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マシンガンズ・アニマ  作者: 白沼 雄作
第二章 光纏いて彷徨う朱雀に、導きの愛を
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第十一話 あの親にして、あの息子あり

※過激な描写を含みます※

「今日も疲れた!」

「…………」


 時刻は午後五時前。

 紗菜と三咲は委員会の集まりを終え、帰路を歩いていた。


「そういえば、こうやって一緒に帰るの、初めてだね。前は別方向だったから」

「……そうだね」


 三咲は相変わらず素っ気ない返事をする。


「三咲、ちょっとずつ良くなってると思うよ。エイトくんと上手くやれてるのかな?」

「? ただ一緒に暮らしているだけだけど……」

「な、何も……ないの?」

「何も――あっ、ご飯作ってくれる」

「美味しい?」


 三咲は首を横に振る。


「わからない…………楓が言うには、日に日に味噌汁の味が濃くなってるみたいだけど」

「三咲のために、色々と工夫してるんじゃない?」

「そんなことされても、わからないものはわからない……けど……」

「けど?」

「エイトが私のために頑張っているのは……わかる」


 三咲は、三咲なりにエイトのことを理解しようとしていた。

 その様子に安心する紗菜。



 キャァ――――!!



「!?」


 女性の悲鳴が遠くから耳に入ってくる。

 人気のない路地裏辺りから聞こえてきたことに、紗菜は【アニマ】に襲われそうになった日を思い出す。


(私はまだ力を解放できない……でも、もし【アニマ】に襲われてるなら、それを見られる人が助けに行かないと!)


「三咲、ここで待ってて!」


 彼女を巻き込まないように、紗菜は一人で走り出す。


「――私も行く」


 しかし、それを無視して三咲は紗菜についていく。


「で、でも――!」

「嫌な予感がする。一人で行くのは危険」


 予感――今の三咲が使わなそうな言葉が出てきた。

 それ故に妙な信憑性を感じる。


「わかった。でも危険だと思ったら一人で逃げて」

「…………」


 三咲は首を縦に振ることはしなかったが、それに反応する間もなく目的地に。

 一人の少女が角で蹲って泣いているのが見えた。周囲に怪しい人物や【アニマ】の姿は無かったが、紗菜はひとまず事情を聞いてみようとする。しかし、三咲が紗菜の腕を掴み、制止させる。


「どうしたの?」

「あの人、紗菜の写真をばら蒔いた人だよ」


 改めて少女を見てみると、確かに紗菜を煽っていたクラスメイトの女子だ。


「……でも、ばら蒔いたっていう証拠はない。それに、犯人だったとしても放っておく理由にはならないよ!」


 そう言って、紗菜は三咲の腕を振り解き、女子の元へ駆け寄る。


「ねぇ大丈夫?」


 紗菜が優しく訊ねるも、女子は泣き続ける。

 すると次第に笑い声に変わっていくように聞こえた。


「――――本当に来ると思ってなかった!」

「っ!?」


 女子の不気味な微笑みに、紗菜は思わず身を引く。

 すると、背後から複数の足音が聞こえてくる。

 見知らぬ男子高生三人ともう一人のクラスメイトの女子が、紗菜たちをニヤニヤと見つめながら歩いていた。

 女子の一人が紗菜たちの帰りを監視し、タイミングを見計らってもう一人の女子に伝え、何かに襲われているように悲鳴を上げた。お人好しの紗菜なら食い付くとわかっていたからだ。


「ホントにやっていいのか? 彼氏がヤバい人なんだろ?」


 男子が蹲っていた方の女子に聞くと、彼女は男子達の方へ合流しながら答える。


「大丈夫! うちのパパもヤバい組織に入ってるからお互い様よ。それなら、先手を打つ方が絶対にいいじゃん?」

「え、え……?」


 急展開な状況に、紗菜は後退りする。


「…………」


 そんな彼女を守るべく、三咲が前に出た。


「もう一人可愛いのいるじゃん!」


 三咲に対し、一人の男子が食い付く。


「――そうだ! 君が大人しく体を差し出してあげれば、あの子を見逃してもいいけど」

「体を……差し出す……?」


 言葉の意味について考える三咲。


(今の三咲が意味を読めるとは思えない! 止めないと――!)


