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マシンガンズ・アニマ  作者: 白沼 雄作
第二章 光纏いて彷徨う朱雀に、導きの愛を
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第五話 その男、死神につき

※過激な描写が含まれます※

「……あれが、『朱雀』と『死神』」


 紗菜の家から少し離れた場所にある、二階建てのアパートの屋根。

 そこに座っている一人の男がそう呟いた。両隣には部下と思われる男たちもいる。

 黄色の髪をした男は【アルカロイド】の一員ではある。


「『朱雀』の女もいるみたいだ……女を人質に取れば楽に始末でき――」


 すると、電話に着信が入る。

 黄色髪の男は嫌そうに電話に出た。


「何だよ」

『ダリアだ。タンジーお前、勝手に行動しているだろ』

「今回は監視じゃなくて抹殺なんだろ? だったら早いうちに殺せばいいと思っただけだ」

『期日が先な上、二人に関して今までのターゲットとは訳が違う。闇雲に攻めても返り討ちに遭うぞ』

「幹部に成り上がった割りに、ビビりじゃねぇか? 手の内がわからないのは向こうさんも同じはずだ。それに、俺はお前と違って腕に自信がある。奴らのタマを軽く取ってくるぜ」

『はぁ……まぁいい。失敗しても戦闘データはこちらに贈られてくるしな……もう止めはしない。後悔だけするなよ』


 ダリアからの電話が切れる。


「ふん、格好つけやがって。まっ、今日で俺も幹部に上がるから、問題ないか。お前ら、配置に付け」


 タンジーと呼ばれた男は、家の方角を向いたまま指示を出す。


「隊長! 俺はどこにいけばいいんすか?」

「あぁ? 誰が隊長だ。ふざけて――」


 部下が悪ふざけをしていると思い横を見た瞬間、戦慄する。

 横には、部下の生首二つを持った瑛弍の姿があったからだ。


「『死神』!?」

「隊長! 助けてください!」 「自慢の腕で、こいつをやっつけてくださいよ~!」


 タンジーが驚く中、瑛弍は生首を使って人形劇をするように話した。


「――つまんね、飽きた」


 そう言って、瑛弍は生首を下に捨てた。


「さてさて、俺に用事があるみたいだけど、何かな?」

「《リベレイト》――【タンジー】!!」


 タンジーは瑛弍の質問を返すことなく、力を解放する。

 三メートル以上ある大きな大剣を生成し、瑛弍に向けて振り下ろす。

 しかし、瑛弍はそれを素手で受け止めた。


「おいおい、何の前触れもなしに攻撃するのは反則じゃないか?」

「ふざけてんじゃねぇぞ!!」


 タンジーは大剣を振り上げて瑛弍から離し、横に振る。

 瑛弍はその攻撃を()()で受け止めた。


「は…………?」


 タンジーは驚く。

 二度攻撃を防がれたことではなく、二度目の攻撃を防いだ()()に。


「ペル……シカム……?」


 瑛弍が攻撃を防いだ肉体とは、『拓巳の体』であった。

 拓巳の意識は戻っていないが、まだ死んでもいない。

 タンジーの攻撃を受けたことで、拓巳の体が折れ、口から勢いよく血が出ている。


「おっ、意外にも耐えたな。けどこれじゃ一回キリだな……」


 瑛弍が拓巳の体を確認しながら呟いた。


「お前……!?」

「ん? あぁ、これ? 『盾の拓巳くん』。本当は脊髄で剣を作ろうと思ったんだけど、先駆者がいるみたいでさ、だから盾にすることにした」

「…………」

「なんだお前、『人間の盾の方が充分やってるだろ?』って顔してるな? その通り! やった後に気づきました。あっ、これいらないから返すね!」


 瑛弍は投げ捨てるように、タンジーの前に拓巳を置いた。


「本当は色々と情報を聞きたかったんだが、この様子だと植物状態のまま起きないと思うんだよね。無抵抗な奴を殺す趣味はないから、盾にしてみた。強度は期待してなかったけど!」

