんな彼女に少年は地団駄を踏む。


「ハッタリか!? 僕をからかうのもいい加減にしろ!!」


 痺れを切らした少年が、自分から紗菜に突撃する。


「よせスノーフレイク! 罠だ!」


 何か違和感に気づいたロベリアが声をかけるも、少年は止まらない。

 少年はナイフを紗菜の左胸に刺す。


「――なんで?」


 しかし、刺さった感触を感じない。

 少年は紗菜にナイフを何度も斬りつけるも、彼女の体に傷一つ付かない。まるで目の前にいる彼女が立体映像であるかのように――


「後ろだ!!」

「!」


 ロベリアに言われ後ろを向くと、紗菜が上空から刀を振り下ろしていたのが見えた。

 少年は間一髪ナイフで刀を受け止める。


「――ごめん」

「は……ぁあ゛……!!」


 しかし、攻撃が当たらなかった方の紗菜から斬撃を受け、少年の背中が斬られる。


 《プロディス》――【アローン】は、能力の発動とともに『残像』をその場に残す技。

 能力を解除しても残り続け、更に瞬時に『残像』へ存在を移し変えることができる、騙し討ちの技だ。


「ぐ、ぞッ……!!」


 スノーフレイクが前に倒れる。

 紗菜がトドメを差そうと刀を振り上げた。


「ひっ……! やだぁ……!!」

「!?」


 少年の怯えた姿に、紗菜の動きが止まる。

 少年が幼い姿ということも相まって、このまま命を奪い事に抵抗が生まれてしまう。

 同時に、これまでアドレナリンで麻痺していた『人を斬る』感触が体に伝わり、体を震わせ始めた。


「優しいね……助かったよ!!」

「うっ!!」


 その隙を突いた少年が、飛び起きるような動きで紗菜の腹を刺す。

 これに反応できなかった紗菜は直に受け、刀が落ちると同時に消滅した。


「俺様を忘れてないか!」


 すると、足の応急処置を済ませたトメントーサが彼女を押し倒した。


「ちょっと、それ僕の獲物なんだけど……」

「まぁ落ち着けって、このまま殺すには惜しい」

「嫌…………!!」


 何かを察した紗菜は逃げようにも腹を負傷している上、男に両手首を掴まれているため、動けない。

 その様子に興奮を覚えたのか、男が変なことを言い出す。


「久しぶりのいい女だ! 決めたぞ! お前、俺の女に――」


 言葉の途中で何者かが男の首を掴んで紗菜から離し、地面に足が付かない所まで上げられる。


「なッ!? お前、『朱雀』――!?」


 驚いているのも束の間――男を中心に火柱が上がる。

 その数秒後、トメントーサはあっけなく灰になり、骨すらも燃やし尽くされた。

 紗菜を救った人物は『朱雀』――星守一樹だ。

 エイトのスマホのGPSと、密かに付けていた紗菜のスマホのGPSが人気のない路地裏を指していたことから、異常が起きたと察知した彼が素早く駆けつけてきたのだ。何があってもいいように、既に力を解放させてある。


「一樹……さん……」

「遅れてすまない」


 一樹は身を屈め、緑の炎で紗菜の傷を癒した。

 今度はエイトの傷を癒そうと歩き出す。


「ついに来たか……朱――」

「邪魔だ」


 その通り道にいたロベリアの脇腹を、一樹は蹴り飛ばす。

 軽い動作に見えたが威力は凄まじく、ロベリアの体は吹き飛んで建物の壁に激突。そのまま血を吐いて倒れた。


「エイト、お前もよく頑張った」

「父……さ…………」


 傷が癒えると、気が抜けたエイトはそのまま気絶する。


「幹部の姿がない以上、ここを離れるのは逆に危険だ。三咲、二人と一緒に後ろに下がっててくれ」


 一樹の願いに三咲は頷き、エイトを抱えて紗菜の方へ移動した。




「――後は、オレに任せろ」


 

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