表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マシンガンズ・アニマ  作者: 白沼 雄作
第一章 運命の糸に触れる者
10/41

第九話 この街を制する、藍色の羽

 赤と白の糸が交差する屋敷。

 ついに能力を明かしたエイトが、拓巳と目を合わせている。


「因果を操作できる……って、どういうことだ?」


 そう疑問を投げたのは昭伍。実際、それだけ言われても曖昧なままなのは確かだ。


「俺は五分以内に起きた出来事、起こる出来事を見ることができる――両方合わせれば十分間の出来事を《糸》として視認することができるんだ」


 エイトは拓巳に気を向けたまま、昭伍に解説を続ける。


「ただ、操作できると言っても『今』の俺には――」


 ――不意に拓巳が迫り、ハンマーを振り下ろそうとしていた。

 よく見ると、右手が宙を舞っている赤い糸に沿って動いているのがわかる。

 エイトは拓巳の右手に絡む《赤い糸》を握り、勢いよく引っ張って千切った。


「…………!?」


 拓巳の体は元の位置で棒立ちをしている。

 『エイトに迫り、ハンマーで頭を殴る』という未来の出来事がなくなったのだ。


「――こうやって、出来事の消去しか出来ない。その《糸》が何の出来事を示すかは、直接わからない。だから俺は、未来を視る能力――とは呼ばなかった」

「……わざわざ解説ありがとうございます、エイト君。ですが――」


 拓巳はハンマーを構える。


「それではただのジリ貧になるでは? いつか読み違えて失敗に終わることもあるでしょう……それに、見た限りエイト君自身に襲いかかった出来事については消せないみたいですね……その出血を直せていないってことは……」

「あぁ、お前の言う通りだ。補足するなら、俺が起こした行動――起こす行動も消せない。出来事を消去するだけでは、負けることはなくても、俺が勝つことも出来ない…………『今』の俺には」