「この……イカレ野郎!!」


 タンジーは赤紫色の小さなカプセルを二つ取り出し、自身の足下辺りに落とす。

 カプセルが割れると周辺に赤紫の煙が漂い、割れた場所から【アニマ】が出現した。

 狐の体にサメのような大きな口と鋭い歯を持つ二体の【アニマ】。


「へぇ~……【アニマ】を生み出すそのカプセル、まだ現役なんだ」


 瑛弍が平然と話している内に、二体の【アニマ】が彼に噛みつこうと襲いかかる。

 【アニマ】の歯が体に食らいつく寸前――二体の首が同時に弾け飛ぶ。


「!?」


 何が起こったのか理解できずにいるタンジー。

 よく見ると、瑛弍の右手に木刀が持たれている。

 瑛弍は噛みつかれる寸前で背中から木刀を取り出し、一秒もしない内に【アニマ】の首を斬り落とした。

 木刀に本物の刃が付いているわけではない。彼の動作が速すぎるため、生じる突風が斬撃となり、首を切れたのだ。


「『死神』……いつの間に解放を!?」

「いや、俺はまだ力を解放してないし、この木刀は《テルム》じゃないぜ」

「は? 《テルム》じゃなければ、【アニマ】を殺せないはずだ!」


 【アニマ】を倒すには、《テルム》もしくは能力による攻撃が必要。

 しかし、瑛弍本人は力を解放していないと話しており、その話が本当であれば《テルム》や能力を使わずに【アニマ】を倒したことになるのだ。


「あれ? もしかして知らない感じ? これを作ったの、おたくの組織なんだけどなぁ……」


 瑛弍は木刀を撫でるように触り始める。


「これは《テルム》ではないが、ただの木刀ってわけでもない。【アニマ】と俺の恋人だった麗子(れいこ)の肉体でできた木刀だ。ひでぇ実験するよな、【アルカロイド】の連中は…………あぁ麗子、俺はこんな姿になったお前でも愛している…………ペロペロペロペロ!」


 瑛弍は擬音の通り、木刀を舐め始めた。


「ッ!?」


 彼の異常さに気づいたタンジーは、この場を逃げようと建物の上を転々と駆ける。

 その速度は新幹線よりも速かった。動作速度の上昇――これがタンジーの能力だ。


(今回ばかりはダリアの言う通りだ! あの狂人をまともに相手してたらこっちの気が持たねぇ! 一度退避して――)


「おえッ! マズいの忘れてた……」

「はぁ!?」


 人間離れした速度で動いているタンジーに、瑛弍は容易に追いついていた。

 既に横に並んでおり、しかも後ろ向きで走っている。


「この木刀、チーズとお茶を混ぜたようなよく分からん味がするんだよな……そんなことより! お前を殺して、その首を『生首評議会』に提出させてもらう! いい首だと報酬めっちゃ貰えるから、今から楽しみだ!」

「ふざけんなぁ!!」


 タンジーは大剣を振って攻撃しようとする。


「な――――」

 

 しかし、彼の体に力が入らず、首も動かせない。

 目線を下に向けると、自身の体が見当たらなかった。

 彼が攻撃を降る前に、瑛弍が首を切断し彼の髪を掴んでいたのだ。


「……………………ところで、『生首評議会』って何?」


 そう言って、瑛弍はタンジーの生首を後ろへ投げ捨てた。



   ※



 廃れた雑居ビルの中――

 【アルカロイド】であるダリア、スノーフレイク、そして紫髪の男。

 三人はソファに座りながら、何者かが取ったタンジーと瑛弍の戦闘を見ていた。


「……タンジーもやられたか。逃げた判断は正しかったが、相手が悪すぎる…………」

「あいつダッサぁ!! 僕なら瞬殺できるのに!!」

「いや、お前でも無理だろ」

「ねぇロベリア? やる?」


 泣き笑っていたスノーフレイクが一瞬で真顔になり、紫髪の男――ロベリアへ向けてナイフを突き立てる。


「やってもいいぜ。お前に負けるビジョンが見えねぇし」

「やったぁ! それじゃ――」

「スノーフレイク、やめろ。そしてロベリアも、彼を刺激するな」


 ダリアが口で止めると、スノーフレイクは素直にナイフをしまう。ロベリアも申し訳なさそうに頭を掻いている。


「『朱雀』と『死神』の抹殺期限まで、あと五日だ……」

「それマジっすか? そんな短い期間、俺らに死ねって言ってるもんじゃないっすか?」

「あぁ……俺たちは捨て駒だ。戦闘で集めた情報で、より上の武闘派が戦いやすくするためのな……だが――」


 ダリアは立ち上がり、崩壊している街並みが見える窓に体を寄せた。



「ただの捨て駒で死ぬ気は…………俺にはない」

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