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マシンガンズ・アニマ  作者: 白沼 雄作
第二章 光纏いて彷徨う朱雀に、導きの愛を
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第六話 朱雀の炎

「えっ、紗菜先輩今日休みだったの!?」


 午後三時。

 帰路を歩いていたエイトと三咲。

 今日紗菜が学校に来なかった事を聞き、エイトは驚いていた。


「風邪をひいちゃったのかな?」

「わからない……でも、クラスメイトが昨日の夜、男と一緒にいるのを見たって」

「もしかして、彼氏!? でもそれと今日の休みが関係してるとは……」


 エイトは言葉の途中で、あることを思い出す。


(たしか紗菜先輩、父さんに気があったような……何がともあれ、父さんに相談して損はないはず)


 エイトはスマホを取り出し、一樹に電話をかけた。


『――エイトだな? すまない、今取り込み中だ。また後にしてくれ』


 一樹に電話は繋がったものの、一方的に切られてしまう。


「……今は仕事で忙しいのかな。また後で電話してみるか」

「…………」

「三咲?」


 三咲がずっと後方に目を向けていたことに、エイトは気づく。


「あそこの角で、誰か見てる」

「えっ!?」


(正直、全く気配を感じない。けど、三咲が嘘を吐いてると思えないし……)


「《リベレイト》――【サザンカ】」


 エイトは力を解放し、日本刀を手に取る。


「ちょっと見てくる」

「……わかった」


 エイトは誰かがいると思われる後方へ歩き出す。


(……《糸》を見た限り、こちらに向かってくる人はいない。でも確かに、こっちを覗いたような軌道は残っている)


 エイトは雑居ビル同士に挟まれた小さな道を覗く。


「あ……その……」


 そこには、一人の幼い青髪の少年がいた。


「…………」


 三咲の言う通り、こちらを覗いていた人物は見つかったものの、それが子供だと思わなかったエイトは呆気に取られる。


「えっと……ごめんなさい!」


 すると、少年の方から謝ってきた。


「その……お姉さんが綺麗だったから……」

「別に、謝ることはないよ」


 エイトは少年に合わせて身を屈める。


「俺も君と同い年くらいのころには、女の子に興味を持ってた気がするから。ところで、一人?」

「うん! でも、家が近いから大丈夫! ありがとう! お兄さん!」


 少年は笑顔でエイトにお礼を告げ、走り去って行った。


「…………」


 いつの間にか後ろに立っていた三咲。

 彼女に驚くことなく、エイトは報告する。


「ただの子供だったよ。でもよく気づけたな」

「……変な感じがしたから」

「変? 話した感じ、そうでもなさそうだけど……」


 二人は話しながら、帰路に戻り始めた。




「『朱雀』のガキ……警戒心が強い。最後まで《テルム》を戻さなかった」


 青髪の幼い少年――スノーフレイクが呟きながら、エイトたちと反対方向を歩いている。


「そしてあの女……僕の気配に気づいていた。まだ覚醒してないはずなのに…………」



   ※



「……それだけでいいのか?」

「はい、大丈夫です!」


 三咲が紗菜の話をする前辺りの時刻。

 一樹と紗菜は星守宅へ帰るため、東磐区へ向かって北石区の道を歩いていた。

 紗菜がまとめた荷物は、背負っている少し大きめのリュックの中身だけだった。


「殆ど使い物にならないですから……」

「そうか…………ところで、今後についてなんだが……いい感じのマンションを見つけてな。そこの一室を、零宮の部屋として借りようと思っている」

「え…………?」


 紗菜が驚き、息が止まる。

 一樹が気を利かせてマンションの部屋を見つけたことではなく、一樹と離れてしまう事実に。

 紗菜はずっと一樹と暮らせると思い込んでしまったのだ。


「年頃の少女が、三十超えたおっさんといてもストレスが溜まるだけだろう。防犯もしっかりしているマンションだから、安心していい。もちろん、家賃類はオレが出す」

「…………はい」


(なに考えてたんだろ、私…………そうだよね。恋人でも何でもないから、こうなるよね……)