 紗菜が口を開こうとするも、その必要はなかった。


「…………無理」

「はい?」

「昼寝してたエイトが言ってた……『三咲の体は誰にも触らせない』『三咲の体は俺のものだ』って……言ってた」


(そ、それってただの寝言じゃ……でも、すごい寝言ね……本人が知ったら大変な事になりそう)


「もしかして、君も彼氏いるの? あっ、だったらここに呼んでよ! 俺との喧嘩に勝ったら二人に何もしないって約束する!」


 明らかにエイトの前で二人を傷物にしようと考えている男子。


「別にいいけど……エイトには勝てないよ、絶対」


 三咲は何の躊躇いもなくスマホを取り出し、エイトに電話をかけようとする。

 意識がスマホに逸れた隙を狙って、男子は三咲の腕を掴もうとした。


「三咲!!」


 それを知らせようと紗菜は叫ぶ。

 だが三咲は、難なく横に避けた。


「は?」


 まるで最初からわかっていたかのように。


「……エイト? あなたと喧嘩したい人がいるんだって」


 かわしながらエイトに電話をかけていた三咲。


『喧嘩!? えっ、どういうこと!? 全然話が見えてこないんだけど……』

「エイトが喧嘩に勝ったら、私と紗菜を見逃してくれるって」


 会話中も男子が三咲を捕まえようとするも、全部かわされる。


『……よくわからないけど、三咲たちがマズい状況だってのは何となくわかった。すぐに向かう』

「現在地を送るから……よろしく」


 電話を切ると同時に、


「うぐッ!」


 三咲は男子のみぞおちを強く蹴った。


(三咲、すごい…………まだ私と同じ覚醒前なのに、もう戦えてる……)