「今? さっきから引っかかるような言葉を呟きますね……?」


 拓巳が聞いてみるも、エイトは無視するかのように三咲の方を見る。


「先輩、皆の所まで下がってください」

「?」

「あいつを倒すために、本気を出したいと思いますが……その力をまだ完全に制御できる自信がないので、巻き込まれないように離れてください」

「……わかった」


 エイトの指示に従い、紗菜の元まで離れた。


「へぇ……本気を見せてくれるんですね?」

「あぁ…………俺の好きな人を一度殺したんだ……無事に帰れると思うなよ」


 エイトは日本刀を構えると――


「!?」


 自分の左胸に刺した。

 彼が起こした奇行に、この場の全員が驚く。

 すると、日本刀が光を放ちながらエイトの体に吸収される。

 次の瞬間――彼の背中から巨大な羽が生えた。

 綺麗な藍色をした、蝶のような羽だ。


「《テルム》を取り込む!? 聞いたことがありません!?」

「俺自身、その原理を理解できていない……でも、この力の使い方は――理解できている」


 エイトは右手を前に出すと、《桃色の糸》が伸び始める。

 その《糸》は拓巳の右腕に絡まった。


「何ですかこれは――ぐばぁ!!」


 突然、拓巳は自身の頭をハンマーで打った。


「はぁ……ぁあぁ……!?」


 何が起こったのか理解できず混乱しながら、彼は頭を抑える。


「……!?」


 エイトが何をしたのか、察しがついた昭伍たち。

 《桃色の糸》を絡めて、拓巳の行動を操作した。エイトによって、本来起こらない『未来の出来事』が起こされたのだ。

 これまで優しさで溢れていたエイトに、皆が初めて恐怖を感じる。


「…………」


 三咲を除いて。

 羽が生えた途端、冷たい目になったエイトに、何か既視感を覚えていた。


「何を……何をしたぁ……!!」


 拓巳は敬語を崩し、怒りに身を任せてエイトに突撃する。

 エイトは拓巳の足に纏わりつく《赤い糸》を手に取り、先が右側になるようにずらす。


「んなッ!?」


 拓巳は自分の意志に反して右に曲がった。そして、何もないところでハンマーを振り下ろす。

 エイトがもう一度、《桃色の糸》を拓巳の右腕に絡ませ、今度は左足の膝を自身で砕かせた。


「がぁ!!」


 拓巳が痛みに耐えられず、横になって痙攣する。


「――父さんが言うには、俺の能力は()()()()()()()()程のものらしい。それが、『お前たち』が俺を生け捕りにしたい理由だろ?」

「ぐっ……うぅ……!!」


 エイトは拓巳が何かの組織の一員である事を察しているような発言をするが、痛みのあまり拓巳は言葉を返せない。


「こんな力で……自分の思うがままに出来たとして、幸せになれるとは思えないし、幸せにできるとも思っていない」


 そう言いながら、エイトは三咲に視線を向ける。


「?」


 三咲はよくわからず、首を傾げるだけだった。


「……今、降参してくれるなら命は取らない。大人しく降参してくれ」


 拓巳に視線を戻して言うエイト。


「降参……だと…………!」


 拓巳から見るエイトは、まるで弱者を見下す王者のようだ。

 拓巳の過去にいじめがあったのか、プライドを折られて見下される経験があったのか、エイトの視線が拓巳の中のトラウマを刺激し、拓巳は怒り狂う。


「そんな目で見るなぁ!! 私を馬鹿にするなぁ!!」


 拓巳は痛みを忘れ、無我夢中でエイトに攻撃を仕掛ける――――




「《プロディス》――【マシンガン・ストリングス】」




 藍色の羽から、同じ色である《藍色の糸》を無数に飛ばす。

 飛ばされた《糸》が拓巳の全身に突き刺さると、電気ショックを受けたように痺れ始める。


「が…………ぁ…………!」


 数秒後、拓巳は白目を向いて仰向けに倒れた。

 まだ微かに息はある。


「…………」


 エイトは羽を閉じると、羽が瞬時に日本刀となり、それを手に取る。

 動けなくなった拓巳にゆっくり近づき、彼の喉元に刃を向けた。


「もう十分だエイト!!」

「エイト様!? それ以上はいけません!!」

「エイトくん、ダメ!!」


 昭伍、楓、紗菜の三人が声を上げるも、エイトに届かない。

 光のない彼の目は、どこか三咲と同じ物を感じる。


「…………」


 エイトはそのまま、拓巳の喉元に刀を突き立てようとする。


「――っ!?」


 しかし、三咲に右の手首を掴まれた事で、正気に戻った。


「三咲先ぱ――――」



 ――バシッ!!



「…………!?」


 三咲と目を合わせた瞬間――強く頬を叩かれた。

 エイトが呆然としていると、三咲は彼の両肩を掴む。


「『しっかりしろ』…………『自分を確かに持て』…………」

「!? それ…………」

「あなたが、私に言った言葉」


 飛び降り自殺を図った三咲を止めた、エイトの言葉。


「今でも、覚えてる」

「…………!?」


 エイトが冷静さを取り戻したことで能力が弱まり、《糸》が他者から見えなくなる。

 それと同時に、こちらに来る何者かの足音が聞こえた。


「――どうやら、オレの出番はないみたいだな」

「一樹さん!?」


 屋敷にやって来たのは、一樹。その事実に紗菜が真っ先に驚いた。


「依頼が終わった帰り道に《糸》が見えたからな。まさか、『友人』が御島家の娘だったとは……それより――」


 一樹は床で気絶している拓巳に視線を向ける。


「能力を使ったようだな……大切な仲間を守るために」

「リスクを背負うなんて、大切な人を失うよりマシだから」


 エイトは刀を消滅させる前に、《白い糸》に触れようとする。

 しかし、その動作を一樹に見抜かれてしまい、エイトの腕を掴む。


「だがオレも大切な息子を失いたくない。今日はもう使うな」

「……好きな人の屋敷を修復したいんだ。それだけはさせてほしい」

「それなら瑛弍に任せておけ――」


 そう言いながら、一樹はエイトの頭に触れる。


「!?」


 エイトの頭に緑の炎が纏わりついたことに皆が驚いていると、何事もなかったかのように消える。

 よく見ると、エイトの怪我が治っていたのだ。


「瑛弍は無駄に何でもできるからな。修理、修復作業ならあいつに任せる」

「……片桐瑛弍様ですか!?」


 瑛弍の名を聞いた楓が驚く。


「? あぁ、その瑛弍だが……知っているのか?」

「はい! 何度か屋敷の点検を依頼したことがありますので! という事は…………あなたが『魔法使い』の一樹様ですか!?」

「…………」


 空気が重くなる――

 キラキラとした楓の瞳を見るに、悪気はない。


「えっ、魔法使い!? 一樹さん、能力以外にも魔法が使えるんですか!?」


 意味を知らない紗菜が、一樹を追い詰めてしまう。


「…………」

「…………」


 意味を知っていた昭伍とエイトは、非常に気まずくなる。


「……瑛弍が、そう言ってたんだな」

「はい!」

「…………」


 一樹はここで怒りを爆発させまいと無言でイヤホンを取り出し、耳に装着して好きなバンドマンの曲を流す。

 そのまま拓巳を抱えて庭園に出た後、跳躍してこの場を去っていった。

 その後、気になった三咲がエイトに訊ねる。


「……今のが、エイトのお父さん?」

「はい。血は繋がっていませんが……」

「……魔法使い、なの?」

「……魔法使いではないです……魔法は、使えないです…………」



   ※



「ペルシカムがやられたみたいだな……」


 廃れた雑居ビルの中――

 銀髪の青年が仲間である拓巳が倒されたことを知る。


「あいつざっこぉ!! 戦闘経験も少ない子供に負けるなんてぇ!!」


 青髪の幼い少年がナイフを触りながら罵倒する。

 その隣には、エイトを遠くで観察した際にはいなかった紫色の髪をした男がいた。


「お前も充分子供だろうが」

「えっ、やる? やるの?」


 少年が男に向けてナイフを構える。


「スノーフレイク、もう少し経てば『朱雀』と『死神』との戦いが待っている。その熱は温存しておけ」

「ほんとぉ!? やったー!!」


 スノーフレイクと呼ばれた少年は無邪気な子供のように喜んだ。


「ダリア、その様子だと本格的に動く感じっすか?」

「あぁ、出来ればもう少し情報が欲しかったんだが……ボスが待ってくれないようだ」


 ダリアと呼ばれた銀髪の青年は、肌色の液体が入った注射器を強く握り閉める。




「世界を守るため…………我ら【アルカロイド】が、この街を支配する……!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