「…………」


 下を向いて歩き出す紗菜を見た一樹。


「……ただ、昨日の夜みたいに一人になるのが不安なら…………気が済むまで残っていい」

「!?」


 一樹の言葉で、落ち込んでいた紗菜の顔に明るさが戻る。


「ありがとうございます!」

「!?」


 満面の笑みを見せる紗菜。

 しかし、その背後から巨大なムカデのような【アニマ】が、彼女の首に噛みつこうとしていた。


()()!!」

「えっ!?」


 下の名前で呼ばれたことに驚いた紗菜は、背後から迫る脅威に尚更気づけなかった。

 力を解放する暇がないと判断した一樹は紗菜の背後に回り、【アニマ】の牙を右腕で受け止める。


「ぐッ!」


 【アニマ】の噛む力が強く、一樹の右腕が綺麗に切断されてしまう。


「《リベレイト》――【ケラスス】!」


 力を解放し、剣の《テルム》を左手に持ち、【アニマ】の体を斬ろうと横に振る。

 炎を纏った刃は当たったものの、【アニマ】の装甲が堅く炎の熱で溶かすこともできず、切断は出来なかった。【アニマ】の体は剣を当てられた衝撃で横に吹き飛ぶ。


「か、一樹さん!?」


 一樹の姿を見た紗菜がようやく事態を理解し、切断された右腕を見て顔を青ざめる。

 すると、一樹のスマホに電話の着信が入った。

 その相手はエイト。一樹は剣を地面に突き刺し、電話に出る。


「――エイトだな? すまない、今取り込み中だ。また後にしてくれ」


 一樹はエイトの声を聞くことなく、一方的に電話を切る。

 その間に右腕の断面から緑色の炎が纏われ、右腕が元通りになっていた。


「えぇ!?」


 紗菜は右腕が戻った安心よりも、驚愕の方が勝った。


「紗――零宮、少し下がってくれ」

「は、はい!」


(わざわざ言い直した!? 私の名前に、何かあるのかな……?)


 紗菜は疑問を浮かべつつ、一樹に言われた通り後ろに下がる。


「…………」


(この【アニマ】、恐らくただ凶暴性のある奴ではない。【アルカロイド】で人工的に作られた【アニマ】だろう。となると近くでオレを監視している奴がいるはずだ)


 一樹は剣を右手で拾い、【アニマ】に向けて構えつつ周囲を見渡す。


(目的はオレの力量測定。長期戦に持ち込めば、力を抑えたまま倒せると思うが……今は零宮がいる。彼女に何かあったら、それこそオレは()()に顔向けできない!)


 思考を巡らせていると、【アニマ】の方から突進してきた。

 一樹は決断し、居合いと似た構えを取る。



「《プロディス》――【朱雀(すざく)炎風(えんぷう)】」



 一樹は勢いよく前に駆け、構えを崩さないまま【アニマ】とすれ違う。

 すると、一樹が通った道を囲うように大きな炎の竜巻が現れ、【アニマ】を飲み込む。

 最初の一撃で当てた炎とは比較にならないほどの熱さ。


「熱ッ!」


 距離を置いていた紗菜も熱さを感じ、より後ろに下がった。

 この熱には【アニマ】も耐えられず、炎に焼かれて灰となった。


「…………」


 【アニマ】の消滅を確認した一樹は、《テルム》を消滅させる。


「零宮、大丈夫か?」


 癖で煙草を吸うはずの一樹が、それを忘れて紗菜の身を案じる。


「大丈夫です。ありがとうございます!」


(また、一樹さんに守られた……私も《リベラ》だっていうなら、早く戦えるようになりたい……!)


「お前ら、大丈夫か?」


 今までいなかった瑛弍が、突如として二人の前に現れる。


「デカい炎の竜巻が見えたからもしやと思ってきたら、やっぱり一樹だったか」

「丁度【アニマ】を仕留めたところだ」

「瑛弍さん、今までどこに行ってたんですか?」

「いやー、紗菜ちゃんの家の前で警備してたのはいいんだけど、偶然近くを巡回していた警察が俺を不審者と思って職質されたんよ。『何疑ってんだお前!? 俺は銃なんて持ってない! ムスコの引き金も死んでるし!』って言ったら問答無用で連行された。警察のご偉いさんが俺らの知り合いだから無事解放されたけどね」


 よくわからないことを言っているが、もちろん【アルカロイド】の一員を殺した事実を伏せる嘘である。


「そのまま牢屋にぶち込まれてた方が、世界のためだと思うんだが……それより、近くで()()見なかったか?」


 一樹はアイコンタクトで、【アルカロイド】を見たか瑛弍に確認を取った。


「いや? 何にも無かったぜ? ――あっ、俺警察から拳銃奪ったの忘れてたから、返してくるわ!」


 一樹の意図を読み取った瑛弍は、近くにいるか確認するため、この場を素早く離れていった。


「瑛弍さん、変ですよね」

「…………変だけで済んだらいいんだがな」

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