「おいおい、何やってんだよ!」


 その様子を見た他の男子たちが笑い始める。


「うるせぇ! おい女、恥かかせたんだ……」


 笑われたことに頭に血が上った男子は、懐からスタンガンを取り出す。


「痛い思いしたくなければ……わかってるよな?」

「…………」


 スタンガンを前にしても、眉一つ動かさない三咲。


「この女――!!」


 痺れを切らした男子が、三咲に襲いかかろうとする。


「だはッ!!」


 突然、男子は何者かに蹴り飛ばされ、横に吹き飛ぶ。


「…………!?」

「!?」


 何者かが助けに入ったことに、三咲と紗菜は驚く。

 その人物はエイトでも一樹でもない――――ダリアだった。

 一樹の乱入により撤退した彼だが、別の目的でこの周辺に訪れていたのだ。

 もちろん、この三人はこれが初対面である。


「無力な女に手を出すクズが……」

「誰だてめぇ! さてはこいつの彼氏か!」

「いや、俺はただの通りすがりだ。お前ら、死にたくなかったら大人しく帰れ。無駄な殺しはしたくない」


 ダリアは散弾銃を取り出し、男子に向けて構えた。

 彼が愛用している散弾銃は銃身が大きく、黒と白を中心とした男の厨二心をくすぐるようなデザインをしている。


「ふっ、そんな玩具で脅せるわ――け……」


 銃のデザインから本物と思わなかった男子が挑発すると、銃口から弾丸が飛ぶ。

 エイトと戦ったときとは違い、実弾。

 一回の発砲で男子の胴体に無数の穴が空き、血が流れ始める。


「俺は無駄な殺しを好まないが、やるときは徹底的にやるようにしている」


 そう言って、ダリアは散弾銃で男子の頭を撃った。

 男子の頭が弾け飛び、周囲に脳漿を撒き散らす。


「……うわぁ――!!」


 数秒遅れて反応した他男子二人が、女子を置いて一目散に逃げようとする。

 しかし、ダリアが素早く男子に接近し、両者の頭を撃ち抜く。


「あ……ぁあ…………!!」


 現実味のない光景が広がっていく様に、首謀者の女子が腰を抜かす。


「嫌ぁ――!!」


 もう一人の女子が、首謀者を置いて逃げようとする。

 ダリアがその女子の前に回り込み、彼女の額に銃口を当てた。


「お願ぃ……します……なんでもしますから…………命だけは…………!」

「何でも…………お前に何ができるんだ?」


 ダリアは一旦銃口を女子から離す。


「えっと……ぁ……奉仕できます!」


 女子は必死にダリアのズボンのベルトを解こうと必死に動き始めた。

 その行動の意味を理解したダリアは何か考えている顔を浮かべていたが、不幸と言っていいのか女子の髪型はツインテール。

 妹――四乃の顔が頭によぎったダリアは、ベルトが解ける前に女子を張り倒し、再び額に銃口を当てた。


「悪いな、俺には愛する妹がいるんでな……そういうのは必要ない」

「待っ――――!!」


 女子の言葉を最後まで聞くこと無く、引き金を引いた。


「…………」


 ダリアは最後の一人――首謀者の女子に銃口を向けながらゆっくりと歩く。


「う、うちをやったらパパの組織が黙ってないわよ! 最近帰ってこないけど…………電話したらすぐに駆けつけてくれるんだから!」

「俺もとある組織に入っている。極道というわけではないが……抗争が起きてもいいように、組織の名前を聞いてもいいか?」

「どうせ殺されるんだ……わからないままパパに殺され――があぁ!!」


 ダリアが女子の足を撃った。

 女子は気品のない悲鳴を上げながら足を抑え、のたうち回る。

 痛みに耐えられなかった女子が、組織の名前を吐く。


「【アルカロイド】、【アルカロイド】! 確かパパがそう言ってたぁ!!」

「!?」


 その名前を聞いて真っ先に驚いたのは紗菜。

 一樹たちが敵対している組織の名前を、昨日聞いたばかりだ。


「奇遇だな、俺も【アルカロイド】の一員――なんなら幹部だ」

「えっ…………?」


 ダリアの言葉を聞いて、紗菜は更に血の気が引く感覚に襲われる。

 今まさに、一樹の敵が目の前にいる状態だ。


「君の苗字を聞いて良いか?」

「…………(いぬ)(やま)

「あぁ、そいつは俺の部下だ。最期に良いこと教えてやる…………戌山拓巳は、一週間以上前に戦死している。こんなクズな娘を放置していることへの粛清をしなくていいのは、本当に楽だ」

「そん…………な――――!?」


 女子は絶望の中、ダリアの放つ弾丸によってこの世を去って行く。


「…………」

「!?」


 紗菜たちを襲おうとした人物全員を殺害したダリアは、彼女たちの方を向く。

 血まみれの彼の姿に紗菜は体を震わせるも、三咲は全く表情を変えない。


(どうしよう!? 一樹さんに連絡――したらその瞬間即死は間違いない! エイトが来るのを待つしか――)


「二人とも、怪我はないか?」

「…………」


 ダリアが身を案じてくる。

 三咲はすぐ反応して首を縦に振った。

 思わぬ優しさに、紗菜は反応が遅れる。

 

「は、はい……大丈夫……です…………」

「それは良かった……ここ最近、石神市の治安が悪くなり始めている。さっきは悲鳴を聞いて君たちが駆けつけたんだと思うが、その結果がこれだ。今後も何が起きるかはわからない……だから、自分の身を優先して守ってほしい」


 そう言い残し、ダリアは消えるようにこの場を去って行った。

 その数秒後、こちらに駆け寄る足音が聞こえてくる。


「三咲! 銃声も聞こえてきたけど、これは一体何なんだ!?」


 三咲に呼ばれて来たエイトが、散乱している死体を見て驚く。

 電話の内容がいまいち理解できず、一刻も争う事態を想定してゲーセンにいる昭伍を放置し、ここへ駆けつけたのであった。








「……何を考えてんだ?」


 そう呟いたのは、一連の流れを建物の上で覗いていた【アルカロイド】の一員にして、ダリアの部下――ロベリアだ。


「あの女二人を人質として攫えば良かったものの…………ダリアの奴、善人ぶるのもいい加減にしろってんだ」


 ロベリアは不機嫌そうに、手に持っていた鎖を振り回し始める。


「もういい、ダリアがいなくても『朱雀』と『死神』をやってみせる」

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